更年期は心と体、そして環境をシフトチェンジする時期。どうして更年期症状が出るのか、その症状を和らげる方法はあるのか? それを心得たうえで、自分でできるセルフケアを始めましょう。ここでは、日本産科婦人科学会専門医・女性ヘルスケア専門医の善方裕美さんが監修した『しんどいな…が続く人のための「更年期の不安」をなくす本』(永岡書店刊)より、閉経を判断する方法や、早発閉経の場合の対処法などを紹介します。

閉経は“卵巣の状態”で決まる

脳からの指令を受けて、卵巣や子宮による巧みな連携プレーの結果、訪れる月経。これまで毎月毎月、がんばって排卵を続けていた卵巣が、その働きを止めてしまう――それが閉経です。

自然の状態で月経が1年間来なかったら閉経とみなします。もし、1年経たずに月経が来たら再度、カウントをし直します。たとえば、51歳のときに過去1年間を振り返って、月経がなかったら「あ、私は閉経したのね」と気づきます。婦人科の診察などで「閉経はいつですか?」と聞かれたら、この場合「51歳」と答えるのが正解。それほど厳密でなくてもよいので、最後に月経があった時期を記録しておけば大丈夫です。

月経が来たり来なかったりと周期が乱れることで「そろそろ閉経に近づいているのかな」と思う方も多いでしょう。しかし、閉経の過程はとても個人差が大きいものです。経血量が増えたり減ったり、周期も延びたり短くなったりする「ジェットコースター型」、経血量も日数も徐々に減っていく「フェードアウト型」、前の月まであったのにいきなり来なくなって終了する「突然型」など、さまざまです。

ただ、「月経不順」と「不正出血」の区別は難しく、不正出血はがんの症状のひとつなので定期的に子宮がん検診を受けておくことが大切です。

●子宮を全摘出しても卵巣があれば、閉経ではない

また「子宮筋腫などの手術で、子宮を全摘出した場合も閉経なの?」と思う方もいるかと思います。たしかに、子宮がなければ子宮内膜がはがれ落ちることはないため、月経は起こりません。けれど卵巣を残していた場合、卵巣はまだ女性ホルモンを分泌しているので、これも閉経ではありません。閉経は卵巣の状態で決まるのです。

また、日本産科婦人科学会では「40歳未満での無月経(3か月以上、月経がないこと)」を早発卵巣不全といい、1年以上、月経が来ないと「早発閉経」の疑いが出てきます。女性は、卵子の元になる原始卵胞を約200万個も持って生まれてきます。そのあと、卵子の数は排卵にともない減っていき40歳頃には約1万〜3万個、50歳では残り1000個ほどになり、排卵を停止して閉経に至ります。

喫煙、低栄養(やせ過ぎ)、片方の卵巣を摘出していることなどが影響して閉経が早まるといわれていますが、卵巣の機能が完全に停止したと判断することは難しく、最近は、早発閉経かもしれないときの妊娠出産へのアプローチが変わってきています。もしも無月経や月経不順がある方で、妊娠を望まれるのなら、ぜひ早めに専門医に相談してくださいね。

閉経のタイミングは予測できるの?

「血液検査で卵子の残りの数を測れば、閉経の時期がわかりますか?」と聞かれることがあります。たしかに、「卵子の残りがあと●個だから、●歳で閉経しますね」と前もって閉経を予測できれば便利ですが、結論からいえば現段階では予測不可能です。

先にお話ししたように、女性が持っている卵子の数(厳密には卵子の元になる原始卵胞)は生まれつき決まっています。生まれてくるときには200万個ほどですが、毎月の排卵で卵子の数は減っていき、40歳頃には1万〜3万個、50歳では残り1000個ほどになるといわれています。

この体内にある卵子の数の目安がわかるといわれているのが、アンチミュラー管ホルモン(AMH)の値です。これは発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンで、多くは妊娠を希望する方が目安として受ける検査です。けれど、AMHの数値が高い(つまり卵子のストックがある)からといって、卵巣からホルモンが十分に分泌されるとは限りません。卵子の在庫数とホルモン分泌量は、イコールではないのですね。

ホルモンの値は日々、変動するものです。血液検査で、卵胞刺激ホルモン(FSH)が40mlU/mL以上、エストラジオール(E2:エストロゲンのひとつ)が10pg/mL以下なら「閉経しましたね」と判断します。しかし、このホルモンの値も、日によってゆらぐので、少なくとも2回は検査しないと完全に閉経と診断できません。

血液検査でハッキリと閉経を診断したり、予測したりできないことも、閉経や更年期を「わかりづらい」と感じる要因なのかもしれませんね。