耳鼻咽喉科専門医に聞く。のどが痛いときの対処法―「切ったネギをガーゼで包んで首に巻くのはNG」

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風邪のひき始めや乾燥した室内、目覚めたときなど、のどの痛みを感じることがあります。ちまたで耳にする「のどが痛いときの対処法」の是非について、耳鼻咽喉科専門医で、とおやま耳鼻咽喉科(大阪市都島区)の遠山祐司院長に伺いました。

■ガムをかんでのどを潤わせる

Q1.お茶や紅茶でうがいするのはOK?

遠山医師 ○ お茶や紅茶に含まれているカテキンが、風邪やインフルエンザなどのウイルスや細菌にくっついて、体内へ取り込まれるのを妨げます。

のどは、食べ物や飲み物の通り道であると同時に、空気の通り道です。のどの痛みは、空気中のウイルスや細菌によってのどが炎症を起こしているときや、腫(は)れあがっているときに現れます。

うがいは、のどの粘膜に付着した細菌やウイルスを洗い流します。また、のどを適度に刺激して粘液の分泌や血流を促し、のどの潤いを保ちます。

鼻からのどへ続く粘膜には、「せん毛」という毛がすきまなく生えています。これが活発に動く「せん毛運動」によって、体内に侵入したウイルスや細菌などを、たんやせきと一緒に体外へ運び出します。

せん毛は「乾燥」に弱く、のどの潤いが低下すると動きが鈍くなるので、ウイルスや雑菌などが体内に入りやすくなります。

効果的なうがいの方法は、まず一回目は口の中をすすいで吐き出します。食べカスや雑菌を取り出すわけです。二回目に、上を向いて「ガラガラ〜」と声を出しながらゆすいでください。

Q2.ガムをかむのはOK?

遠山医師 ○ ガムをかむことで、のどを潤わせることができます。のどが乾燥すると、せん毛運動が低下するので、侵入した外敵を外に出す力が弱まります。すると、炎症が起こってのどが痛みます。

また、のどの湿度を保つために、マスクをする、加湿器を利用することをお勧めします。

Q3.切ったネギをガーゼで包んで首に巻くのはOK?

遠山医師 × 民間療法で耳にする方法の一つですが、医学的な根拠はありません。「ネギの独特のにおいが効きそう」と、患者さまからも言われますが、のどの痛みを和らげる成分が皮ふから吸収されるわけではありません。

ネギに含まれる辛み成分のアリシンには、疲労回復や血行促進の働きがあるので、食事に取り入れると風邪の予防や症状の改善は期待できるでしょう。

Q4.温めた日本酒に溶いた卵を合わせる「卵酒」や、「ショウガ入り梅酒」などがいいと聞きますが、OK?

遠山医師 × アルコールは分解するときに大量の水を必要とするので、脱水のリスクが高まります。のどの粘膜が乾燥して炎症を引き起こす可能性が高まるので、飲酒そのものを控えることをお勧めします。

また、熱すぎる、冷たすぎる飲み物は、のどに負担をかけるので避けましょう。

さらに遠山医師は、のどが痛いときの対処法について、こう説明します。
「のどが痛む、イガイガするなどの異変を感じたときは、とにかくすぐに、マスクをする、うがいをするなど、のどの粘膜を保護し、乾燥を防ぎましょう。うがい薬を使って殺菌することも有効です。

また、のどの痛みが原因で食べ物が飲み込みにくい、息がしにくい、発熱をともなう、声が出にくくなってきたなどの症状が、目安として3日以上続く場合は、医療機関を受診しましょう」

のどの痛みが気になるときは、口の中、のどの潤いを意識して、うがい薬やお茶、紅茶でうがいする、ガムをかむ、マスクをするなど、早めにケアしましょう。

(藤井空/ユンブル)

取材協力・監修 遠山祐司氏。耳鼻咽喉科・気管食道科専門医。大阪市都島区医師会会長。医学博士。とおやま耳鼻咽喉科(大阪市都島区)院長。
http://www.eonet.ne.jp/~tohyamajibika/