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2011年3月11日の東北地方三陸沖地震から、命の尊さと向きあう時間が、ますます日本人の心に宿る今日ではないだろうか。自国の将来について、真剣に危惧している。しかし、いまさらのことながら人類は、不公平であることを思い知らされる。

写真：TSUNAMI　Kids Art Project　2011年9月9日〜22日にパリ市内Village Royalにて © Kaoru URATA

人間の力量を超越した自然の魔力により、命を失った人々や最愛の人を奪われた遺族たち。そして、人生の指針を失ったとしても、生きることを余儀なくされる。状況下に置かれた人々にしか、その痛烈な気持ちを理解することはできない。
筆者は、地震が皆無であるフランスに生活する。自国を思う気持ちは依然変わらないが、長いこと今回の執筆をためらった。距離を置いて自国を見つめることは貴重な証言であるものの、時には他人事の発言にとらえられてしまうからである。

震災の当日、フランスとの時差があるものの、直ちに報道を聞きつけた周囲の関係者から、見舞いの連絡が届いた。「身内や友人は大丈夫ですか？」と、安否を気遣うメッセージや言葉を数多くいただいた。刻々と報道される実態に関心を寄せながらも、あの魔力の映像を直視することはできなかった。恐怖心の反面、災害の様子を外部から覗き見するような行為には、便乗できなかったのであるが、日本人の地震対策への心得と被害直後の沈着冷静さに、世界中の人々が心打たれたのである。

「緊急事態でも取り乱さず、団体意識を持ち続けられる日本人の精神は、どのようにして育まれたのだろうか？」と、CANAL＋（カナル・プラス　有料テレビ放送）の記者から電話インタビューを受けた。
果たして、日本人の精神性のあり方や育みに理由があるのか、考えさせられたが、確かに、義務教育期間中、日本では団体行動が重視される。周囲との調和が社会を安定させるのだと教わる。一歩出ても遅れてもならない。皆が同じ歩調で進まなければ歩は乱れる。こうした日々の団体意識への敬意から、自然と身に付いているのだろう。精神性と呼ぶほど、日本人は意識してはいないのだろうが、欧州の人々にとっては、どのような鍛練をしてきたのか不思議に映るのである。それにもまして、日本人はこの島国に暮らし始めて以来、絶えず自然災害と共存してきた。生命力の“はかなさ”と“愛おしさ”を汲み取る境遇に常におかれている。

地震と津波に輪をかけた原発問題。自然の威力を可視できる状態で痛々しい痕跡を残した地震と津波と裏腹に、放射線物質の流出は、空気と同様に不可視である。しかし、後世に残す被害への恐怖心は多大である。


写真：（左）インテリアショップMerciで発売された出版本Bloom 販売の一部が義援金として寄付された。（右）2011年サロン・ドゥ・ショコラにて出展したLABO LOVE JAPONでの収益は、パリの社団法人日本洋菓子連合協会ASFJAに届けられる。　cKaoru URATA

「敬意と友好を抱く日本のために力になりたい」と賛同した日本への気持ちを寄せる人々の力が、海外でも一丸となった。一時期は、経済大国日本への義援金は無意味であるという情報も流れたものの、気持ちのゆるがない人々は直ちに動いた。コンサートやパフォーマンスの実演、絵画、オブジェ、食品などを販売して義援金に充当した。震災から1週間以内に、様々なボランティア活動が動き始めた。公的な大使館、文化センターの団体・組織が窓口となり、合法的に日本赤十字への義援金振り込みを担った。



写真：（左）国際家具見本市メゾン＆オブジェとParis Design Weekにて展示された、Dessine moi le Japon(あなたが思う日本を描いて)。国内外のクリエーターたちのスケッチが巡回展示会の最終に競売にかけられ、収益を日本赤十字に寄付する。cKaoru URATA、（右）TSUNAMI　Kids Art Project　2011年9月9日〜22日にパリ市内Village Royalにて、関西地方の画塾の小中学生による絵画を展示。cKaoru URATA

震災から半年以上が経過した今日でも、義援金活動は継続している。海外に住む日本人たちは、「遠くで生活するからこそ、我々が少しでも心の支えになってあげられるための原動力、それは、笑顔を取り戻せるための糧ではないだろうか」という証言は絶えない。そして、具体的な活動を稼働させている。中には、被災地の各諸団体や協会を選定して、義援金が即有効活用できるような手段も増えている。
海外の報道も、月日とともに自国にとって優先的なニュースへと関心はスライドしていく中、現在でも、国籍を問わずに活動をつづける人々の力は後を絶たない。

日本が復興していく様に、世界が関心を寄せる。日本が世界に伝えていくべきメッセージは、将来の世界の手本となるであろう。思いやりの気持ちを持ち続ける人類でありたい。

（取材・文　Kaoru URATA）



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