【インタビュー】小栗旬&山田孝之が再共演「僕に関しては、ただ単純に孝之のファンなんです(笑)」
共演の頻度はほぼ数年に一度。世間が思うほど飛び抜けて多いわけでもないのに、なぜかふたりが一緒に並ぶ姿は、ごく当たり前の見慣れた光景のようにさえ感じられる、小栗旬さんと山田孝之さん。同世代はおろか、日本映画界全体をトップランナーとして牽引する彼らが、信長と秀吉を演じて話題を呼んだ連続ドラマ『信長協奏曲(のぶながコンツェルト)』がまもなく公開の劇場版で完結を迎えます。作品について、互いについて、自分たちの世代について――じっくりとお話を伺いました。


『家臣たちとふざけていたかったけど(笑)…怒濤の展開です』


――劇場版では、連ドラと比べて、シリアスなシーンが多いですね。



小栗:やはり「本能寺の変」を描くにあたって、どうしてもシリアスにならざるを得ないところはありますよね。ドラマは結構、ライトな感じでしたが、起こることは過酷です。映画でも意外と早く、本能寺の変を迎えて、遊んでいられなくなりましたね。もう少し、家臣たちとふざけていたかったけど(笑)、そんな余裕もなく怒濤の展開です。

――秀吉も、信長への復讐を果たすために、ドラマ以上に様々な謀略を仕掛け、やがて本能寺へと繋がっていきます。



山田:秀吉という役に関しては、ドラマの時と変わらないですね。小さいころに信長に村を焼かれ、家族を殺されて復讐を誓い、織田家に入り込んだ。織田家が大きくなるに従い、単に殺すだけでは飽き足らず、信長が天下を獲りそうなら、それを操作して、最終的にこっちが獲ってやろうと。劇場版で最終段階に入っていきます。

――ドラマでは戦に対して逃げ腰だった信長(=現代からタイムスリップしてきた高校生サブロー)も、覚悟を決めて刀を振るい、敵を殺めます。

小栗:すごい矛盾ですよね。ドラマでは理想論を掲げて「手を出したくない」と言ってたけど、最後に浅井長政を斬ったことで、この時代に生きるとはどういうことかと考えたんだと思います。映画ではサブロー自らが最前線に立ちます。戦いたくないけど戦わなくちゃいけないサブローがいて、平和な時代を作るために倒さないといけないものがあるという矛盾――そこをどう表現すべきか?武功を挙げ、出世したいという人たちばかりの中で、戦いたくない人が戦っているというのが、この『信長協奏曲』ならではの部分だと思います。


『「小栗と山田って共演多い」って言われる(苦笑)』


――映画を見ると改めて、信長、秀吉、家康という英雄が同じ時代を生きていたんだなと実感させられます。小栗さんと山田さんも同世代であり、映画界全体で見ても「元気な世代」「時代を牽引している世代」と評されることが多いですが…。



小栗:あまり、僕自身は世代を意識することってなくて、みなさんにそう言っていただいて「あ、僕らそういう世代なんだ?」と思うくらいですが、魅力的な同世代の俳優たちがいて、楽しいのは事実です。ただ、最近思うのは、自分たちの世代は「人数が多い」と言われてたけど意外と…。例えば、キャスティングについて話をしてても「もしこの人がダメだったら誰に?」という話になったりする。「多い」と言われてる僕らの世代でさえこういうふうだと、同い年の俳優があまりいない年齢層ってキャスティングが大変だなと。そう考えると、日本はやっぱり俳優が少ないんだなと感じます。

――同じ世代の俳優が少ない方が、自分がキャスティングされる確率が増えてチャンスとも考えられそうですが…

小栗:いや、できればもっと増えてほしいですね。そうすれば、こんなに働かなくてすむし(笑)。

山田:おそらく、そこで自分のチャンスのことだけ考える俳優ってあまりいないと思いますよ。どうしても限られてきちゃうでしょ?「あぁ、またこいつか」って(苦笑)。もっとバラエティが多い方が、日本の映画が豊かになるし、もっと面白くって考える人の方が多いんじゃないかと思います。

小栗:僕と孝之の共演も何年かに一度のペースですが、それでも「小栗と山田って共演多い」って言われる(苦笑)。「でもね、そうは言っても孝之以外にこの役を頼める人は他にあまりいないんだよ」ってところもある。そこで、もし孝之のようなことができる俳優さんがもっといたら、いろんな人と組める。


『僕に関しては、ただ単純に孝之のファンなんです(笑)』


――山田さんは、小栗さんら同世代の俳優陣について、どんな意識をお持ちですか?



山田:やはり仲間意識はありますね。10代からやってきて、青春ドラマなどで主演を任される20代前半のキラキラした時代があって、そこから、さらに十数年が経ってもなお第一線で活躍している同世代の人たちが多いというのはすごいことだと思います。

――年齢を重ねて、作品への携わり方などでも変化が出てきた部分もあるのでは?

山田:もちろん、それもありますね。制作の域に入っていけるようになりましたよね。

小栗:とりあえず、話は聞いてもらえるようにはね(笑)?

山田:それは、世代というよりも経験だと思います。社会でも、20歳で成人しても実際は子どもですよね?会社に入っても新人で、そこから20代の間に何を学ぶか?何をどれだけ経験し、スキルアップできるか?そうやって30代に入って、ようやく、自分たちで動き出せるものなんだろうと思います。20代のころは、経験も浅いし監督やプロデューサーと対等に話すことなんてできない。ガキの意見なんか聞いてももらえないです。それが、僕らも経験を積んで、作品や芝居について話せるくらいには考えられるようになって、ようやく相手をしてもらえるようになってきましたね。

――小栗さんにとって、山田さんとの共演から引き出されるものはありますか?



小栗:僕に関しては、ただ単純に孝之のファンなんです(笑)。そばで芝居を見てるのが好きで「やっぱこの人、いいなぁ…」って思う(笑)。いま、お互いにすごく良い距離感で仕事のパートナーでいられているとも感じてます。仲が良すぎるわけでもなく、だけど、互いに仕事場ではいろんなことを経験してる。それはすごく楽しいですよ。知らない他の現場を経て、久々に会うと「あ、また少しやり方変えたな」とか感じるんですよね。

山田:そうなの(笑)?


『子供ができて、生きなきゃ。生きるためには人生を楽しくしなきゃと』


――今回、映画で共演して新たに発見した部分や感じたことは?


小栗:初めて会ったころの孝之は、自分の中に入っていく感じだったけど、いまはすごくフラットにいる感じがしますね。そういうのを見るだけで「人に歴史あり」だなと思います(笑)。

山田:その理由は、ここ2年ほどで社交性を身に着けたからですね(笑)。なぜかというと、やはり子どもができたことが大きいと思います。正直、それまでは人生は長過ぎるって思ってて、楽しくもなかったし、できれば早く死にたいくらいに思ってましたから。(他人と話をするのが)めんどくさいし、生きづらいって思ってたけど、子どもができて、そんなこと言ってられなくて、生きなきゃいけない。生きるためには人生を楽しくしなきゃいけない。楽しくするには、待っててもしょうがないから、自分から動いて、いろんな人と話したりすればいいって。自分なりにいろいろと広げて、広がっていって、それは大変だけど、楽しいなって感じます。

小栗:いま、めっちゃアクティブだもんね?

山田:時間が足りない(笑)。旬くんといてもそういう話になるけど、自分たちで経験を積んで、コネクションもできて、話を聞いてもらえるようになると、映画を作りたいねってなるんです。どういう映画がいいか?どういう脚本ならできるのか?どれくらいお金が集まって、どれくらいの規模でできるのか?という話になってきて、面白い。実現できるか分かんないけど、いろんな人とそうやって、いろんな話をして、芝居という形以外での表現を試したりしてます。


『暴飲暴食を許す3日間がハッピーです(笑)』


――そんなおふたりにとって、いま、最もPeachy(=ごきげん、ハッピー)なこと、その源になるものは何でしょうか?



山田:何かなぁ…ワークアウト(=筋力トレーニングなど)は?

小栗:別に好きじゃないもん(苦笑)。やらなきゃいけないからやってるの。でも、そうやって節制しなきゃいけないことが意外と多い仕事なので、ひとつの仕事が終わって、自分に暴飲暴食を許す3日間とかですかね?

――息抜きが許されるのは3日間だけなんですね!?

小栗:それ以上になると、戻るのに時間がかかっちゃうんですよ(苦笑)。

山田:僕は最近、はたから見ると仕事に繋がりそうもない、遊んでいるようにしか見えないことを、仕事に繋げて、実際に仕事として成立するようになると、すごく嬉しいし、楽しいですね。

――プライベートの思わぬ趣味などが仕事になることも?

山田:「思わぬ」というより、僕自身は全て、最初から意識して仕事のためにやってます。

――企画から実際に仕事として成立するまでの一連のプロセスの中で、どの過程を一番楽しんでますか?

山田:全てですね。それは普段の芝居をするときのプロセスと同じです。台本をもらって、読むのも楽しいし、役を作っていく過程も好き。現場で芝居するのも楽しいし、完成した作品を見るのも、それについて他人の意見を耳にするのも楽しい。考え始めて、完成するまでの流れ全てがワクワクしますね。

『信長協奏曲』は1月23日(土)全国ロードショー。
公式サイト: http://nobunaga-concerto-movie.com/

撮影:倉橋マキ
取材・文:黒豆直樹
制作・編集:iD inc.