男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?

誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。

さて、今週の質問【Q】は?

▶前回:絶対に、家に上げてくれない男。「今日は部屋が汚い」と言われ、他に女がいると怪しんだら実は…




土曜23時過ぎの中目黒。隣を歩いていた杏奈が、急に無言で立ち止まる。

「杏奈ちゃんどうした?…あ、ごめん!足痛かった?」

“ヒールの女性を歩かせたらダメ”と知っているはずなのに、夏の夜風が気持ちよくて、店を出た後つい目黒川沿いを歩いてしまった。

杏奈の足元を見ると、そこまでヒールが高い靴ではなかったけれど、もしかしたら歩くのは苦痛だったのかもしれない。

でも杏奈から出てきた言葉は、想像していなかった一言だった。

「智弘くん…。今って彼女いないんだよね?だったら私と付き合ってほしいな。結婚を前提として」
「え…!!」

喉の奥から、変な声が出てしまった。

なぜなら最初、杏奈からの連絡は絶望的に遅くて、僕のことなんて一切眼中になさそうだったから。

メッセージを送っても既読になるのは3日後などで、食事に誘っても、1週間も返信がなかった。

それなのにどうして急に、しかも向こうから「付き合おう」だなんて言ってきてくれたのだろうか…。


Q1:女の返信が遅かった理由は?


杏奈と出会ったのは、マッチングアプリだった。3年付き合っていた彼女と別れ、絶望的になっていたところ、友人からアプリを勧められたのがキッカケだった。

今年で32歳になる僕。

マッチングアプリはハードルが高いかなと思っていたけれど、実際に登録すると想像以上に可愛い子が多くて驚いた。

そんな中でも、僕は杏奈のプロフィールが目に留まった。

白い肌に大きな瞳。32歳と年齢も近く、綺麗な歯が印象的で、その笑顔がとてもいいなと思った。

単純に可愛いなとも思ったけれど、プロフィールを見てみると“ゴルフが趣味です”と書いてあり、さらに嬉しくなる。




最近ゴルフにハマっている僕としては、どちらかというと一緒に趣味を楽しめる女性のほうがいいなと思っていたから。

しかもその日のうちに杏奈から“いいね”返しが来て、僕たちは見事にマッチングした。

― あれ?こんなに順調に進むの?

そう思ってつい浮かれていた僕は、馬鹿だったかもしれない。

なぜならマッチングしてすぐにメッセージを送ってみたのだが、返信が一向に来なかったのだ。

― Tomo:マッチングありがとうございます!智弘といいます。僕も最近ゴルフにハマってます。もしよければ、宜しくお願い致します。


そこで僕は、気がついた。マッチしても次に進めないこともある…ということに。




これは少しショックだった。自分のプロフィールが悪いのか、それともこの少しの間にイイ人に出会ったり、彼氏ができたりしたのか…。

気を取り直して他の人のプロフィールなども見ていた1週間後。ようやく、杏奈から返信が来た。

― 杏奈:返信が遅くなってしまい、ごめんなさい!忙しくてアプリを開けていなくて…本当にすみません。いいね、ありがとうございました。


その丁寧な返信を見て、僕は思わず微笑んでしまった。正直、写真だけの印象だと少しキツイ性格にも見えたから。

でも文面の感じからして誠実で、きっと素敵な女性なんだろうなということが容易に想像できた。

別に怒ってもいないし、忙しかったならば仕方のないこと。

そう思い、僕はこう返信を打った。

― Tomo:むしろお忙しい中、お返事ありがとうございます!お写真が素敵だったので、思わずいいねを押してました。


けれども再び杏奈から返信が来たのは、この3日後だった。


Q2:女が男と交際したいと思った理由は?


なかなか来ない返信に、進まないやり取り。

― Tomo:杏奈さんは、ゴルフどれくらいの頻度で行かれるんですか?


(4日後)

― 杏奈:1ヶ月に1度行ければいいほうです。特に最近は暑いので全然行ってなくて…。智弘さんは、どれくらいで回られるんですか?
― Tomo:僕も1ヶ月に1回くらいです!本当はもっと行きたいのですが、実際はなかなか…。2枚目の写真は、どちらですか?美味しそうですね。


(3日後)

― 杏奈:これは札幌へ旅行した際に食べた、地元のお鮨屋さんの写真です!
― Tomo:北海道いいですね!何を食べても美味しいですよね。


こんな感じで、のんびりとメッセージのやり取りが続くだけ。

「もうダメかな」

そう思い、諦めかけていたところ、杏奈から急にこんな連絡が来た。

― 杏奈:返信が遅くて本当にすみません。細かい連絡が苦手で…。もし良ければ、一度お会いしませんか?


急な展開に、僕が一番驚いてしまった。“会いたい”ということは、嫌われてはいないのだろう。

僕としては早く会ってどんな女性なのか確かめたかったので、大歓迎だ。こうして、僕たちは実際に会うことになった。

そして待ち合わせのカフェへやってきた杏奈は写真とほぼ変わらず、可愛かった。




「私、こうやってアプリでマッチした人と会うの初めてなんです」
「僕もです!」

思わず声が大きくなる。最初にマッチしたのが杏奈だった僕は、きっとラッキーだ。

「写真と違ったりしませんか?大丈夫でした?」
「もちろんですよ。写真も可愛いなと思ったんですが、実物はもっと綺麗です」

そう言いながら、お互い思わず笑ってしまった。

「なんか照れますね」
「そうですね」

2人の間に、ゆったりとした時間が流れていった。




そしてこのデートを終え、次回のデートの帰り道。僕は、杏奈から急に告白されたのだ。

もちろん嬉しいし、付き合えるならば付き合いたい…と、写真を見た時から思っていた。

でもどうしてメッセージのやり取りの段階では、あそこまで冷たかったのだろうか。ちなみに僕のプロフィールは至って普通だと思う。

プロフは誰かと飲みに行った時に撮った、普通にスーツを着ている写真。2枚目以降はゴルフと、男友達と一緒に行った沖縄の写真。

文面もこれといって面白みもない、普通の自己紹介だ。

交際できることになった嬉しさを噛み締めながらも、そこだけ疑問が残っている。

▶前回:絶対に、家に上げてくれない男。「今日は部屋が汚い」と言われ、他に女がいると怪しんだら実は…

▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由

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女が男に惚れ込んだ理由は?