論理的に話したつもりなのに相手の反応はイマイチ、感じよく話しているのになかなか相手の懐に入っていけない、適当でめちゃくちゃなことを言っている同僚のほうがなぜか人望が厚い気がする……

仕事でもプライベートでもコミュニケーション能力(コミュ力)が大事と言われているけれど、結局コミュ力って何のこと?

そんなコミュニケーションをめぐる疑問に応えたのが蔭山洋介(かげやま・ようすけ)さんの『なぜ、あなたの話は響かないのか』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)です。蔭山さんによると「こいつ何言ってるかわからないけど、協力しよう」と相手に思わせる力が「コミュ力2.0」と言います。

蔭山さんにコミュ力をテーマに4回にわたってお話を聞きました。

【第1回】「この人、こんなに可愛かったっけ?」って思うのはなぜ?
【第2回】何を言ってるかわからないけどなぜか惹かれる人の特徴

スピーチライターの蔭山洋介さん

「今の自分に似合う」バッグを買ってはいけない

--本を読んでいてすごくわかりやすいなと思ったのが、「憧れる自分」になるために手っ取り早くできることが自分が目指す価値を体現している「バッグ」を買うこと、という部分です。

蔭山:これには2つ戦略があるんです。今のあなたを整理するために買うバッグと、未来のあなたのために買うバッグというのがあると思うんですね。今を最適化するバッグ、今のあなたにとって都合のいいライフスタイルと機能、デザインを持ったバッグが今のあなたにピッタリであれば、すごく快適に使いこなせるし、生活の質がグッと上がると思うんです。

--そうですね。私たちがバッグを買おうとするときもその視点で選ぶのではないかなと思います。仕事に必要なモノが入るのか、手入れがしやすいのか、手持ちの服とのコーディネートはどうか……。

蔭山:はい。それはそれで素晴らしいし、絶対に意味があると思うんです。でも、もしあなたが成長したいのであれば、今のあなたに似合うバッグじゃダメなんです。

未来のあなたがどういう仕事をしようとしているか、つまり、変化を促すバッグでないとダメなんです。「私はそこに行こうとしているんだ。だからこういうバッグを持とう。だから、自分はこういうライフスタイルにしていこう」という逆算できるような象徴的なバッグがあれば、それを買ってしまってからライフスタイルを変えていくんです。

--逆算をして買うんですね。そういえば、転職をする際に「これからの自分」に合うようなバッグを買ったことがあります。そのバッグにふさわしくなろうと服の趣味も変わりましたね。

蔭山:「憧れの自分」の像に対して、ふさわしいバッグを持たせる。それを自分で持った上で身の回りのものを合わせていく。バッグに合わせていって自分を成長させていきましょうという話です。

--それはファッションや見た目を合わせようというだけではなく、中身も合わせるということですか?

蔭山:そうです。憧れの自分に向かうんだという決意なので。

--それが自分の価値っていうことになるんですか?

蔭山:はい。

強い意志があれば分不相応なバッグでも構わない

--「この人高そうなバッグを持っているけれど、全然似合ってないよな」「無理しちゃってるな」とかわかっちゃう場合ありますよね?

蔭山:ありますね。そのエルメスはどこで調達したのか? パパか? と。

--それはそれでいろいろな想像ができて楽しいですけどね。もちろん似合っている人もいるんですよ。時々「あ、無理してるな」ってわかっちゃう。余計なお世話ですけど。

蔭山:無理しているというか、それこそ「みんながいい」って言うから、何となく持っているだけですよ。みんなが持っているからいいんじゃないかっていう。そこに別に意志はないんですよね。空気読んでるだけじゃん。

--そっか。

蔭山:でもね、あなたがなりたいんだったら買えばいいんですよ。あなたがエルメスを持つにふさわしい、もしくはエルメスが持つ世界観に共感しているのであれば、200万円出してバーキンを買えばいいんですよ。その決意があれば、絶対にその人が成功しますよ。

--逆に「まだ私には早いのではないか?」と思う必要はないですか? 30歳そこそこの私が持つなんていろいろ言われるのではないか? とか。

蔭山:そんなこと全然気にしないでいいです。全くいいです。強い決意を持っているのであれば。

知り合いの女性が、頑張ったらルブタンの靴を買うって言っていました。よく買うなと思いましたけれど、あれなんかご褒美で、変わっていくためのアイテムじゃないですよね。

「ご褒美」で買い物をしちゃダメ

--よく「ご褒美」って言うじゃないですか。ご褒美は自分が変わっていくためのアイテムじゃないのですか?

蔭山:すごく重要な部分です。ご褒美で買い物しちゃダメです。そのままになっちゃうから。ご褒美というのは、あなたが頑張ったあなたのためのご褒美なので、そのままなんです。それは全然無理してないんです。

--現状の自分のためのものなのですね。

蔭山:「これくらい頑張ったからこれくらい買ってもいいや」って、何となく使っているお金なので、全然気合いが入ってないんです。お金って気合い入れて使わないとダメで、投資しなきゃいけないんです。消費と投資ってわけなきゃいけないんです。

--ご褒美は消費なんですか?

蔭山:完全に消費ですね。成長するためのお金というのは、自分像を築き上げるために使うお金なので覚悟を持って使ってください。今の自分を慰めるために使っちゃダメなんです。今の自分を鼓舞するためにどんどん使っていかなきゃダメで。だからご褒美は足踏みを続けてしまう。さっきのルブタンも彼女はそれはそれでOKなんですけど、それをバネにしてよりチャレンジする、という流れには多分ならない。

--確かにご褒美も2〜3回やれば飽きちゃう気がします。

蔭山:そんなにご褒美する瞬間って訪れます? 僕はあんまり来ないんだけどな。

--「ご褒美」を言い訳に散財しちゃいます。最初は楽しいんですよ。でも、確かにそれを2回とか3回続けると飽きちゃう。

蔭山:逆に「この仕事を頑張ったら買おう」と思ってるものがあるんだとしたらすぐに買ったほうがいいです。我慢していたら損なんです。

--この仕事を頑張るための決意ということですね。

※次回は9月25日(火)掲載です。

(取材・文:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)