「もうすぐ焼かれてしまうから、あの少女に憑りつこう――」日本人形の呪いは、今や怪談のアイコン的な存在。しかし、かんさび(@kansabi_kk)さん描く創作漫画「呪いの人形の話」のポジティブな結末を読むと、人間の本性が人形を変えてしまうことがよくわかる。今回は、同作を紹介するとともに制作の経緯や見どころを聞いた。

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■恨み言や愚痴を聞かせ続けた結果、日本人形は魂を持ってしまった!

呪いの人形の話01


古くなって神社に持ち込まれた日本人形。彼女の持ち主が恨み言や愚痴を聞かせ続けた結果、人形は魂を持ってしまった。しかし、要らなくなった途端、神社に捨てられる。人形はもうすぐ自分が焼かれることを知り、「私を捨てた人間も、他の人間も憎い――」と憎しみを募らせていた。

呪いの人形の話02


その神社にお参りに訪れた祖母と少女。幸せそうな少女を見て、幸せな人間を不幸にしたいと思う、人形。「子どもには憑きやすい。子どもに取り入ってから、徐々に家庭を崩壊してやろう」と人形は考えた。その夜、少女の枕元に立った人形。「わたしと一緒に遊びましょう」と、声をかけると、純真な少女は「あなた、あの神社の神様のお使いでしょう?」と喜んだ。

呪いの人形の話03


そして、「お母さんの病気が早くよくなりますように!」と、祈りだしたのだ。聞けば、少女は祖母から「あの神社の神様は、優しい女神様だ」と聞いたという。そして少女は、「早く母親が退院して、一緒に暮らせるようになりたい」と祈った。「来てくれてありがとう」とも。少女の純真な心に触れると、人形からは毒気が消えてしまった。

呪いの人形の話04


制作のきっかけを聞くと、「私は怪談を聞くのが好きなのですが、恐ろしい幽霊やぞっとするような残酷なものでなく、不思議だけどネガティブではないお話が好きです。日本人形は今や怪談のアイコンのような存在になってしまっていますが、『本当はかわいい』ということを、漫画の中で表現してみたいと思いました」と、かんさびさん。確かに、本作は「ちょっと怖い、いい話」というラストだ。

呪いの人形の話05


日本人形が本当はかわいいということを伝えたい、というかんさびさん。そこでかんさびさんなりの「日本人形」のイメージを聞くと、「怪談がブームな昨今において、日本人形と聞くと呪われているとか、怖いというイメージがすぐに思いついてしまいます。しかし日本人形は、もともとは子どもの無病息災のために作られたものであり、昔から子どもたちの友達となってきました。もともとは子どもたちの厄を祓ってくれる存在であった人形は、確かにちょっと不気味に感じてしまうこともあるかもしれませんが、大切に扱えば守り神になってくれると思うのです」

呪いの人形の話06


ホラーではなく、ちょっと怖い不思議な話を描くことについては、「私は何かおもしろい話題やモチーフを見つけたら、大抵、まず最初に一番見せたいシーンやセリフが頭の中に浮かんできます。それからそのシーンを活かすようなお話を考える、という感じです。『そのお話に出てくるモチーフが、私に物語を教えてくれている』というような不思議な気持ちになることもあります。これこそ不思議な話だなと自分で思ったりします」導かれるように物語が展開していくという、制作の裏側も聞けた。

取材協力:かんさび(@kansabi_kk)