「会社で働くのがバカみたい!」本業と副業で年収1,100万円の女は…
年収“8ケタ”(1,000万円以上)を稼ぐ女性たち。
給与所得者に限っていえば、年収8ケタを超える女性の給与所得者は1%ほど。(「令和2年分 民間給与実態統計調査」より)
彼女たちは仕事で大きなプレッシャーと戦いながらも、超高年収を稼ぐために努力を欠かすことはない。
だが、彼女たちもまた“女性としての悩み”を抱えながら、日々の生活を送っているのだ。
稼ぐ強さを持つ女性ゆえの悩みを、紐解いていこう――。
File8. 裕子、年収1,100万円。副業で稼ぐ女
「あと15分くらいあるな。この時間にインスタの下書きを作っておこうっと」
ちょっとしたスキマ時間であっても、裕子はこういったSNSの原稿作りや撮影、画像加工に余念がない。
裕子は大学卒業後、食品メーカーに入社した。以降、ずっと事務職一筋で働いている。
勤めているのは、日本ではその名を知らない人はいないであろう大企業。福利厚生もしっかりしているし、繁忙期でも残業はほとんどなく、一般的には“ザ・ホワイト企業”といえるだろう。
…しかし、裕子には仕事の不満が2つあった。
1つ目は、年収があまり高くないこと。
福利厚生や諸手当には恵まれているものの、手取りの給与そのものは高給とは言い難く、ファッションやコスメに費やせる金額は限られた。
2つ目は、仕事に変化や刺激がほぼないこと。
事務職ということもあり、裕子が担当している内容は誰でもできるように標準化された定型的な作業がほとんどだった。
新卒で入社して間もない頃は、何の創造性もない仕事内容に危機感を抱くこともあった。しかし、5年以上経ってしまった今となっては、もはやそんな危機感さえも薄れてしまっている。
― 今の仕事はつまらないけれど、営業職になってプレッシャーと戦うなんて私にはとても無理だわ。誰でもできる仕事なんだから、年収が低いのも当たり前と言えばそうなんだけど…。
「福利厚生の良さは手放したくない。でも、お金はもっと欲しい」
我ながらなんて欲張りなのだろうと呆れてしまうが、これが裕子の正直な気持ちだった。
そんな悶々とする日々を送っていた裕子。だが、ある日1つの“提案”を受けることとなった。
その“提案”は、裕子のインスタに届いた1通のメッセージに書いてあった。
『はじめまして。〇〇編集部です。
突然のご連絡で申し訳ございませんが、この度、インフルエンサー×企業のマッチングプラットフォームへの特別ご招待でご連絡させていただきます!
裕子さんのInstagramの内容を大変興味深く拝見しました。そして、ぜひ美容や健康に関するイベント参加、情報発信にご協力いただけないかと考えております。
案件ベースでのご相談となりますが、1案件は3万円程度の謝礼を…』
― 1案件3万円!?それって、10案件こなしたら30万円ってことよね…。
“インフルエンサー”という、若干世の中で揶揄されがちなその存在はもちろん知っていた。しかし、実際に自分に声がかかるなどとは、裕子は思ってもみなかった。
Instagramを趣味で続けている裕子にとって、画像やちょっとした文章をアップすることくらいはまったく苦にはならない。しかも、仕事も定時に終わることがほとんどなので、平日夜に行われるイベントにも参加することができる。
― 私なんかがインフルエンサーなんて…いいのかな?でも面白そうだし、やってみようかな!
社内規定では、申請書を提出すれば副業が許可されている。
裕子は早速、副業申請書を提出し、SNSでの副業をスタートしたのだった。
◆
裕子は、インフルエンサーとして初めてイベントに参加する日を迎えた。
今回招待されたのは、大手海外コスメブランドの新作発表会。周りの参加者に負けないよう、GRACE CONTINENTALの新作ワンピースを着て裕子は赴いた。
会場に入ると、今まで参加していたような無料イベントとは桁違いの豪華さに、裕子は目を奪われてしまった。
― うわー!やっぱりキラキラしている!こういう場所に来る人って、やっぱりフォロワー1万人超えの人ばかりなのかな。私も、その仲間入りができちゃったのかな?
編集部に事前に指示されたように、新商品や自分がそれらを試している姿を写真に撮影した。
そして、会場を出る時には自分だけでは使いきれないほどのコスメをプレゼントされた。
裕子がこの後するのは、イベントの様子をSNSにアップすることだけだ。これで3万円ももらえてしまう!しかも、商品もタダで提供してもらえるのだ。
― こんなおいしい仕事、他にないわ!できる限り稼いでいこう!
会社員としての裕子の給与は750万円ほどだったが、“インフルエンサー副業”を始めたことで、瞬く間に記事報酬や広告収入が入ってくるようになった。
そして気がつくと、副業だけでも月30万円ほど稼ぐようになり、会社員の給与と合わせると1,000万円を超えるようになったのだった。
◆
「もう私、真面目に会社で働くのがバカらしくなっちゃった。SNSのお仕事もっともらえないかな〜」
「ホント、月に10回稼働すれば30万円稼げるもんね。真面目に働くのがアホらしくなっちゃう」
周りのインフルエンサーの中には、「副業を本業にして生きていこう」と言わんばかりに、このような発言をする子も増えていった。
楽しいイベントにインフルエンサーとして特別扱いで参加できて、編集部からチヤホヤされて、お土産もたくさんもらえて、手軽に楽しく稼げる…。周りのインフルエンサーがこのような気持ちになるのも、裕子は十分すぎるくらいに理解できる。
しかし、裕子は心のどこかに“ある不安”を抱えていた。
― 今の生活は確かに楽しいけれど、私、これでいいのかな…。
それは、雲をつかむような漠然とした不安だった。しかし、いくらインフルエンサーとしてそれなりにお金を稼げるようになっても、会社員の立場を捨ててまでインフルエンサーとして生きていこうという気持ちにはなれなかった。
そしてある日、裕子のそんな不安が的中する瞬間が訪れてしまうのだった。
『最近、私のインスタとブログのPVが全然上がらなくなったの。みんなは、どうなのかな?裕子ちゃんはSNSのPV、キープしてる?』
裕子のもとに、こんなメッセージがインフルエンサー仲間から届いた。
『うん、私も最近あまりヒットしていないんだよね…。SEOワードとか気をつけているつもりなんだけれど…』
こうやんわりと返したが、インフルエンサー仲間と同様に、裕子もある時からSNSで稼げなくなってしまった。
そして、このやりとりから数日後。裕子は、インフルエンサー仲間からある事実を聞いた。
裕子をはじめ、インフルエンサーたちのSNSアクセス数が急減した理由。
それは、Googleアドセンスの検索結果表示ロジックが変更になったことだった。
今までブログやInstagramなどのSNSでトラフィックを集めると、自動的に収益化できていた。しかし、大手企業が管理するサイトなど、一般的に信頼性があるサイトがGoogleでは優先的に表示されるように変わっていた。
つまり、アフィリエイトやアドセンスなどのブログ・SNSで稼ぐということが、突然困難になったのだ。
他のインフルエンサーと同様に、裕子の副業収入はあっという間に激減した。
イベントなどで毎回顔を合わせていたメンバーの何人かも、まったく姿を見せなくなっていた。
― あの子たち、いったい今頃どうしているのかしら…。
彼女たちが定職を持っているのかどうかは知らないが、会社員として働いていそうな雰囲気はない子たちばかりだった。
きっと実家がお金持ちで生活に困らないのか、パトロンがいるのか…そんなことばかり裕子は思案してしまう。
だが、裕子はインフルエンサー活動を通じて得た気づきがあった。
それは「他者が決めたルールでのお金儲けには限界がある。恒久的には稼げない」ということだ。
裕子は本業であるメーカーの事務職を続けたままインフルエンサー活動をしていたが、それは「インフルエンサーのみでは、なんとなく不安だったから」だ。
その「なんとなくの不安」の正体とは、何だったのか。裕子も完全に突き詰めているわけではない。
しかし、誰かが用意したビジネスの仕組みに乗っかっていただけで、自分ではビジネスも何も生み出していないことだけは、裕子は気がついていた。
他の誰かが用意した仕組みの上で動いているのであれば、仕組みが変われば動けなくなるのは至極当然だ。
― 結局、自分の手でビジネスを作れないのであれば、真の意味で稼げる人にはなれないんだな。私は地道に会社でできることを増やすしかないな。
インフルエンサー収入がなくなり、年収は激減した。
しかし、年収の激減の代償に、裕子はこの気づきを得ることができた。
「次に副業をするのであれば、きちんと自分でビジネスを生み出すくらい本気で取り組まないとダメなんだな」
こう悟った裕子だった。
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