今週のテーマは「彼から合鍵を貰った。この意味は?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:付き合って1ヶ月。LINE未読スルーされ、合鍵で彼の芝浦のタワマンに突入したら、意外にも…




昨晩から、明日香からLINEが来ているのは知っている。電話もかかってきている。

でも僕は、明日香と名前が表示されているスマホの画面をじっと見ながら、電話が鳴り止むのを待っていた。

― どうしようかな。

そう思いながら、なんとなく既読も付けないままにしていたら、22時頃、突然インターホンが鳴った。

― ピンポーン。

「まさか…」

ビクッとしながら確認してみると、そのまさかだった。明日香が、ドアの外に突っ立っている。

慌てて部屋を見渡すが、とりあえず女の影はない。平静を装いながら、僕は明日香を家の中に入れた。

「合鍵を持っているんだから、そのまま上がってくれば良かったのに」
「いや、さすがにそれは…」

僕は、どこか高を括っていたのかもしれない。どうせ明日香に合鍵を渡しても、「彼女の性格上、勝手に上がってこないだろう」と。

しかし、婚約もしていない相手に、なぜ僕は合鍵を渡したのか?その真相は、渡した時の心境にまで遡る…。


A1:“いけるかも”と思ったから


明日香と出会ったのは、友人たちが開催した食事会とも、ただの仲の良い友人たちとの集まりとも言えるような会だった。

19時半から始まったその会に、僕は急な仕事で30分ほど遅れて参加した。

「ごめん、遅くなった」

そう言いながら店に入ると、初めて見る可愛い子がいた。

「明日香、智也とは会うのは初めてだっけ?」

他の女性陣は大体会ったことがあったけれど、明日香は会ったことがない。

「はじめまして、智也です」
「明日香です」

ちょっと小柄だけれど、とにかく顔が抜群に可愛い。そしてスタイルも僕のタイプな感じだった。




だから最初から、僕は明日香に狙いを定めてグイグイと迫った。

「え!明日香ちゃん、家泉岳寺なの?僕芝浦だから、近いかも」
「そうなんだ!芝浦のどの辺り?」

泉岳寺と芝浦を「近い」と言っていいのかわからないけれど、とりあえず共通点が見つかれば何でもいい。

とにかく会話も全部拾い、僕は盛り上げた。その甲斐あって明日香も心を開いてくれて、気がつけば僕たちはかなり密着して話し込んでいた。

「ちょっと、智也。明日香に近づきすぎじゃない?」

友人にそう突っ込まれるほど、僕は明日香のほうに体が傾いていたようだ。

僕たちは、そのまま近くの西麻布交差点付近にあるカラオケ付き個室のバーへ移動する。

その時も、僕はしっかり明日香の隣をキープしていた。




薄暗い店内では、明日香の大きな瞳がより一層潤んで見える。僕はじっと明日香の顔を覗き込んだ。

「明日香ちゃん、なんか歌ってよ」
「私、歌下手だから…。智也くんは?歌わないの?」
「僕も聞く専門」
「そうなんだ」

― 可愛い…。

明日香も酔ってきたのだろうか、先ほどから距離が近い。この時、僕は心の中でピンときた。

― あれ?これは…イケるかも?

僕は周りから見られないように、明日香の腰の後ろあたりでコッソリと彼女の手を握ってみた。

「…え?」

一瞬驚いた顔をする明日香。

「ごめん、嫌だった?」

ここで嫌がられたら、もちろんやめるつもりだった。

でも明日香は黙って首を横に振り、結局手を繋いだまま…。

初対面なのに嫌がっていないうえ、向こうにも好意があることは明らかだった。

もう舞台は整った。

だから僕は、速攻でデートに誘うことにした。


A2:勝手に来ないと思ったし、特に害がなかったから


こうしてすぐに実現したデートは盛り上がった。僕は、明日香と次のステップに進みたいなと思っていた。

「俺さ、明日香ちゃんをひと目見た時から気になっていて」
「嘘だよ〜」
「本当に!顔もタイプだし、純粋に可愛いなと思って」

本当だった。可愛いかったり綺麗な人は世の中にたくさんいると思うけれど、話も合い、「一緒にいて楽しい」と思える人は貴重だ。

明日香も、同じように思ってくれていたらしい。

「それを言うなら、私もだよ。智也くん、すごくタイプで」
「マジで?嬉しい」

熱いムードのまま一緒にタクシーに乗り込んだ。そうなると、行き先は決まっている。

でも、タクシーの中で、明日香から確認が入る。

「ごめん、付き合っていない人とこういうことは…」
「もちろんだよ」

このタイミングで、「いや、真剣に付き合うつもりはまだない」とか言うバカはいない。

そのまま一緒に僕の家へ帰り、朝まで過ごした。




そして初めて一緒に過ごしてから、三度目くらいのことだっただろうか。いつものように食事のあと、僕の家へ来た明日香だったが、深夜に帰り支度を始めた。

「あれ?今日は泊まっていかないの?」
「うん。今日は着替えとかないし、帰ろうかな」
「そっか…。朝ごはん一緒に食べたかったな」

前回泊まった時。翌日が休みだったこともあり、昼過ぎまで一緒に過ごした。その時、明日香は部屋の掃除や食事の準備までしてくれたのだ。

平日は仕事が忙しいうえ、家事が苦手な僕からすると非常にありがたかった。

「もう少し明日香と一緒にいたいな」

すると明日香は急にパァっと顔を輝かせ、結局この日も泊まって、翌日は昼過ぎまでいてくれた。

もちろん食事の準備などもしてくれたうえで…。

この一連の流れを経て、僕は考えた。明日香だったら、いつでも僕の家に出入りしてくれて構わないな、と。

「嬉しい。明日香好きだよ。はい、これ」

こうして僕は合鍵を渡すことにした。




もちろん会いたい気持ちもある。でも心のどこかで、「来たら家事とかしてくれるかな」と思っていたことも否定はしないし、特に深い意味はない。

「可愛い明日香と一緒にいられてラッキーだな」、くらいの軽い気持ちだ。

「え、これって…」
「明日香、信用できそうだから。もし良ければ」

あと、合鍵を渡すと本当にガツガツ来る女性もいるが、「明日香だったら勝手に入ってこなさそうだな」と思ったのもある。

明日香の性格上、来る前には絶対連絡をするだろうし、僕がいない間に無断で部屋に上がることはなさそうだ。

「ありがとう!!嬉しい」

しかも本人も喜んでくれている。これが何より嬉しかった。

しかし1ヶ月が過ぎた頃、最初のトキメキはなくなってきたし、以前のように自分の中で盛り上がらなくなってきた。

本当に自分勝手だとは思うけれど、特に理由はないけれど急に冷めてしまったのだ。

「でも合鍵も渡しているし、どうしようかな…」と思っていた矢先…。

急に明日香が部屋に乗り込んできて、正直驚いた僕。

― これが潮時ってやつか…。

まだ他の女性の影はないものの、軽い気持ちで渡した合鍵は、とりあえず返してもらうつもりだ。

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▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟

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