大根の煮汁に梅干しを加えた「梅流し」

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 大根と梅干を一緒に煮て食べることでデトックス効果があるとされる“梅流し”。自宅で簡単に作ることができるため、夏前に少しでも痩せたい時に実践する人もいるのでは。ネット上には「腹痛にならずに便秘が解消した」「宿便が出た」「肌荒れが改善した」などの声が上がり、定期的に話題になっています。なぜ“梅流し”にはなぜデトックス効果があるのか、自宅で行う注意点について話を聞きました。

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■善玉菌まで流してしまうから多用は禁物

 「梅流し」について教えてくれたのは、病院での栄養指導や配食サービスでの献立開発に当たっている管理栄養士の高橋麻里さん。梅流しの主な材料は、大根と梅干しですが、デトックス効果がある理由は2つあると言います。

「大根は成分の95%が水分で、また食物繊維が多く含まれている。便を柔らかくし、排せつを促す作用や腸内環境を整える効果があります。また、梅干しにはクエン酸が多く含まれていて、腸を刺激し、便の排泄を促す作用があります。この2つの食材を一緒に食べることで相乗効果が生まれるのが梅流しの特徴です」

 人によっては食べている途中からおなかがグルグル鳴り始め、便意をもよおすというくらい効果てきめんの梅流し。ですが、病院での栄養指導の経験もある高橋さんは、実践にあたって「繰り返し食べ続けるのはNG」と注意点を語っています。

「これがいいと話題になると、その食材やメニューばかりを食べ続けてしまう人が多いので、梅流しについてもそれを懸念しています。とくに梅流しは、頻繁に行うと、腸内の老廃物や悪玉菌だけでなく、善玉菌まで洗い流してしまい、余計、体調が悪化する原因となります」

 「ダイエット効果がある」「宿便が出る」という言葉に魅かれて梅流しを多用すると、腸活のために必要な善玉菌までも失うことになるので注意が必要です。

「梅流しは、食べ過ぎたときのリセット法としても効果を発揮しますが、食べ過ぎてしまったとしても、胃腸の調子が良いならば、腸内環境が整っている証拠ですので、行わないほうがいいと思います。まずは月に1回、多くても週に1回。また、いきなり1日梅流しだけという食生活にするのは体に負担がかかるので、まずは1食を梅流しに置き換える方法をとっていただきたいと思います」

■大根は皮ごと使う「食物繊維は皮付近に多く含まれている」

 梅流しの作り方はいたって簡単です。昆布出汁で大根と梅を煮るだけですが、デトックス効果を高めるためのポイントがあると高橋さん。

「大根は皮に食物繊維が一番含まれているので、皮付きのまま使ってください」

 大根の代わりに、ほぼ同じ成分を持つカブを用いるのも良いそう。もちろん、カブも皮つきで。味変したいときに試してみるとよいでしょう。

「味が足りなかったら味噌をつけるといいと思います。味噌にも食物繊維が含まれていますし、免疫力を高める効果もあります」

 梅干しについては、はちみつ漬けや塩の多いものは避け、自然塩のものを使用するのがベター。梅干しは古来から「医者いらず」と言われ、薬用として重用されてきたが、焼くとより効果が高まるとも言われています。

「梅干しには血流を良くして体を温めてくれるムメフラールという成分が含まれていますが、焼くとその効果がより高まると言われています。作るのが面倒な人は、白湯に梅干しを入れて潰しながら飲むだけでもいいと思います。それだけでも十分、クエン酸が取れて、デトックス効果が得られます」

 次に、食べ方について、デトックス効果を高めるため、また安全に行うために、高橋さんは4つのアドバイスをくれた。

(1)満腹時は避ける

「満腹の状態で食べてもあまり効果が得られないので、朝行うのであれば、前日の夜は控えめにする、夜置き換えるなら朝昼を控えめにするといいでしょう」

(2)まずは煮汁から

「まずは、煮汁を飲み干してください。洗剤のような役割をもつ梅のクエン酸をまずは腸に流し、その後、大根を食べることで、食物繊維がブラシの役割をして、老廃物を洗い流してくれます」

(3)休日の日に行う

「食べてから便意をもよおすまでの時間は、食べている最中から腸が動き出す人もいれば、夜食べて、翌朝、便意をもよおす人など、個人差があります。いつ便意をもよおしても、落ち着いてトイレに入れるよう、外出のない日に行うといいでしょう」

(4)梅流しの後は、刺激物を避ける

「梅流しを行った後は、吸収が高まっている状態です。香辛料や炭酸などの刺激物は胃腸に負担をかけますし、添加物などの身体に良くないものも吸収してしまうので、摂取は控えてください」

 夏バテしていると、食欲自体がわかないこともある時期です。自分の胃腸の調子にしっかり耳を傾けて、梅流しを上手に取り入れながら、リセットしましょう。

PROFILE

高橋麻里/管理栄養士。総合病院やクリニックで多数の栄養指導経験があり、現在は外食企業で高齢者向けのお弁当の献立開発を行う。