多くの人が一度は経験がある成長痛。寝ているときに足に痛みを感じる成長痛は、起こる年齢によって対策が変わってくるそうです。こども整形外来がある岡野整形外科の岡野達正医師に伺いました。

【写真】医師が教える!思春期の成長痛や足の痛みを防ぐ「たった5つの」ストレッチ公開(全8枚)

成長痛への対策「幼児期と思春期で違う」

── 子どもが突然、夜中に「足が痛い」と泣いて起きてしまうけれど、朝になると何事もなかったかのようにケロッとしているので、受診するか悩むという声を聞きます。小さいお子さんが訴えるこの痛みの正体はなんでしょうか。

医師さん:これは成長痛と言っていいと思います。私たちが指す成長痛というのは、子どもが足に夜間に感じる痛みのことで、骨折や脱臼などのケガや病気などの理由がなく、翌朝になると痛みが消えて、普段通り元気に活動できることをいいます。

足の痛みを訴える成長痛は2~3歳頃から起きることも

2~3歳から小学校低学年ころにかけて起こります。成長痛と聞くと、もう少し年齢が上の、小学校中学年から中学生ごろの思春期に起きるものというイメージを抱く方が多いと思いますが、実は小さいころから起きる足の痛みも成長痛と呼んでいて、幼児期と思春期とでは対策を分けて考えたほうがいいと思います。

── まさに成長痛は思春期というイメージがありました。幼児期の成長痛の原因はなんですか。

岡野医師:はっきりした原因がわかっていないのですが、幼児期の足の痛みは、骨や筋肉の成長そのものよりも、不安定な気持ちが影響していると言われています。たとえば弟や妹が生まれたり、ペットを飼い始めたりなどといった環境の変化をきっかけに足に痛みを感じるお子さんが多いです。

── なぜ夜中に、足にだけ痛みを感じるのでしょうか。

岡野医師:こちらもはっきりとした原因がいまだにわかっていないのですが、1日の疲れがあることや、小さいお子さんは夜間に不安感や寂しさを感じることが多いからだと言われています。

── 子どもが痛みを訴えた場合の、家庭での対処法はありますか。

岡野医師:痛みを感じる箇所を冷やしてあげたり、湿布を貼ったり、幼児であればさすってあげて寄り添うだけで気分が落ち着き、そのあとは眠れるという子も多いです。

幼児期の成長痛への対処法は寄り添うこと

── 病院には連れていかなくても大丈夫でしょうか。

岡野医師:夜間に痛みを感じても、翌朝は元気に歩いたり走ったりできている場合は、ほとんどが経過観察でいいと思います。ただ、気をつけなくてはならないのは、先天的な病気や基礎疾患などが隠れている場合です。特に小さいお子さんは、痛みの箇所を正確に伝えることが難しいので、股関節に炎症が起きていても「足が痛い」という子もいます。

痛みが継続していて足が腫れている場合は、無理に動かさず、冷やして痛み止めをうまく使い、病院に連れていくのがいいです。足が急激に腫れてきた、数時間経ってから内出血が起きたなどの症状がある場合はすぐに受診してください。

── 何科を受診したらいいですか。

岡野医師:お子さんに熱がある場合は小児科で大丈夫ですし、ケガをしていたり、していなくても痛くて動けなかったり、普段は歩いているのに歩かなくなったような場合は整形外科がいいと思います。病院では、関節を動かせるか、腫れているかなどを総合的に診て、その後は必要に応じてエコーやレントゲンをとります。炎症が起きていて関節が腫れていたとか、まれに腫瘍があるケースもありますので、検査が必要です。

思春期の成長痛は「体が硬いことが原因」

── 経験がある方も多い、いわゆる思春期の成長痛の足の痛みの原因はなんですか。

岡野医師:運動をしている子としていない子でも違うのですが、思春期に骨が伸びたり筋肉がついたりすることで痛みが出ることがあり、さらに運動をしている場合は、過度の運動ストレスがかかることで症状が出るケースが多いです。運動の疲労による筋肉や腱の付着部の痛みはどちらかというとスポーツ障害に近いと思います。この場合はいわゆるオーバーワーク、疲労による要因が大きいです。

思春期の成長痛は、運動の疲労によるものが大きいという

身長が一気に伸びる時期に柔軟性のなさから骨や筋肉の成長時に痛みを感じる場合もありますが、身長がいっきに伸びるようなときは痛みというより違和感がある場合が多いです。足がむずむずするような感覚があるときが骨や筋肉の成長している際の症状です。

いずれの場合でも、足に痛みが生じる子は、体が硬く柔軟性が少ないことが共通しています。「オズグット病」と呼ばれる膝に痛みを感じる疾患は、スポーツをする子に多く現れるのですが、太ももの筋肉が張りすぎて硬くなっていることが原因で起こります。思春期のころに運動をしている子は、部活などで毎日のように練習をしているにも関わらず、ケアをする時間が圧倒的に少ないです。競技にもよりますが、走り続ける、投げ続ける、蹴り続けるというようなことを日常的にし続けてしているケースが多いです。

── 思春期の成長痛の痛みを防ぐ方法はあるのでしょうか。

岡野医師:ストレッチをすることは大切です。運動をする場合も、同じメニューであっても個人差や体格差もありますから、個人個人に合ったスケジュールを組み、毎日練習をするのではなく、1日は筋肉を休ませてあげてストレッチに充てられたらいいですね。ただ、現実的にはなかなか難しく、気づいたときにはすでに症状が強くなっているというパターンがほとんどだと思います。できるだけ練習の中に、予防的なストレッチを組み込んでいただけたらと思います。

今はモアレ検査という背骨の曲がりを調べる検査も実施されていますが、病気によってできない動きなどもあるので、本来は運動能力の測定だけではなく、柔軟性も含めた身体的な検査をすべきだと思います。しゃがんでみるとか、片足立ちができるかなども調べて、指導する立場の方や親御さんが把握することも重要になってきます。

また、栄養も成長には欠かせませんが、お子さん自身でバランスのいい食事をとることは難しいです。骨の成長というとカルシウムのイメージがあるかと思いますが、カルシウムの吸収にはビタミンが、筋肉の成長にはタンパク質が必要で、そのほかの栄養素も偏りなくとることが大切です。総合的な知識を持ってお子さんの成長に向き合っていただけたらと思います。

PROFILE 岡野達正医師

岡野整形外科院長。曽祖父の代から約100年続く東京・両国の整骨院を2016年に整形外科クリニックとしてリニューアル。スポーツ外傷や治療から予防まで、ひとりひとりに合ったオーダーメイド診療を目指す。

取材・文/内橋明日香