大怪我を負った恋人に、自分が好きなところを淡々と告げる女性。その真意に感動/画像提供:赤信号わたる(@GoAkashin)

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「先入観で判断してはいけない」よく言われる言葉だが、実生活ではついついとらわれてしまうことも多い。ここでは、そんな先入観をいい意味で裏切る素敵な短編漫画を紹介しよう。

【漫画】「だから、彼が好き」を読む

『ヤンキー悪役令嬢 転生天下唯我独尊』(コミックヴァルキリー)を連載する漫画家の赤信号わたる(@GoAkashin)さんがTwitter上に投稿した本作品「だから、彼が好き」は、現在(2023年4月)1万件以上の「いいね」が付いている。

■“自慢の彼氏”の好きなところは…?

お金持ちで成績優秀で学校のヒーロー、そんな自慢の彼氏を持つ女性。「いーなーあんな格好いい彼氏」と周囲がうらやむ中、女性は意味深な笑顔を浮かべている。

しかし、その彼氏が交通事故に遭い、顔に大ケガを負ってしまった。すると、「あーあもったいなーい」「貴公子もこれでおしまいね」と、今まで羨んでいた女性たちは次々と手のひら返しをしていく。そして、女性がお見舞いに行った病室では、「別れたい」という一言が――。

実は別れ話を切り出したのは、顔に傷を負った彼氏の方だった。そんな彼氏に対して女性は、「私が好きなのはお金持ちで成績優秀で学校のヒーローのあなた」と告げる。

だが、その言葉には続きがあった。「暗くていじめられっ子だった私を救ってくれた“学校のヒーロー”」と。

女性は、その強く優しい内面を好きになったのであって、「顔なんてあなたの一部にすぎない」と言い切る。うなだれる彼氏を、「どうかそばにいさせて」と優しく抱きしめるのであった。

■視点が変わると主人公の見方も変わる

別れ話を切り出したのは女性ではなく、顔の傷に引け目を感じた彼氏の方だったという、先入観を逆手に取った本作品。Twitter上では「あぁ、良いもの見た」「泣かされた…」と心を動かされたコメントや、「最初から容姿については一切触れてないんよね」「すげー逆からでも読める」と、作者の仕掛けに気付くユーザーの声も見られた。

赤信号わたるさんによると、本作のアイデアは「視点の変化」にあったという。「視点が変わると評価が変わるというのは現実でもよくあることなので、それをなんとか漫画にできないかと思い、いかにも裏がありそうな女性を主役にしてみようかと思って制作しました」と話す。

結末を知った上で、主人公の女性の視点で読み返すと、2コマ目の彼女の笑顔は、彼氏を慈しむような微笑みにも見える。知らず知らず、自分は羨んでいた女性たちの視点で見ていたことに気付かされる。読者からの反響では、彼女の笑顔について考察するコメントが多かったという。

「もちろん制作にあたっての自分の中での正解というのはあるのですが、物語は受け取った人の解釈がそれぞれ違って当たり前で、それら全部が正解だと思っているので、僕の方からは言及しないことにしていますが、どれもとても嬉しかったです」と、さまざまな感想が集まったことへの喜びを語った。

赤信号わたるさんは商業連載のほか、オリジナルの短編作品をTwitterやAmazon Kindleの無料電子書籍で数多く発表している。中でも「全てを筋肉で解決する童話」が人気で、作風のギャップに驚く読者も多くみられた。

ゴールデンウィークは、純愛ストーリー、筋肉ムキムキのシンデレラ、手足の生えたスマホなど、縦横無尽な赤信号ワールドにはまってみてはいかがだろう。

取材協力:赤信号わたる(@GoAkashin)