【漫画】ガサツな食事、やることが極端…アスペルガーのコーチの言動が「何だかおもしろい人」に思えてきた!
アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)と診断されたご主人とのちょっとユニークな日常生活をInstagramでアップしている、ちくわさん(@chikuwa_bloger)。ご主人の場合は、人の気持ちを想像できない特性に加え、多動性や衝動性に代表されるADHD(注意欠如・多動症)の特徴もあるとか。
【漫画】あなたの周りにも似た人がいる?アスペルガーコーチの個性的な言動
そんなちくわさんのコミックエッセイ「好きになった人はアスペルガーでした」は、ちくわさんとご主人の出会いから、沸きあがる違和感、まさかのカミングアウトを経て、それを受け入れ結婚するまでを描く。なお、漫画内や以下の記事に出てくる特徴の描写はあくまでちくわさんとご主人のケースに対する説明で、すべてのアスペルガー症候群の方に当てはまるわけではないことを念のため補足しておく。
今回のテーマは「この人…おもしろいかも⁉」。昇進をきっかけに体力づくりを、とテニススクールに通い始めたちくわさん。だが、担当テニスコーチ(のちのご主人)はスパルタ指導で失礼な言動が多く、第一印象が最悪。それはアスペルガー症候群の特性によるものなのだが、ちくわさんは知る由もない。そんな中、ふとしたきかっけでちくわさんがコーチに好印象を持つようになる様子を紹介する。
■「この人…おもしろいかも⁉」
生来の負けず嫌いで、コーチのしごきも見事克服したちくわさん。そんなある日、コーチから「人手が足りない」と別のレッスンに誘われる。待ち合わせ場所に行ったちくわさんはコーチに驚愕。なぜなら、どデカいエンジン音を吹き鳴らし、ボロボロでド派手な改造バイクで現れたからだ。「やっぱり変な人」と思いつつも、食事へ誘われることに。
空いたメンバーの代わりに参加してくれたお礼として、朝マックをごちそうになったちくわさん。だが、コーチは何も語らず、ただ無言でハンバーガーをむさぼるだけ。その豪快過ぎる食べっぷりを見て「この人は、人前で着飾るのが嫌いな人なのかも」と興味を抱く。
ある日、スクール生との雑談の中で、コーチが持つ何色ものサングラスの話題が出た。ちくわさんが「(その中でも)黄色が好き」と言ったことを小耳にはさんだコーチがとった行動とは…。
■今思えば、アスペルガーの特性が行動のあちこちに
コーチが乗ってきたのは、ちくわさんが今までに見たことない、変てこでボロボロの改造バイクだった。「アスペルガー症候群の人は、いわゆる『行間を読む』ことが苦手。例えば『TPO』『一般的』『もう少し』など抽象的な表現をされると、そのあいまいさが理解できないのです。また、他人からどう見られているかについての意識が薄いという傾向もあります」
ちくわさんは「夫は基本、『自分さえ使い勝手に困らなければ問題ない』というスタンス。だからこそ平気でボロボロな改造バイクに乗っていたのでは?」と推察している。
さらに、まだ親しい関係ではないちくわさんの前で、無言でハンバーガーをむさぼる姿にも「私はコーチ(夫)にお願いされてレッスンに来た立場。そのお礼であれば『今日は来てくれてありがとう』など、少しは世間話のような会話があってもいいはずですよね」とちくわさんは振り返る。
これについては「夫はアスペルガー特有のコミュニケーション難が出ていたのでは?と思います。さらに他人からどう見られようと関係ないスタンスですから、ガサツという意識もなく、本人の中ではいつも通りハンバーガーに食らいついていたんだと思います」
コーチ(ご主人)が黄色いサングラスだけをずっとかけ続けることになった件は「私としては、他の生徒さんとの会話の広がりから、軽い気持ちで『黄色が似合う』と言っただけ。でも夫はその言葉を『本当に言葉通り』真に受けたので、(黄色しか付けないという)極端な結果となったんでしょう」
言葉をそのまま受け取ってしまうという特徴も、アスペルガー症候群の人によく見られる傾向。社交辞令やお世辞、その場だけの言葉合わせなどが理解できず、ちょっとした冗談やからかいの言葉を真に受けてしまうのも、特徴の一つと言えるようだ。
■鬼畜コーチの評価が急上昇「ありのままに生きている人なのかも」
それも今思えば、の話。当時、コーチがアスペルガー症候群と知らないちくわさんは、改造バイクの変てこさに吹き出した。さらに、豪快な食べ方も「人前だからいつもよりちょっとだけでもキレイに食べよう、とか考えないのかな?」と思いつつも、着飾らず、ありのままに生きている点におもしろさを感じ始めていた。
その意識の変化は、サングラスのエピソードで決定的となる。「他のレッスンでは違う色を付けているのかな?とのぞいてみたら、やっぱり黄色!それまでは『変わったコーチ=嫌悪感』でしたが、『変わったコーチ=おもしろい』に完全に変わった瞬間でしたね」
言動が非常識なあまり、初対面の時は心の中で「鬼畜コーチ」とまで思っていたちくわさん。だがいつしか、心の中では「常識のない変な奴」から「奇想天外なおもしろい人」へと変わりつつあった。そんな中、コーチがアスペルガーの特性ゆえに、ちくわさんの心をさらにわしづかみにする出来事が…。
取材・文=折笠隆