NHK朝ドラ『風、薫る』で“告白できない男”を好演する28歳俳優。再登場するたび目が離せない“独特の間”
実際の虎太郎はなかなか気持ちを伝えられず、その度に視聴者は、彼の再登場を待ち焦がれ、恋い焦がれるしかない。明治時代を描く物語も大きく動き出している。小林演じる虎太郎役はそんな時代の空気を表現している。
◆虎太郎の再登場を待ち焦がれる
『風、薫る』で小林虎之介が演じる竹内虎太郎は、主人公・一ノ瀬りん(見上愛)の幼なじみだが、虎太郎の方ではずっと恋する気持ちを温めてきた。だが本作もそろそろ終盤に差し掛かるというのに、虎太郎は未だに気持ちを伝えられていない。
第2週第7回で、まだ地元にいた頃のりんを、嫁ぎ先から東京に逃がしてやる夜の場面が決定的だったのだろう。うまく追っ手を巻いた虎太郎は、りんを乗せて遠ざかる小舟に大きく手を振った。
「りーん、俺ぇ……」と言いかけてどうしても愛の告白が口から出ず、それでも何か込み上げる思いを表現しようと、彼はエールを送ることしかできなかったのだ。
そこから舞台は東京に移り、再登場した虎太郎もやはり煮え切らない。東京で新たな職を得た2人はすれ違ってばかりで、恋のライバルたちも現れる。
でもきっと今度こそ、虎太郎はりんに気持ちを伝えるはず。視聴者は彼の再登場を待ち焦がれ、いちいち歓喜しては、なかなか進展しない恋模様に悶々とするしかない。
◆小林虎之介がまとう洋装の魅力
第12週第60回、上京した虎太郎は驚くほど様変わりしていた。農民の子であり、鍬で畑を耕して汗を流していた彼も、明治政府の欧化政策によってしっかり洋装になっていた。でも単に順応したわけではない。では、農具を捨てた虎太郎は、なぜいきなり洋装になったのか?
明治は前時代の封建的な身分制社会を刷新した。新政府が四民平等に再編し、虎太郎のような農民(平民)も苗字を名乗ることが許され、りんの出自である士族と結婚できるようになった。
他の職業に就くことも可能になったため、虎太郎が製薬会社に勤めた背景がある。
元農民であっても新しい社会では洋装になり、自由にビジネスチャンスを得られる。りんと再会した虎太郎が「自分の力で上に上がれる」と強調していたのは、この時代らしい立身出世の言葉だ。

