江戸時代、生姜焼きは危険な食べ物だった!間違った食べ合わせの知識はどこから来てるの?

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昔から言い伝えの多い「食べ合わせ」。一緒に食べるとお腹をこわすなどと言われているが、本当なのか?

なるほどと思える組み合わせもあれば、科学的な根拠がまったくないものも多い。江戸時代に記された「養生訓」に従うと、生姜焼きやハンバーグは極めて危険な食べ物になってしまうのだ。

■ハンバーグは健康に悪い?

食べ合わせの代表例として「天ぷらと氷(またはスイカ)」があるが、油っこいものと冷たい水分をいっしょに摂ればおなかの調子が悪くなるのも当たり前だ。似たようなものでは「ウナギとスイカ」も油と水分なので、望ましくないのは一目瞭然だ。

「ウナギと梅干し」も悪いとされているが、理由がはっきりしないどころか、口がさっぱりする、梅干しの刺激で消化が良くなるなど、真逆の話も聞く。江戸時代の学者・貝原益軒(かいばらえきけん)の著書「養生訓(ようじょうくん)」には「ウナギとギンナン」が良くないと記され、これが梅干しに変わってしまったという説が強いことからも、はっきりした根拠はなさそうだ。

養生訓にはほかにも多くの食べ合わせが記され、抜粋すると、

・豚肉 + しょうが、そば、梅、牛肉

・牛肉 + にら、しょうが、栗

・鶏肉と卵 + からし、にんにく、ねぎ

・鴨 + くるみ、きくらげ

・カニ + 柿

がからだに悪いとされているのだ。

豚肉としょうがは、現代では「生姜焼き」として確立された組み合わせで、ビタミンB1が豊富な豚肉に加え、しょうがの成分ジンゲロールやショウガオールが胃の調子を整えてくれる。悪いところはまったく見つからないのだが、日本でしょうを食べるようになったのは江戸時代なので、正しい知識がなかったのだろう。

牛肉とも共演NGなのは驚きで、現代では合いびきが主流のハンバーグは食べられないことになる。鶏肉と卵の親子丼には玉ねぎが定番なのでギリギリセーフだが、いっしょにそばを食べるなら薬味にねぎは厳禁だ。和食ではないが、鴨のソテー・くるみソースがけもおあずけとなってしまう。

医学の発達していなかった当時は画期的だったのだろうが、現代に養生訓を持ち込むと、なんとも味気ない食事になりそうだ。

■ナスには毒がある?

養生訓の食べ合わせにも、科学的根拠があるものは多い。先の例ではカニと柿で、どちらもからだを冷やすからだ。

塩分を摂り過ぎると血圧が高くなるのはご存じだろうが、カリウムには塩分を排出する作用があるため、血圧を下げ、結果的にからだを冷やす働きをする。カニと柿はどちらもカリウムが多いので、冷え性のひとにはおすすめできない組み合わせなのだ。

益軒は、からだを冷やす働きをするカリウムを毛嫌いしている感があり、なかでもナスを目のかたきにしている。ナスに関する記述を挙げると、

・好ましくない性質

・生で食べると毒がある

・皮をむいて、切って、米のとぎ汁に半日〜1日つけて、煮てから食べなさい

もちろん毒などないので間違いなのだが、「水につけておく」のは正解で、カリウムは熱で分解しないので、水にさらして減らすのは科学的に正しい。

逆にお気に入りだったのは大根で、毎日でも食べなさい的に記されている。

文部科学省の食品成分データベースによると、皮つき・生のだいこん100gの成分は、

・水分 … 94.6g

・エネルギー … 18kcal

・脂質 … 0.1g

と、ほとんどが水でカロリーも少ないため、ダイエットにも最適な食材だから、お勧めなのも納得できる。

ただしカリウム量はナスと同等なのを知ったら、貝原益軒がどんな顔をするのか楽しみだ。

■まとめ

・養生訓では、生姜焼きやハンバーグはNG食品

・ナスには毒があると考えられていた

・おすすめ食材の大根も、ナスと同等のカリウムが含まれている

江戸時代は濃い味、とくにしょっぱい食べ物が好まれていたようなので、もっとナスやカニを食べたほうが良かったのかも知れない。

(関口 寿/ガリレオワークス)