弁護士・柳原桑子先生が堅実女子の悩みに答える連載です。今回の相談者は、妻子がいる人との恋愛に悩む、宮本友里子さん(仮名・39歳・派遣社員)。

「同じ年の彼と付き合って、10年になります。私と正式に付き合い始めたころ、元彼女に『子供ができた』と告白されてしまい、責任感が強い彼は、彼女と結婚しました。

彼は、『必ず離婚して、友里子と結婚するから待っていてほしい』と言ってくれました。もちろん私も、最初に会った時から『この人が運命の人だ』と思っています。

彼は『妻は子供中心で、僕のことを顧みない。家は居心地が悪く、義両親はデキ婚した僕に対して、いつも軽蔑した目で見る』などと言っており、そういう彼が気の毒で愛しくて、会社に帰る前に、終電までウチでくつろいでもらっています。

私は結婚して専業主婦になって、幸せな家庭を築くのが夢だと彼にはずっと言っていますが、なかなかその日は来ない。さすがに35歳のときに、出産のリミットを意識して、彼と別れようとしたこともあるのですが、彼は『友里子しかいない。別れないでくれ』と泣いてくれました。

そのほか、趣味も共通しているし、感性が合うから、他の男性には興味が行きません。

彼もそんな私を愛してくれて、結局10年間も毎日のように会っています。でも、私が結婚したいと言うと、『妻とは離婚の交渉中』と返され、そうこうしているうちに彼も私も39歳になりました。

あまりに彼が結婚の話を具体的にしてこないから、先週末、彼の家にコッソリ行きました。すると、コロナ禍だからか、彼は10歳くらいの女の子と、3歳くらいの男の子と、可愛い奥さんと一緒に庭でバーベキューをしているんです。

二世帯住宅に住んでいる妻の両親も笑顔で一緒にいて、軽蔑するどころか彼のことを“婿殿”という感じでちやほやしているんです。

私は10年間、ずっと彼を信じて待っていたのに、信じられません。私は彼に慰謝料を請求できますか?」

弁護士、柳原桑子先生のアンサーは……!?

交際の初めからか途中からでも、交際相手に配偶者がいるとわかりながら交際を継続した場合、原則として、交際相手に慰謝料請求はできません。というのは、相互に法的に保護されない交際であることを承知の上で、交際していたものと解されるからです。

ただ一方が客観的に見て、あまりに悪質であると評価された場合には、他方から交際相手に対して、慰謝料請求が認められる場合があります。

悪質性の割合が高いかどうかについては、様々な事情を勘案して判断されるので、ご質問に挙がっている事情だけでは、判断できません。

そして、あくまで例外的に認められる場合があるというだけであるため、私はこんなに傷ついたのだからできるに違いないと安易に考えるべきではないと考えます。それよりもむしろ交際相手の配偶者から、慰謝料請求される可能性の方が現実的な問題であるため、心しておいた方がよいでしょう。

「妻とはうまくいっていない」と語る不倫相手の言葉を受け止めて、こっそり家に行ったら、家族円満な姿を見て愕然とする人は少なくない。

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/