伊藤かずえさんがシングルマザーとして育てたひとり娘は現在23歳。最近は娘と飲んで帰る電車の中で思わず反省させられるようなちょっとした事件もあって。(全4回中の3回)

【写真】「似てる?似てない?」学生時代・セーラー服姿の伊藤かずえさんと、23歳になった娘さんの写真(全9枚)

娘から「本当に大変だったんだからね!」

愛車のシーマと

── 現在23歳になる娘さんがいらっしゃいます。自身のYouTubeチャンネルにも何度か登場されていますが、凛とした目元がよく似ていますね。

伊藤さん:ありがとうございます。今年大学を卒業して、スポーツ関連の会社に就職したばかり。毎日楽しそうに仕事に行っているので、ホッとしています。ちょっと甘いかもしれませんが、行けるときは車で会社まで送り迎えをしています。

── 優しいお母さんですね。娘さんは、一般企業に就職されたとのことですが、芸能界に興味を持たれたことはなかったのですか?

伊藤さん:まったく興味を示しませんでしたね。むしろ芸能人の親を見てきたから、「堅実に会社勤めをしたほうがいい」と思ったんじゃないでしょうか。仕事がすごく忙しいときもあれば、全然ないときもあって、浮き沈みの激しい世界です。「今月のギャラはこれだけだよ」と、お金のことも包み隠さずに話してきたので、「芸能人って不安定な仕事なんだな」と実感していたみたいですね。

── しっかり者でいらっしゃいますね。

伊藤さん:真面目で何ごとにも真剣に取り組むタイプですね。小学校から高校まで、1日も休んだことがなく、ずっと皆勤賞だったんです。高校生になった途端、バイトを決めてきて、うどん屋、居酒屋、コンビニなど、いろんなバイトを経験していました。娘とは、親子というより、友達のようなフラットな関係ですね。私が無茶をすると、注意されることも。以前、泥酔してこっぴどく叱られました(笑)。

── どういう状況だったのですか?

伊藤さん:YouTubeの企画で、おざわっち(小沢仁志さん)と娘の3人でお寿司屋さんに行ったんです。ところが、私がお酒を飲みすぎて酔っぱらってしまい、帰りの電車のなかで、つり革につかまったままグルングルン回っていたらしくて。「らしい」というのは、まったく記憶がないので(笑)。後日、娘から「本当に大変だったんだからね!お金がかかってもタクシーで帰ればよかった!」と言われ、かなり反省しました。

── つり革につかまってグルングルン…終電でたまに見る光景です(笑)。伊藤さんだと気づいた乗客もいたのでは?

伊藤さん:それはわからないのですが、私があまりにグルグル回るものだから、目の前に座っていた親切な方が、心配して席を譲ってくださったらしくて…。娘も相当恥ずかしかったみたいです。でも、娘も同じくらいお酒を飲んでいたはずなのに、まったく酔っていなかったんですよね。私なんて、すっかりお酒に飲まれてしまったのに、いつの間にあんなに強くなったんだろうと不思議です(笑)。

── 娘さんと2人で飲みに行くこともあるのですか?

伊藤さん:親子でいるところをお友達に見られたくないらしく、2人きりで飲みに出かけることはあまりないんです。でも、ママ友家族と家飲みをするときは、子どもたちも参加して一緒に飲んだりしています。昔から仲のいいママ友が3人いるのですが、娘が保育園のときから一緒なので、もう20年来のおつき合い。毎年、ゴールデンウィークと夏休みには、ママ友とその子どもたち、女性8人で旅行に行くのがお約束になっているんですよ。

── にぎやかで楽しそうですね。

伊藤さん:ママ友たちはみんなお酒が大好きなので、朝8時に新幹線に乗った瞬間からプシュッと缶を開けて飲み始め、目的地に着く頃にはすでにでき上がっていたりします(笑)。最近は、以前ほど頻繁に会えていませんが、それでも月1回はお互いの家に集まって飲んだり、カラオケに行ったりと、家族ぐるみの楽しいつき合いが続いていますね。

子育てで唯一決めていたのが「携帯電話」

書道をする伊藤さん

── シングルマザーとして、娘さんと二人三脚でやってこられました。お子さんとの向き合い方で心がけていたことはありますか? 

伊藤さん:子育てに関しては、何かこだわりや方針を持って育ててきたわけではないんです。人を傷つけるようなことをしたときは強く叱りますが、それ以外は「これをしなさい」と口を出したり、強制したことはないんじゃないかな。宿題も私が言わなくてもやっていましたし、朝も自分で起きてくるなど、あまり手のかからない子だったというのもあります。

ただ、唯一決めていたのが携帯電話に関すること。まだ心が成熟していない段階でネットの世界に触れさせるのは危険だと思っていたので、「携帯を持たせるのは、高校生になってから」と決めていました。SNSでのいじめなども問題になっていますし、悪の道に入るきっかけになっても怖い。その代わり、私と兼用のタブレットを渡して、ゲームや習い事での連絡用に使わせていました。家を離れる時間が長い場合は、携帯がないと不便でしょうけれど、幸い学校も家の近くだったので、なくてもなんとかなるだろうと。

── お子さんにせがまれたりしませんでしたか?

伊藤さん:せがまれたときは、「よそはよそ。うちはうち!」と言い聞かせていました。「キッズケータイだったらいいよ」と言ったこともありましたが、「それなら要らない」と言われたので。高校生になってから、普通の携帯を買い与えました。

── 伊藤さんいえば、お料理上手としても知られています。以前、ブログにあげたお子さんへのお弁当が、「色とりどりでおいしそう!」と話題になったことも。愛情いっぱいのお弁当ですね。

伊藤さん:やっぱり食事は生活の基本ですから、ちゃんと栄養をとってもらいたくて。特に、1日の始まりである朝ごはんは、すごく大事。毎朝、焼き魚を焼いて、納豆とごはん、野菜をたっぷり入れたおみそ汁を食べさせてから、送り出すのが日課になっています。お弁当作りは、娘が社会人になったいまも続けているんです。冷製スープと、冷凍食品を活用したおかずなどをちょちょっと詰めて、おにぎりを握る程度ですけど、残さず食べてもらえると、やっぱり嬉しいものですね。

PROFILE 伊藤かずえさん

いとう・かずえ。1966年、神奈川県生まれ。1978年デビュー。85年に大映ドラマ『ポニーテールはふり向かない』(TBS系)で初主演。そのほか『不良少女とよばれて』『スクール☆ウォーズ』など、数々の大映ドラマに出演。その後も『ナースのお仕事』をはじめ数々の人気作品に出演。2022年には自身のYouTubeチャンネル『やっちゃえ伊藤かずえ』を開設。

取材・文/西尾英子 画像提供/伊藤かずえ