友達からの奇妙なLINE、知らない人からの不思議なLINE…。普段何気なく使っているメッセージアプリに、違和感を覚えたことはありませんか?
それはもしかすると、人ならざるものが関係しているかもしれません。
連載「LINE怖い話」では、LINEにまつわる怖い話をお届けします。

「廃屋敷からの報告」その7

神奈さんから、自分の隠れている部屋の特徴を教えてもらった亜美さん。
その情報をもとに警察が捜査を行い、それらしい部屋を見つけるも神奈さんは発見できませんでした。
「くっ…なぜ見つからないんだ…!」
歯がゆい思いからか、頻繁に頭を抱える佐山さん。
それを横目に、亜美さんは神奈さんと連絡を取り合ってなんとか情報を聞き出そうと模索します。

神奈さん自身もしびれを切らし始めたのか、部屋を出て屋敷の玄関まで戻るという提案をしてきました。
「大丈夫かな…」
心配した亜美さんは佐山さんにLINE画面を見せ、どうするか相談しました。
「正直不安要素もあるが、そうしてもらうのが確実かもしれないな…」
佐山さんはそう言うと、少し待つよう神奈さんに指示し、その後トランシーバーを手に取りました。
それから5分後。
「佐山警部、全員配置につきました!」
「よし!そのまま周囲に気を配れ!部屋を出てきたらすぐにわかるはずだ!」
佐山さんの指示で、各階・各部屋へ続く廊下の真ん中、階段付近など、どの部屋から神奈さんが出てきても確認できるよう人員が配置されていました。
そのうえさらに声を出しながら部屋から出れば、必ず誰かが神奈さんの存在に気づくはずです。
亜美さんと佐山さんも、屋敷正面の出入口で待機することに。正面玄関は開け放たれ、中の様子を常に確認することができます。
「準備完了だ。お友達に連絡を」
「はい!」
亜美さんは神奈さんに連絡し、部屋から出て大声を出すよう指示しました。
“了解。叫びながら誰かに見つかるまで突っ走るわ”
神奈さんからそう返信が来たため、亜美さんは佐山さんに向かって大きく頷きます。
「よし、いつでも来い…!」
神奈さんの声が聞こえるよう、耳を澄ます佐山さん。
亜美さんも同じように耳を澄まし、神奈さんが出てくるのを待ちます。
しかし、
「…聞こえないですね」
「おかしいな、確かに指示は出したんだろう?」
「はい…」
5分経っても、神奈さんの声は屋敷のどこからも聞こえてくることはありませんでした。
神奈さんはこのような非常時に、指示を無視するような人ではないことは亜美さんがよく知っています。
となると、考えられる可能性は…。
(ちっ、まさか声を上げる前に不審者に…!?)
最悪の展開が予想され、心の中で悪態をつく佐山さん。捜査を早めなければならないと思い、亜美さんに指示を出します。
「これからは俺も現場捜査に加わることにする。君はパトカーの中で待っていてくれるか?もちろん、鍵はしっかり閉めておくように」
表情には出していないものの、佐山さんが焦っていることを感じた亜美さんは不安を大きくしますが、捜査のために了承し車に戻ることにしました。
「は、はい…よろしくお願いします」
「よし、それじゃあ車まで一緒に…」
そう話しながら屋敷の外にあるパトカーまで戻るために2人がかかとを返したそのとき、
バタンッ。
「っ!?」
「何だ!?」
後ろから大きな物音がし、2人は驚いて後ろを振り返りました。
佐山さんが手にしている懐中電灯で物音がした方向を照らすと、そこには…
「なっ!?」
1人の女性が、仰向けで床に倒れていました。
それを見て亜美さんは、女性が赤フレームの眼鏡をかけているのを見て、それが神奈さんであるとすぐに気づきました。赤い眼鏡は彼女のトレードマークでした。
「神奈!?」
亜美さんは思わず駆け寄り、そのすぐあとに佐山さんが駆けつけます。
「どうしたの!?しっかりして!」
亜美さんが神奈さんの体をゆすりますが、何の反応もありません。
「落ち着け!俺に見せてみろ!」
佐山さんが亜美さんをなだめ、その後神奈さんの首筋や鼻の下に手を置いて脈や呼吸の確認を行いました。
「まだ生きてる!すぐに救急車を呼んでくれ!」
佐山さんはそう叫び、亜美さんは慌てながらも119番に連絡を入れました。
その間、佐山さんがトランシーバー越しに警察官へ連絡を入れていましたが、亜美さんは神奈さんのことで切羽詰まっていたため、何を話しているか聞き取ることはできませんでした…。
その後、神奈さんは病院に運ばれ、亜美さんも付き添いとして一緒に病院へ向かいました。
診断の結果、原因はわからないが命に別状はないため、しばらくしたら目を覚ますはずだと言われ、少し安心する亜美さん。
後日、佐山さんとその部下である警察官が亜美さんの家に訪れ、友人を無傷で発見できなかったことを謝罪しに来ましたが、亜美さんは「佐山さんたちは悪くない」と返し、その場を収めました。
なお、神奈さんと一緒に廃屋敷に行っていた絵里奈さんも発見されたが、同じように意識不明の状態であったといい、例の不審者も結局見つかっていないとのことでした。
まだ周囲に身を隠しているかもしれないと注意喚起をされ、不安を残したまま事件は迷宮入りとなってしまいました。
そして、それから。
とある病院の一室で、亜美さんは患者用の花瓶に花を入れていました
「…私、無事に大学卒業できそうだよ」
ベットの方向を見ず、花を見つめたまま独り言のように語る亜美さん。
そのベッドには、神奈さんが仰向けで寝息を立てていました。
…そう、あの事件から3年間、神奈さんは未だに目を覚ましていませんでした。
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(洞 怜子)
※この物語はフィクションです。実在する人物・団体とは一切関係がありません