友達からの奇妙なLINE、知らない人からの不思議なLINE…。普段何気なく使っているメッセージアプリに、違和感を覚えたことはありませんか?
それはもしかすると、人ならざるものが関係しているかもしれません。
連載「LINE怖い話」では、LINEにまつわる怖い話をお届けします。

「モデルのような高身長に」その1

7月末の、とある街の一角。
冷房の効いた室内カフェテリアの店で、女性2人が雑談をしていました。
「前に買ったばっかのスカート、うっかり引っかけて破いちゃってさぁー…」
そう言ってため息をついたのは二階堂音々さん。都内の大学に通う2年生です。
「あー、私も昔やったことあるわ。すっごいやるせない気分になるよね」
その向かいに座って音々さんと話している、少し小柄な女性が八神咲夜さん。音々さんの友人で、同じ大学に通う同級生です。
「夏用に前々から買っておいたやつだったから超ショックだった…」
「ドンマイ、今度一緒に新しいやつ探しに行こうよ。明日から夏休みだし」
夏服に関する話題で会話を広げていく音々さんと咲夜さん。その途中で、咲夜さんがファッション雑誌を取り出しながら切り出しました。
「そうだ、新しい服探し繋がりでちょっと見てほしいのがあるんだけど…」
そう言いながら開いたページには“井上ツバサ監修の新作、好評発売中!”と大きく文字が記載され、袖タックのブラウスを着ている女性が映っていました。
「あ、これ聞いたことある。この人有名なモデルだよね?」
「そうそう!そして私の推し!カッコよくて憧れるんだよね~」
雑誌に載っているモデル・ツバサさんを眺めながら、緩んだ顔で語る咲夜さん。
それを見た音々さんは、なんとなく話の流れを察しました。
「つまり、今度それを一緒に見に行きたいってことでしょ?勿論いいよ!」
笑顔でそう伝える音々さん。しかし、
「あ…いや、そうじゃなくてね…」
先程とはうって変わり、急に咲夜さんの表情が暗くなりました。
「この前、この服を買いに行ったんだけどさ、その…自分で着てみてギャップに絶望した…」
「ギャップ?」
「ツバサさん、高身長でスラっとしてるから、こういう服着てると爽やかに見えるじゃん?」
そう言われ、音々さんは再度雑誌に載っているツバサさんの写真を見ました。
足が長く程よく細い健康的な体系のツバサさん。太陽の下でポーズを決めて写っている姿は美しく見え、爽やかな印象を受けます。
「私もこんな感じで着こなしたいと思って、お店に行って試着してみたんだよ」
「いいじゃん。咲夜にも似合うと思うけど?」
素直にそう思う音々さんでしたが、咲夜さんはうなだれながら話を続けました。
「いや…全然だった…私が着るとなんかこう…物足りないというか…」
言語化できないもどかしさに顔をゆがめる咲夜さん。頭を抱えてうつむきながら続けます。
「とにかく、ツバサさんみたいな爽やかさが出ないんだよ!同じ服を着てるのに越えられない壁みたいなものを感じてキツイの!」
「あー…まあ、言いたいことはすっごいわかる。プロとの差を感じるときあるよね」
苦笑いしながら、過去に自分も同じような体験をしたことを思い出して肯定する音々さん。
それを聞いて「でしょ!?」と反応する咲夜さん。うなだれたまま今度は自虐モードに入っていきます。
「うぐぐ…私がツバサさんと同じくらい高身長だったらまだマシだったかもしれないのに…!この小柄な体系が憎い…!」
「えっと、咲夜って身長いくつぐらいだっけ?」
「153cmだよ!せめて160代は欲しかった!」
「…ツバサさんの身長は?」
「181cm」
「なんという絶望的な差」
「言うなぁ!自分でもよくわかってるよ!」
思わず少し声を荒げてしまう咲夜さん。音々さんが謝りつつなだめると、机に突っ伏してしまいました。
「はぁ…今からでも身長伸びないかなぁ…」
「いや、もう私たち大学生だし…」
「うん、成長期もう過ぎてるよね…言ってみただけ…」
「…何か1杯おごるからさ、元気出しなって」
その後、言葉通り音々さんは咲夜さんがリクエストしたカフェオレを奢りました。
咲夜さんは少し元気を取り戻しましたが、それでも服を着こなせなかったことのショックは完全に消えていない様子でした。
「もう少し、身長があったらなぁ…」
その日の夜。
音々さんは自室でパジャマに着替え、就寝準備をしていました。
目覚まし用のアラームをセットしようとスマートフォンを操作。しかしその途中、LINEメッセージが送られてきたとの通知が。
(ん?こんな時間に誰からだろう?)
音々さんはすぐにLINEを開き、メッセージの確認を行います。

半ば投げやりな文章を送って来る咲夜さんに、音々さんは思わずフフッと笑います。
さらに詳しく話を聞くと、傷心旅行的な側面もあるため、1人旅をしてゆっくり温泉に浸かってくるとのことでした。
(あはは…元気になって帰ってきてくれるといいけど)
未だに服のことを引きずっている咲夜さんを心配しつつ、楽しんできてねと送ってやり取りを終えた音々さん。
帰ってきたら、咲夜に似合う洋服を一緒に探しに行こう、そう思いながら電気を消してベッドに潜り込みました。
その旅行を境に、咲夜さんに大きな変化が訪れるとも知らずに…。
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(洞 怜子)
※この物語はフィクションです。実在する人物・団体とは一切関係がありません