勉強会中、父は私たちの質問に対して嫌な顔せず、根気よく説明してくれました。事前にかなり勉強してくれていたので、だいたいのことはスラスラと答えてくれました。

ただ、ファイルの資料はすべて「裏紙」に印刷されていて、「大事な資料なんだから、こんなときくらい綺麗な紙に印刷してよ」と心の中でつっこんでいました(笑)。でも、倹約家の父らしいところが出ていたとも思います。

――お父様の勉強会を受けて、遺産相続に対するイメージは変わりましたか?

益田:当時の私は、相続といえばドラマで見るような、家族が財産をめぐって争う「揉めごと」のイメージしかありませんでした。

相続税がどれくらいかかるのか、節税という考え方があることも知らず。それに、わが家の資産状況について詳しく聞いたこともなかったので、「遺産相続をする」という想像ができていなかったです。

実際に勉強会を受けて、相続がこんなに複雑な制度だと初めて知りました。節税対策をしなければ、大きな相続税がかかるかもしれないと聞き、「大変なことに巻き込まれてしまったのでは……」と不安になりました。思っていた以上に奥が深く、知らないことばかりでした。

◆相続税の複雑な仕組みに驚き

――遺産相続に関する勉強会は、どれくらいの頻度で開かれたのでしょうか。

益田:年に1~2回、子どもたちの帰省に合わせて開かれていました。場所はいつも家族が集まるリビングです。勉強会の日だけは、いつもの団らんとは違うピリッとした緊張感がありました。

――遺産相続について勉強したことで、驚いたことはありましたか?

益田:個人的には、生命保険の話が出てきたあたりから、理解するのが難しくなりました。
相続の話に生命保険が絡み、さらにそれが生前贈与にもつながっていく……。ひとつ理解したと思ったら、別の制度や仕組みが出てくるという感じなんです。

また、勉強会では計算式が何度も登場しました。例えば、非課税制度ひとつとっても、いくつもの種類があり、それぞれに条件があります。その要件を確認しながら計算方法を覚えたと思ったら忘れて、また覚えるという繰り返しでした。

私は数字が得意ではなかったので、もし一人で向き合っていたら、途中で心が折れていたと思います。本当の意味で内容を理解できたのは、相続の準備が終盤に差しかかった頃だったと思います。

――3人兄弟で、勉強会への温度差はありましたか?

益田:お恥ずかしい話ですが、ぶっちぎりでやる気がなかったのが私だったと思います。当時は自分のことで精一杯な時期でした。父がどんな思いで準備してくれていたのか、当時はきちんと気づけず申し訳なかったです。