家に帰る頃にはめちゃくちゃ疲れているのですが、それでも「悪くない休日だったなぁ」という気持ちになりました。しかし、子どもなので、次の休日になるとまた「お母さんとデパートに行きたかったなぁ」に戻るという、その繰り返しでした。

――厳格な一方で、愛情を感じた瞬間はありましたか?

益田:父は、おいしいものをよく知っている人でした。外食に連れて行ってくれることも多く、ドラマで黒幕が密談でもしていそうな個室の中華料理店や、無限におすすめが出てきて制覇できない串カツ屋など、子どもながらに「いろんなお店を知っているな」と思っていました。

父の行きつけの肉屋で買ってきた肉を、七輪で焼いて食べる焼肉も格別でした。父は自分で食べるよりも、せっせとみんなの分を焼いてくれました。家族の「おいしい、おいしい」という声を聞くのが、きっと父はうれしかったのだと思います。

また、「勉強しろ」とは言われましたが、進路について「この仕事に就け」「この学校へ行け」と言われた記憶はありません。最後まで「自分の仕事を継いでほしい」と言うこともありませんでした。

母によると、父自身が親に進路を決められ、自分で選ぶことができなかったそうです。「だからこそ、自分の子どもには自由に選ばせてやりたかったのではないか」と言っていました。

◆家族が同じ方向を向くきっかけに

――お父様が亡くなったとき、どんな思いがあったのでしょうか。

益田:父は他界するまでの約2年間、とても苦しい闘病生活を送りました。その期間は、見ているだけで胸が痛かったです。

父の死は本当に悲しい出来事でしたが、「これでようやく苦しみから解放されたのではないか」という安堵にも似た気持ちもありました。また、意志を継いで最後まで遺産相続をやり遂げようという使命感もありました。

――お父様の勉強会で学んだことが、実際に役立ったと感じた場面はありましたか?

益田:相続税は、原則として被相続人(財産を残して亡くなった人)の死亡を知った日の翌日から10か月以内に納めなければなりません。しかし、大切な人を失った直後は、心身ともに普段通りでいられないものです。

わが家の場合、父が事前に勉強会を開いてくれていたことで、家族全員にある程度の基礎知識があり、相続に向き合うための土台がすでにできていました。さらに、相談できる税理士さんとも生前から関係を築いてくれていたため、手続きはスムーズに進んだと思います。