お給料アップや賢いお金の使い方などお金についての関心は強いものの、実際どうやってお金と付き合っていけばいいのかわからない、という人は少なくないのでは?

大手化粧品メーカー「エイボン・プロダクツ」の取締役でマクロエコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さん。経済という視点から社会と個人をつなげる活動をしています。ウートピ世代でもある崔さんに、働き女子がお金の関係について3回にわたってお話を聞きます。

第3回はお金と人付き合いについてです。

第1回「働き女子がお金について知っておいたほうがいい3つのこと」
第2回「働き女子がお給料アップをする方法」

マクロエコノミストの崔真淑さん

同じ年収でも余裕を持つ方法は?

--前回はお金の稼ぎ方と遣い方についてお聞きしました。そもそも年収が同じでも生活に余裕を持つ方法ってあるんでしょうか?

崔真淑さん(以下、崔):余裕を持てるかどうかというのは、将来に対して見通しが立てられるかどうかだと思うんです。例えば、今1億円持っていても次にいつお金が入ってくるのかわからない人と、貯金は少ないけれど安定的にお金が入ってくる人とでは、生活への余裕が変わってきますよね。

--そうですね。

崔:で、「見通しが立てられるかどうか」は「いろいろな業界の人と会うこと」で変わってくるんです。

--え? 貯金術とかではないんですか?

崔:それも大事なんですが、余裕があるかないかは安定的に収入が入ってくるかで決まるんです。つまり、不確実性、例えばリーマンショックなど予想できない何かがあった時に大丈夫なようにできるだけの手を打てるかどうかということなんです。

--ああー、確かに。

崔:そこで、いろいろな業界の人と会うことが大事で、自分一人の視野だとどうしても考えが凝り固まってしまう。突発的な何かが起きても大丈夫なように日頃からコミュニケーションを取っておくことが大事なんです。

例えば、転職するときも優秀な人は知り合いの紹介とかで入っているケースが多い。どこの企業がいい求人を募集しているかという情報も転職サイトや転職市場に出ない場合もある。いろいろな人と会って交流をしておけばそういう情報もキャッチできる可能性が高い。それが仕事運のいい人の特徴なんです。

さらに言えば、ある研究結果を参考にビッグデータで読み解いたところ、仕事ができる人の特徴は「知り合いの知り合いが多い人」という結果が出たんです。

--え? 「知り合いが多い人」ではなく?

崔:はい(笑)。例えば、「こういうことを知りたいんだけれど、誰かいい人知らない?」って言ったときに「私は知らないけれど、知り合いにこんな人がいるよ。あの人なら知ってるかも」という人。直接はつながっていないけれど、いろいろな人の知恵を借りられる確率が高いということになるんです。

飲みに行くよりランチのほうがいい理由

--人付き合いかー。でも私、飲みに行くのが苦手なんです。当たり前ですが、仕事関係でも興味がある人とだったらいいんですけど。

崔:別に飲みに行く必要はないですよ。時間はお金以上に大事なので。お金は取り返せるけれど時間は取り返せない。だから人と会うときも夜に会食に行くのではなくてランチにしています。

--えっ、意外です。

崔:デキる人ほどみんな忙しいので「飲みに行きましょうね」って言っても具体的な話にならないんですよね。しかも飲んじゃうと酔って覚えていないことが多いので、大事な話ができない。

--あー、それはそうかも。

崔:そうそう。ランチができなかったらお茶でもいいんです。昼だったら夜ほど長引かないから時間も有効に使える。仲良くなったら「たまには飲みにでも」って飲みに行けばいいので。

そもそも最初から夜に行きましょうという人は、ミレニアル世代では減りつつあります。しかし、上の世代の方々は、そうでもない方は少なくない。さらには、仲良くなったら仕事ができるわけではないですし、そこに世代間のギャップもあり、職場の関係性にも影響を及ぼしかねませんよね。

それこそミレニアル世代の特徴として、自分のプライベートを大事にしてワークライフバランスを意識しようというのがあるので、夜まで上司と一緒といたい人なんて少なくなってきている。

--私も正直、職場の飲み会はあまり行きたくなくて。飲まないと思っていることを言えない関係はそもそも不健全だと思うんですよね。

崔:そうですね。体育会系の「24時間俺(私)についてこい」っていう上司も素敵ではありますが、皆がついていくかというとそうではないなと肌で感じます。世の中の流れも変わってきている気がします。

だから、二次会は断ったほうががいいと個人的には思っています。よっぽど仲がいい人とは行くけど、そうでもないという関係の人とは行きません。もちろんその分の時間がもったいないってのもあるんだけれど、「嫌々行っちゃったな」とか「お金と時間を使っちゃった」という後悔でウジウジするのも嫌だし、仕事関係の人だったらその人と会うたびに嫌なことを思い出しちゃう。

--すごくわかります。

週に1回、インプットの時間を作る

--崔さんが時間の使い方でほかに工夫されていることはありますか?

崔:1日何も予定がない日を作ることかな。

--それは休みの日ではなく、仕事がある日に?

崔:そうです。仕事ってアウトプットなんですよね、基本。それをずっとやっているとインプットの時間がないからすっからかんになるんです。なので、会議がある日は会議だけの日、資料を作る日は資料を作る日と決めてしまう。ポツポツとスケジュールを入れるよりは入らない日を作りなさい、考える時間を作りましょうってことですね。

--なるほど。

崔:お笑い芸人で“一発屋”が消える理由ってわかりますか?

--うーん、飽きられるから?

崔:そう! つまりブレイクした時に死ぬほど仕事が忙しくなって次のネタを考えられなくなっちゃうからなんです。普通に働いている私たちもそうです。アウトプットを出せるうちにインプットをしないと次がないよってことなんです。だからインプットの時間を作るのはとても大事なんです。

--なるほど。時間の使い方ってお金以上に大事なんですね。

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)