堅実女子のお悩みに、弁護士・柳原桑子先生が答える本連載。今回の相談者は、エネルギー系企業に勤務している、菊地麻里さん(33歳・仮名)。

「既婚者である会社の上司から、しつこく食事に誘われています。彼は仕事はできるのですが、けっこう問題がある人で、気に入らない人を移動させたり、解雇を宣告したりした事実もあります(といっても解雇される人にはそれなりの原因があったのですが)。加えて女性が好きなことでも有名です。

だからこそ、その上司からの誘いを私は断り続けています。今のところなにも問題は起こっていないのですが、将来嫌がらせをされる可能性もあります。私が住んでいる地方では、この会社は契約社員とはいえ給料もよく働きやすいので、辞めたくないのです。もしかしたら正社員になれるかもしれない、という甘い希望も抱いています。どう対策をしたらいいでしょうか。

上手な断り方や、もし上司が変な行動をした場合の対策方法を教えてください』

弁護士・柳原桑子先生のアンサーは……!?

まず、このケースの場合、しつこく誘う上司の男性が既婚者ですので、2人だけで食事をしたという事実により、上司の妻から不貞を疑われることが想定されます。

もちろん、食事だけでは不貞になることはありませんが、疑惑の目を向けられる可能性が高いと考えておいた方がいいでしょう。

上司夫婦を知る人に見られて、妻に報告される可能性もゼロではありません。相手の立場の方が社会的に強いことも考えると、あなたが疑惑の目を向けられることによって、不利になることも。

ですので、誘いを断るときに、「2人で行ったら、会社や奥さんに知られたらお互いのためになりませんよ。食事はみんなで楽しく行きましょう」というニュアンスを盛り込むと角が立たないと思います。いかがでしょうか。

でも、会社の雰囲気や、上司のパワーバランス的に、それが難しいとあなたが判断し、断った後に嫌がらせを受けたらどうすべきでしょうか。

その場合は、その上の上司や会社の相談窓口に相談して、部署異動や配置換えなどを含めた対処をしてもらうことが考えられます。

しかし、相談しても現状が変わらず、上司からの風当たりが強くなった場合は、労働基準監督署や弁護士に相談を。解決のためには、内容にもよりますが、このケースだと“証拠”が必要になることが考えられます。

例えば、上司からどのようなことをされたのかを残した日記やメモ。このときのポイントは受けた攻撃内容だけでなく、その場に居合わせた人の名前、ニュースや天気など客観的な内容とセットで記しておくと信憑性が高いと判断されます。

あとは録音です。嫌がらせを受けた時の音声を記録しておくと、証拠として有効です。ただ、会社にいる間、延々と録音モードにしておくわけにはいきません。相手の行動パターンを知り、“ここだ”という時にレコーダーのスイッチを入れる人が多いようです。これらの証拠を集めてから相談に行くと、正確な内容とともに相談ができ、早期の問題解決につながりやすくなります。

そもそも、このような問題に巻き込まれないため、あるいは巻き込まれたときに冷静な対応を取るためにも、会社の相談窓口を把握しておくことや、いざのとき証人になってくれる人が多い方がよいので職場で孤立しないように心がけるとよいでしょう。さらに余裕があれば、日ごろから労使問題のセミナーや書籍などで、働く自分の環境と法律について知識を得ておくといいでしょう。自分の人生を守るのは、あなたしかいません。

2人で食事をしているところを、誰かに見られて詮索されるほうが不利になることも。



■賢人のまとめ
もし、食事に断ったことが原因で、嫌がらせを受けるようなことがあれば、その証拠(録音が有効)をとって、労働問題の専門家に相談を。

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/