人の心は単純ではない。

たとえ友情や恋愛感情によって結ばれている相手でも、時に意見は食い違い、衝突が起きる。

軋轢や確執のなかで、感情は歪められ、別の形を成していく――。

これは、複雑怪奇な人間心理が生み出した、ミステリアスな物語。

「男と女の東京ミステリー」一挙に全話おさらい!



第1話:彼女のパソコンで見つけた大量の写真に、男が震え上がった理由

雅紀はノートパソコンを自分のほうに向け、リサーチを引き継ぐ。すると、途中で操作を誤り、プラウザを閉じてしまった。

デスクトップ画面の背景画像に、いくつかのフォルダが表示されている。そこにひとつ、『思い出』というタイトルのフォルダを見つけた。

― 思い出…か。なんだろう。ちょっと気になるな。

雅紀はどこか気が引けたが、玲奈の電話がまだ終わりそうもなかったため、カーソルを合わせクリックしてみた。

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第2話:彼女が「元カレからもらった」という1枚の絵画。その裏面を見て、男はあることに気づき…

合点がいった。ようするに、元カレの描いた絵の思い出を、雅紀の絵で上書きしたいということなのだ。

「難しいかな…?」
「いや、そんなことはないと思うけど…」

雅紀は絵が苦手ではなく、実際、学生時代の美術の成績も良かった。

「その絵って、今も残ってたりする?」
「あるよ。クローゼットの奥にしまってある」

絵を描くからには、元カレのものよりもうまく仕上げる必要があるため、雅紀は参考までに見ておくことにした。

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第3話:暗黒の中学時代に植え付けられた、鬱屈した感情。男は“ある目的”で、同窓会に参加し…

中学時代、磯村は小柄で華奢な体型をしていたため、自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。

そのため性格も卑屈になり、交友関係も狭く、友人と呼べる友人もなく、つまりは黒歴史とも言える3年間を過ごした。

しかし、高校から奮起して勉学に励み、名門大学に進学。今は大手通信会社に勤め、自分に自信を持てるようになっている。

実は、磯村が今回、同窓会に参加した理由はそこにあった。

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第4話:パーティーで出会った美女と、食事の約束。しかし当日現れたのは別人で…一体どんな罠?

容姿が派手な部類に入るにもかかわらず言葉遣いが丁寧な杏奈に、磯村は落ち着いた印象を受けた。

返信も早く、警戒されている様子も見受けられないことから、さらに一歩踏み込んだLINEを送ったのだ。

『もし空いていれば、週末一緒に食事でもどうですか?』

思い切った誘いではあったが、快く受け入れられ、イタリアンが好きという杏奈の好みに合わせてこの店を選んだ。

そこで磯村は、傍らに人の立つ気配を感じた。

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第5話:「見てこれ」と彼が差し出したスマホ。画面に映る“奇妙なもの”を見て、女は絶句し…

「話って…なに?」

紀香が待ちきれずに尋ねる。

「ああ、そうそう。これ、なんだけど…」

修がスマートフォンを取り出し、画面を上に向けて差し出した。

「んん?インスタ?」

InstagramのDMのページが開かれ、そこに届いていたメッセージを見て紀香は絶句する。

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第6話:失恋した女のアカウントに届いた多数の応援メッセージ。そこには思わぬカラクリがあって…

「でもさ、よかったね。紀香の周りに、相談にのってくれるいい友だちがいて」
「え?ああ、そう。友だち、ね…」

今回の件を、友人に相談して支えてもらったと真紀には伝えていたが、それがInstagramの裏アカで繋がった人たちだということは教えていない。

「実はね、お姉ちゃん。私が相談してたのって、友だち…じゃないんだ」

紀香は、どうやってその人物たちと知り合い、どのような言葉をかけてもらったのかを、真紀に話して聞かせた。

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第7話:タワマンのエレベーターで、初恋の女性と再会。あまりの感動に15年越しの思いが暴走し…

あっという間にエレベーターは1階に到着し、拓己は開放ボタンを押して、背後の女性に先に出るよう促した。

その横顔をチラッと見て、拓己は思う。

― 間違いない…。やっぱり、彼女だ!

女性の名は、『美桜』。拓己にとって、忘れようにも忘れられるはずのない人物。それは、中学生のころ、初めて恋心を抱いた相手だった。

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第8話:気になっている女性とエレベーターで2人きりに。チャンスだと思った男は、思わず大胆な行動に出て

― 『結婚生活、うまくいってますか?』なんて聞けないもんなぁ…。

会話の糸口が見つからず、拓己はただ階数表示板を見上げる。

― ああ、もうあと数秒で着いちゃう…。

ところが、10階を過ぎたあたりだった。エレベーターがガタッと大きく揺れた。美桜がバランスを崩し、「キャッ」と小さく叫んだ。

「え、なんだ。地震…?」

そして、そのままエレベーターが停止した。

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第9話:東大卒の証券マンがハマった恋の沼。“ある女”の凄まじい魅力に、真面目な人生は一変し…

「あ、でも。実は今、ハマってるものがあるんだ」
「ハマってるもの?」
「ああ。これからそこに行くんだけど…」

岳が腕時計を見る。

「よし、丁度いい。駿介、お前もついてこい!」

夏の終わりの夜風にシャツをなびかせ、颯爽と歩いていく岳のあとを、駿介はとりあえず追った。

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第10話:念願の食事デートで彼女が中座。数分後に戻ってきた女の姿に、28歳男が言葉を失ったワケ

初めてライブを観た日。偶然帰りに理沙を見かけたが、存在に気づかれずに通りすぎられてしまった。応援グッズを大量購入し、固い握手を交わした直後にもかかわらず…。

あの悔しさを糧に、理沙に認識してもらうため、駿介は努力を重ねてきたのだ。

「認識されただけじゃないんだぜ」

駿介は不敵な笑みを浮かべ、スマートフォンを取り出す。

「え…お前、まさか…」

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第11話:男前になった元カレと同窓会で再会。酔って距離が近くなると、まさかの展開に…

「雪乃は、今は何やってるの?」

近況を報告し合うなか、周囲の音に声がかき消されないよう、自然と距離が近くなる。

雪乃の頭のなかに、かつて肩を寄せ合った日々の記憶が蘇り、気持ちの高ぶりを感じた。

すると、向かい側の席に座っていた彩花が、酒の入ったグラスを持ったまま、雪乃と諒太に向けて指を差した。

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第12話:久々の同窓会で撮った記念写真。そこに映り込んでいた“あるモノ”に血の気が引き…

食事をしながら、雪乃は気にかけていたグループLINE退会の件について触れる。

「あのとき、ちょっと虫の居所が悪くて勢いで退室しちゃって。大人げなかったなって反省してる」

雪乃が謝罪をすると、友香が首を横に振った。

「ううん、わかるよ。私も、あの写真を見てちょっとカチンときたし」
「え…、なんで友香が?」

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第13話:大手メーカー勤務の29歳男とキャンプへ。帰り道に起こった意外すぎるトラブルとは?

キャンプ場に向かう途中の車の中で、亮平の取得した多くの資格の話題になった。

「キャンプに関する資格でいうと、インストラクターとかアドバイザーみたいなものとか。あと、バーベキューなんかの資格も持ってます」
「そんなのもあるんだ!」

細かく分類された資格については耳慣れないものも多く、新鮮に感じられ話も盛り上がった。

皆が関心を寄せ、亮平のキャンプスキルにも期待が寄せられたのだが…。

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第14話:彼女の「ウチくる?」の一言に、浮かれながらついていく男。数分後、男が機嫌を損ねたワケ

和やかな雰囲気のなか食事を進めていると、30分ほど経った頃に、急に上空に暗い雲がかかり始めた。

ほどなくして、猛烈な雨が降り出す。気が緩んでいたこともあり、屋内への避難が遅れ、洋服がだいぶ濡れるハメになってしまった。

「なんか、すみません…」

申し訳なさそうにする亮平に、里帆はやや責任を感じつつ、声をかける。

「あの…。よかったら、うちに来ませんか?」

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第15話:突然かかってきた1本の電話。聞き覚えのある女の声で「産むことにする」と報告され男は…

自宅を出発して30分ほどで、実家に到着した。

― 電気がつけっぱなしになってる…。

建物の前に車を停めて中に入ると、玄関のドアに鍵はかかっていたものの、いくつか部屋の明かりがついたままの状態になっていた。

確認のため、すべての部屋を回っていく。ゆっくりと家の中を行き来するのは数年ぶりのことだ。

すると、居間のほうから電話機の呼び出し音が聞こえてきた。

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第16話:高校時代の同級生から突然連絡。「シングルマザーになった」と告げられ、31歳男は思わず…

和樹は気が乗らないながらも、「じゃあ、一応…」と情報を受け取った。先日の電話の件については、気にならないと言えば噓になる。

広司に電話をかけてきたのは、本当に絵梨だったのか。そうだとしたら、父親と絵梨との繋がりはどういうものだったのか。

関心はあるものの、今さら不仲だった父親の過去など知りたくはないという思いと、真面目で厳格なイメージが損なわれるのではないかという不安がどこかにあった。

しばらく絵梨のことは頭の片隅に追いやり、あえて意識を向けないようにして放置していたのだが…。

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第17話:「食事会でその話題はタブーでしょ」男性陣が振ってきた質問に29歳女がうんざりしたワケ

― やれやれ。またこの話題か…。

法子はウンザリとばかりに溜め息をつく。

今日は、法子の勤める大手不動産会社の同僚に誘われ、表参道で食事会に参加していた。

男女比は4対4。男性陣が1名遅れているものの、まずまずの盛り上がりを見せている。

本来なら、話題の中心となり注目を集めるのは悪いことではないはずだ。しかし法子はこの手の会話を苦手としており、素直に喜べなかった。

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第18話:彼の誕生日に贈ったプレゼントが喧嘩の引き金に…。デート中、急に雰囲気が悪くなったワケ

― もう…。聞きたいこと、いろいろあったのに…。

実は、黒田の誕生日が近いという情報を入手しており、どんなプレゼントを贈ればいいか、探りを入れる目的がこの食事会にはあった。

関係を一気に進展させようと意気込んでいたものの、足踏みする形となってしまった。法子が大きくため息をつくと、傍らから女性の声が耳に届いた。

「法子さん…ですか?」

振り向くと、ネイビーのパンツに黒のニットを合わせた地味な服装の女性が立っていた。

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第19話:デートに毎回1時間以上遅刻する、27歳・金融OL。彼との関係に、ある不穏な兆しが…

今日は、約束の時刻から1時間半遅れての到着となった。遥香が入り口のガラス扉を開けると、奥の席に拓司の姿が見える。

「ごめ〜ん、拓司。遅くなっちゃった〜」

付き合って1年ほど経ち、すでに挨拶と化したお馴染みの言葉で呼びかける。拓司は顔を上げると、遅刻を咎める様子もなく、ニコッと微笑んだ。

「あれ?今日はメガネなんだ」

普段はかけていない黒縁のメガネに、遥香は気づいた。

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第20話:「怪しい…」広告代理店勤務・27歳の彼の浮気疑惑。真相を知るべく女がとった行動とは?

学生時代から付き合いがあるというその友人は、最近、拓司との会話によく登場する。

時間を無駄にしないようにと、拓司に読書を勧め、スポーツジムでのトレーニングを勧めた人物である。

勧めに従い、素直に趣味の範囲を広げている拓司の姿を見て、遥香はどこか置いていかれているような気分になっていた。

「来週末、そいつの出るコンサートがあるんだけど。遥香、一緒に行かない?」

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第21話:職場の後輩男子に惚れ、交際までこぎつけた28歳女。だが1ヶ月後、彼の態度が豹変して…

茉優は、なんだか人ごとではないように思えてきた。茉優もまた、1ヶ月ほど前に、2年付き合っていた彼氏と別れていたのだ。

当時はただ落ち込むだけで、仕事に対する意欲も湧かず、無気力な日々を過ごしていた。

1ヶ月近く経過して精神的に落ち着きはしたものの、思い出しては気が滅入ることもある。

ゆえに、悲しみに暮れるどころか奮起している葉山に感心の気持ちが湧いた。

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第22話:彼氏が怪しい…。ショックをうけた28歳女が気づいた、誠実そうなMR男の“本性”

豪快なエンジン音や、水面に立つ水しぶきから迫力が伝わり、液晶モニターにはない臨場感に胸が高鳴った。

ボートがゴールを通過するなか、「わあっ!」と葉山が大きく両手をあげる。

高配当の予想が的中したようで、大喜びで茉優の体に抱きついてきた。茉優もまた、一緒になってはしゃぎ、喜びを分かちあう。

しかし、幸せな時間はここまでだった…。

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第23話:「こんな時間に何してるの?」27歳男が偶然見かけ驚愕した、彼女の“深夜の顔”

「ねぇ、聞いて雅樹。奇跡が起きたの!」

呼びかけられ、外資系電機メーカーで営業を務めている雅樹は、顔を上げた。マンションに遊びにやってきた彼女・芽依が、息を弾ませている。

「…奇跡って?」

金曜の夜だからテンションが上がっているのもあるが、芽依は普段からこうした大げさな言い回しをするタイプでもあった。

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第24話:交際1年で倦怠期を迎えたカップル。一瞬で関係修復に成功した、まさかの切り札とは?

「…ああ、どうしたらいいんだ」

運転しながら、雅樹はつぶやく。危機を前に「芽依を失いたくない」という思いが湧き上がって、胸が苦しい。

― 自分の力では、もうどうしようもない状況かもしれない…。

神頼みなどしない性格だが、何かにすがりたいような感情が込み上げる。

それで雅樹は今、車である場所へと向かっているのだった。

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第25話:「こんな子だったの?」交際後に発覚した彼女の“あるクセ”。28歳男は心底がっかりし…

― 和人に、穂香をとられたくない…。

優大は、安泰だと思っていた自分たちの関係が、実は絶妙なバランスの上に成り立っていることに気づいていた。

長い期間、良好な関係を保てているのは、それぞれどこかで好意を抱いていることが前提であり、その感情をコントロールしつつ付き合ってきたからだと。

誰かが一歩前に踏み出せば、関係はあっさり崩れ落ちていくであろうとわかっていた。

それでもいい。焦燥感に駆られた優大は、和人よりも先に、穂香に思いを伝えたのだった。

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第26話:宅飲みで寝落ちした28歳男。深夜に目を覚ますと、大切な彼女が男友達と寄り添っていて…

自分の抜け駆けのような行動により、穂香を含めた3人の関係を崩してしまったことへの後悔の念が湧いた。

「なあ、和人。よかったら週末、うちで鍋でもしないか?穂香も呼んでさ。久しぶりに3人で飲もうぜ」

3人で会うことで、関係を維持するための何かいい手立てが見つかるのではないかと思い、和人を誘った。

自分が過剰に心配していただけで、意外とわだかまりもなく、3人で楽しく過ごせるかもしれない。そんな期待を込めて…。

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第27話:女子大生とドライブデート中の29歳外資系証券マン。彼女が懇願した目的地にドン引きし…

「俺、ちょっとトイレに行ってくるよ」

健史はいったん琴音のもとを離れ、トイレに向かった。用を済ませて先に車に戻り、受け取っていたキーでドアを開けて車内で待つ。

だが、琴音がなかなか戻ってこない。店に迎えに戻ろうかと思ったところで、車に向かってくる琴音の姿を見つけた。

― ええ…。そんなに何を買ったの…?

琴音は大きなビニール袋を2つ、両手に持って歩いてきた。

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第28話:「食の好みが合わない」と彼女をフッた男。数年後に彼女の今を知り、猛烈に後悔したワケ

― こんなことなら、もっと早く行き先を聞いておくんだった…。

琴音の発案によりドライブに出かけたものの、まさか行き先が、千葉にある墓苑だとは思わなかったのだ。

健史は、せっかくの天気がいい休日を無駄にしているかのような気分になる。

先ほど訪れた道の駅から、車で1時間ほど。周囲に田畑が広がり、田舎らしい風景が見えてきた。

さらに進んで山道へと入ると、人気が少ない寂れた景色となっていく。冬の木々が寂しさを助長し、薄気味悪い雰囲気さえ漂い始めた。

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第29話:ミーティング中に、得意先の男が豹変。突然“心ここにあらず”になった意外すぎる理由

「おい。青木、大丈夫か?ちゃんと話聞いているか?」

青木が顔を上げ、心ここにあらずといった返事をした。

「おいおい、腹でも減ってんのか?あとで何か食わしてやるから。今は耐えろ」

詩織は2人のやり取りを微笑ましく眺める。

― あれ?この青木さんって人…過去にどこかで会ったことがあるような…。

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第30話:「ストーカー?」知人男性に後をつけられ戦慄が走る28歳女。麻布十番のカフェに逃げ…

「しょっちゅうLINEは送られてくるんだけど、なんかおかしいんだよね…」
「おかしいって、何が?」
「実は、たまに職場の近くで会ったりするの。向こうは『偶然ですね』って言ってくるけど、待ち伏せされてるような…」
「ええ…怖いね。ヤバい奴じゃん。せっかく恋の始まりかと思ったのに…」

莉緒の言うように、詩織も今後の展開に期待を寄せていたので、残念に思う。

そのとき、莉緒が視線を詩織の背後に目を向けながら「あっ」と言った。

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第31話:28歳の彼が得意料理「肉じゃが」を振る舞ってくれたが…。女が抱いた“違和感”の正体

「その肉じゃが、隠し味があるんだよ」
「隠し味?」
「そう。もし何を使っているのかがわかったら、レシピを教えてあげてもいいよ」

環奈は改めてじゃがいもを口に含み、ゆっくり咀嚼するが、さっぱり見当がつかない。

圭祐のほうを覗くと、プイッと知らん顔をされた。環奈は好奇心を掻き立てられ、隠し味の正体を知りたくてたまらなくなるのだった。

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第32話:バーで出会ったミステリアスな男性に惹かれ、交際した27歳女。彼には意外な過去があり…

ひとつだけ腑に落ちないところがある。果耶は20歳になったばかりで、圭祐と9歳差ということになる。

圭祐の話では、母親が出て行ったのは小学3年生のときのはず。それから母親が再婚して、子どもを産んだとすると、微妙な誤差ではあるが年齢的に不自然な点が出てくる。

そこで環奈は、圭祐への報告をいったん保留にし、まずは果耶と2人で会ってみることにしたのだ。

「あの…。環奈さん、ですか?」

声をかけられ、環奈は顔を上げる。目の前に、やや彫りの深い顔立ちの若い女性が立っていた。

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第33話:大手損保を辞める28歳女。退職祝いにもらった色紙の裏に、不穏なメッセージを見つけ…

「あ、そうだ…」

浅野が身をゆすり、傍らにあるビジネスバッグに手を伸ばした。中から、1枚の四角い用紙を取り出す。

「んん?色紙…?」
「そう。斎藤さんから受け取ってさ」
「え、紗理奈さんから?」

どうやら紗理奈は、美月に贈るための“寄せ書き”を作成しているようだった。

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第34話:年上の既婚上司にハマった28歳女。ある日、彼の腹黒い本性が発覚して絶望し…

「そう、私が声をかけたの。ほら、前に話した、この店によく一緒に来ていた同期」
「ああっ。はいはい」

女性が紗理奈の隣の席に腰をおろす。

「紹介するね。こちら、美月が日本橋支社に来る前まで一緒に働いていた深山法子さん」

寄せ書きにあった、正体不明の女性の名だ。美月は、一瞬ゾクッと背筋が寒くなる感覚をおぼえた。

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第35話:披露宴のスピーチを頼まれた27歳女。本番3日前、花嫁にお願いされた“ありえないコト”

美憂の結婚相手は、仕事関係で知り合った若い医師だった。結婚式に参列する新郎側の友人たちは、そうそうたる顔ぶれであることが予想された。

恋人のいない祐奈にとっては、出会いのチャンスとなる。

― 友人代表のスピーチをすれば、絶好のアピールチャンスになるかも。

そんな打算的な思考が働いたのだ。

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第36話:激モテ商社マンの知られざる手口。「動物好き」をフックに、女性に毎度同じ“依頼”を…

ペットショップの近くにある公園に場所を移した。途中で購入したホットドリンクを手に持ち、ベンチに並んで腰をおろす。

七瀬は、以前から美憂に祐奈の話を聞いていたそうで、存在は知っていたと語った。

最近、店で祐奈の姿を見かけるようになり、遠目に気づいていたものの、話しかけるタイミングがなかったのだという。

そのとき、七瀬がある事実を告げる。

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第37話:「まさか元カレに会ってた?」表参道で彼女と同棲中の30歳男。深夜に気づいた、異変とは

圭也は音楽に詳しく、美波とは好みも似ているため、メロディーを聞けばだいたいの曲は認識できる。美波が洗い物を終えて戻ってきたところで、圭也はソファの脇に隠していた包みを取り出した。

「美波。合格おめでとう。はい、プレゼント」

美波に差し出すと、ポカンとした表情を浮かべる。

「受かったんだろう?試験」
「え、ええっ!なんでわかったの…?」

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