好きなことに没頭して癒されよう! 編み物、塗り絵、写経…没頭ティップス8つ

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何かに没頭した後、幸せを感じることはありませんか? 実はその充実感は、癒しやウェルビーイングと深い関係がある模様。心理学〈フロー理論〉からひもとく、“没頭”と“幸せ”のポジティブな関係をご紹介します。

我を忘れ夢中になった後に得る、あの充実感。

「遊びに熱中していたらあっという間に時が経ち、終わって初めて、“楽しかった、またやりたい”と思う。誰でも子供の頃にそんな経験をしたはずです。その熱中している状態が〈フロー状態〉と呼ばれるものです」

と言うのは、長年フロー経験を研究している心理学者の浅川希洋志先生。人は何かに没頭すると周囲の状況が気にならなくなり、さらに目の前の行為にのめり込んでいくものだが、

「それは、今やっている行為が楽しいからこそ自分の限られた“心理的エネルギー”をどんどんそこに注ぎ込み、結果的に“その行為”以外のことに使うエネルギーが残らなくなってしまうから。よくスポーツ選手が“ゾーンに入っていた”と言いますが、フローもほぼそれと同じような状態のことです」

フロー理論では〈挑戦没頭目標達成即座の評価〉というプロセスがあって初めて幸福を実感できる。例えば編み物に初挑戦し面白さに目覚め、我を忘れて夢中になり、出来上がった作品をSNSにアップしたら友人たちがすぐに〈いいね〉をくれた、幸せ…ということ。

「夢中なことにおいて難しい目標を達成し、かつそれを評価されると喜びを得る。人間は、その回路があるのだと思います」

没頭時は心理的エネルギーが1点に集中するため、ストレス感知に使う余力はない。つまりフロー状態=ストレスフリーともいえる。

「最近臨床では、ストレスが軽減されている状態=癒されていると捉える解釈もあります。そういう意味では、癒しとフロー理論は極めて近い関係にあるのかもしれませんね」

フロー【Flow】

内発的に動機づけられた没入感を伴う楽しい経験のこと。フロー状態にあるとき、人は高いレベルの集中力を示し、楽しさ、満足感、状況のコントロール感、自尊感情の高まりを経験する。米国の心理学者ミハイ・チクセントミハイが提唱。

自分の能力をフルに使って何かに没頭する、それが第一歩。

浅川先生によると、日本人は他者との関係性を重視する文化の中で生きているので、他者の評価など、“自分がすべきこと”以外に、自らの限られた心理的エネルギーを割くことが多い。

「でも、フロー状態に至るには、その限られた心理的エネルギーすべてを、“自分が今行っていること”に集中させることが大事。心理的エネルギーをすべて活動に注ぐことで、周囲を意識せず、没頭状態に入れる、というわけです」

深く深く没頭していくことで、高みに上る、そのプロセスが大事。

知識の深化、あるいは技術の向上。それがあって初めて、フロー状態を経験でき、その先の幸せに手が届く、と浅川先生。

「チクセントミハイも書いていましたが、簡単なこと、あるいは同じことをただただ漫然と繰り返していても、フロー状態に入れません。その行為に対して興味を持ち、やり込むことで、能力を高めていくことが重要。つまりフロー体験とは、学び、高みに上っていくことでもあるんです」

自分の能力に合った活動に没頭し、結果に対する即座の評価が必要。

でも、ただ好きなことをやるだけでは、充実感を得たり、幸せを感じられたりするわけではない。

「行う活動が、自分の能力をフル稼働する必要があるような難しいものであり、なおかつその行為の瞬間瞬間にクリアな目標があり、行為に対する即座の評価が得られること。このプロセスが、フローを生み出します。現代なら、SNSで成果をすぐにアップし、即座に“いいね”をもらうのもいいでしょう」

フロー体験の芽はあちこちに。好奇心を働かせ、没頭の種を探そう。

つまり、フローを体験するには、自ら興味を持ちすべての心理的エネルギーを投入できる“何か”の存在が必要。そしてその“何か”をたくさん持っていれば、フロー状態を経験できる機会がたくさん持てる、ともいえる。

「実は私たちの周りには、自分を刺激してくれるさまざまなものが転がっています。それを見つけ、拾い上げ、自分のものにして育てられるかどうか。それは自分の意識次第です」

フロー体験の入り口かも? 没頭ティップスのすすめ。

周囲に意識を取られがちな私たちは、部屋で一人で集中できる趣味を持つことが、フロー体験を得る近道かも。ということで、手を動かしながら無心になれる、そんな趣味をご紹介。キットを手に入れれば、始めるのも簡単!

1、モールドール作り

自分の思う“かわいい形”を求めて一心不乱にモールを動かそう。ほわほわのファーがついたモールで作るぬいぐるみ、モールドール。かわいい形にするべくモールを曲げたり丸めたり差し込んだりしているときに、思わず我を忘れます。糸や針を使わずにできるので、手芸初心者でも手軽にチャレンジできます。モルドール手作りキット¥968(つくる楽しみ )

2、編み物

ひと目ひと目編んでいく、その時間の積み重ねが、幸せ。一人で没頭する時間が持てる趣味の代表選手といえば、編み物。未経験者でもトライしやすいガーター編みを詳しく解説した冊子、毛糸玉、棒針、とじ針がセットになったキットを使えば、誰でも気軽に“編み物の成功体験”を味わえるはず。はじめてKIT 棒針編み¥2,640(DARUMA/横田 TEL:06・6251・2183)

3、塗り絵

はみ出さないよう、丁寧に…。細かいパーツを塗る作業に夢中。絵を描くのは苦手でも、塗り絵を使えば、“絵が完成する喜び”を体感できる! 細かい塗り分けが必要なレベルの高い塗り絵を選び、細かい作業に思い切り没頭して。左・美しく華麗な愛の世界 源氏物語ぬり絵¥1,650 右・水ぬりえパレットキット 新装版(筆とぬりえとセット)¥990(ブティック社)

4、木彫り

四角い木材からスプーンを彫る。形に辿り着くまでの時間が濃密。木彫家・はしもとみおさん公認の木彫りセット。彫り方ガイドが掲載された書籍を片手に、彫刻刀を使いウォルナット角材からネコスプーンを削り出す。出来上がりの形を想像しながら集中して彫刻刀を運ぶ時間を、ぜひ体験して。はしもとみおのはじめての木彫りセット¥20,900(道刃物工業)※彫刻刀ケースのデザインが変更になっています。

5、刺繍

ひと針刺すごとに絵が出来上がる。完成に近づく喜びを味わって。図案がプリントされた布と刺繍糸、針のキットを使えば、ビギナーでも、ひと針ひと針積み重ねていく刺繍の楽しみをすぐに味わえる。かわいい絵柄を選べばより没頭できそう。動物刺繍で人気のChicchiさんデザインの刺繍キット。〈雨上がりと花の香りに喜ぶ小鹿さん〉¥3,080(ディー・エム・シー)※はさみ、刺繍枠はセットに含まれません。

6、パン作り

雑念を忘れ、パン生地を捏ねる。その心地よさに思わず没入…。強力粉などパンの材料と食パン用の型、さらにデジタルレシピがセットになっており、水とバターを用意すれば、気軽に自宅でパンが焼ける。人気料理教室「ABC Cooking Studio」の商品。パン生地と向き合う時間に癒されて。手づくりパンキット 食パン型付き¥2,380(ABC Cooking MARKET)

7、写経

心を込めて丁寧にお経を書き写す。その行為が心に平安を呼ぶ。般若心経を書き写す“写経”は、集中するほどに思考がシャットアウトされ、“無”の状態になれる。初心者は、筆ぺんを使った写経から始めるのがおすすめ。写経筆と写経用筆ぺん、硯と墨、写経用紙と般若心経の手本が、美しい箱に入ったセットが便利です。呉竹 写経具セット 紫¥4,400(呉竹 TEL:0742・50・2050)

8、陶芸

形を作り作業の喜びを感じ、焼き上げれば完成の感動が。納得のいく仕上がりを求め、ただひたすらに陶土と向き合っていると、いつの間にか雑念が消えていき、陶土と自分だけの世界に…。オーブンで焼ける陶土2種と絵の具などが一箱に収まったこのセットを使えば、家で陶芸体験が可能。オーブン陶土セット「新Blue&White」¥4,510(ヤコ)

あさかわ・きよし 法政大学大学院 国際文化研究科 教授。シカゴ大学にて〈フロー理論〉提唱者であるチクセントミハイ氏に師事、以降フロー体験やウェルビーイングについて研究を重ねる。現在は企業との共同研究なども。

※『anan』2024年7月10日号より。写真・内山めぐみ

(by anan編集部)