「おしゃれをするのは自分自身のため」“好きな服”を選ぶ勇気を後押しするエッセイ漫画に共感の声!【作者に聞く】
SNS上で推しのファンアートやエッセイ漫画を、独自の世界観で投稿しているyuicco(@yuiccooo)さん。なかでも愛する古着やピンクのアイテムなど、yuiccoさんが大好きなファッションの話を漫画にした「一生ピンクの服着て生きたい」(以下「#いしょピン」)というコミックエッセイシリーズが、ファッション好きから話題を呼んでいる。
【漫画】本編を読む
特に、「好きな人たちに会う」ことがおしゃれのモチベーションだったことに気づいた話は、「わかりみ通り越して全く同じ状況です」「完全に私が主人公やん」と大反響。そんな「#いしょピン」シリーズについて、作品へのこだわりなどをyuiccoさんに聞いた。
■幼いころからピンクの服が好きで、高校生で爆発!
まずはファッションに興味を持ったきっかけを聞くと、「『#いしょピン』1話にもあるように、物心がついたころにはいつの間にかピンクの服が好きでした。そのため、明確なきっかけはわかりません…。幼い頃、母や祖母と買い物に行くと、たまに好きな服を買ってもらえました。今思うと買ったものをプレゼントされるのでなく、自分で選ぶことができていたのが大きかったのかも」とyuiccoさん。中学では制服だったが、高校で私服登校になったことをきっかけに、一気におしゃれ心が爆発したそうだ。
好きなブランドや、よく行くショップも教えてくれた。「古着が好きなのもあり、これと決まったブランドはないのですが、『Keisuke Kanda』は特別な存在です。服に委ねられたストーリーや意味が自分の共感するものだとより好きになります。ほかには、『PINK HOUSE』『SINA SUIEN』『AKIKOAOKI』なども好きですね。まだ一着も持っていないけれど、最近は『tanakadaisuke』もステキで気になっています」
古着を愛してやまないyuiccoさん。その魅力を聞くと、「一番は『ストーリーがある』ことかもしれません。海と時代を越えて残ったヴィンテージのものも、リサイクルショップの一度誰かの手に渡り手放されたものも魅力的です。最近、下北沢の『3びきの子ねこ』というお店でadidasのジャージを買ったんですけど、内側のタグに『馬渕』と油性ペンで名前が書いてあって、『あ、この服は馬淵さん(誰?)から巡りに巡って私のところに来たんだな…』とか、妄想できて楽しいです」と教えてくれた。
また、小さいころから自我の形成の一つとしてファッションがあったため、誰かと被ることがないのも魅力に感じているそうだ。「逆に言うとほぼすべて一点ものなので、お店のブログやインスタに上がった、どうしても欲しいと思った一着が売れてしまって後悔したことが数え切れないほどあります。それもあり、自分のどんぴしゃの一着を見つけたときの興奮は大きいですね!ボロボロになってもずっとお気に入りです」
■「#いしょピン」シリーズはファッション指南書にしたくない
おしゃれを楽しむうえで、モチベーションになっていることは「好きな人に会うこと」だというyuiccoさん。「コロナ禍のことを書いた5話の『自分をかわいくする理由』にも描いているのですが、とにかく根がずぼらすぎて、四六時中おしゃれできているわけではありません…(笑)」
そんなyuiccoさんは、出かける予定の90%がアイドルのイベントだそう。「イベント・会場・場所・日付けに合わせてテーマをつけたり、対バンするアイドルグループの衣装風にしたり…。やっぱり好きな人に会える時は、服を選ぶのが楽しいです。こういう話もいずれ『#いしょピン』の中で描きたいですね」
yuiccoさんが特に「#いしょピン」シリーズでお気に入りの回は、8話の「自分らしい自分でいていいということ」だそう。社会人になり、いつの間にか大好きだったファッションの楽しみ方を見失っていたyuiccoさんが、あるアイドルに出会い「自分らしい自分でいていい」と気づく話だ。
yuiccoさんは、「#いしょピン」シリーズを描くうえで大切にしていることがあるという。「『ファッション指南書にしたくない』というのが大きなこだわりです。昔からファッション雑誌には指南書のような特集がありますし、今は服を選ぶ学術的な根拠としてさまざまな診断もあります。その基準に合う服を選ぶのも楽しいし選択肢の一つだとも思いますが、それに縛られたら『こうしなきゃ』と、今までの選択肢がなくなってしまうこともあるのかな?とも感じていて。自分の描くものがそうならないよう気をつけています」
yuiccoさんはファッションを学んだ心得があるわけではなく、「ただ好きなものを好きだと言っている漫画を描いているだけ」とも。読者の方から好きな服を着ていいんだと思えるようになったという言葉をもらった時には、「描いて良かったな」と日々思っているという。
「先日コミティアで『#いしょピン』シリーズの過去作をまとめた同人誌を出したのですが、直接感想をいただいたり、読んだ方から長文のメッセージをいただいて胸が熱くなりました。あとなぜか最近、横槍メンゴ先生がこの同人誌を買って読んでくださったようで、嬉しすぎるけどなんで!?とずっと思っています…。どんなところにきっかけがあるかわからないと実感しました」
■「幸せ」と思えるような選択の手助けになる作品にしたい
yuiccoさんが初めてエッセイ漫画を描いたのは、元「でんぱ組.inc」メンバー・夢眠ねむさんの生誕イベントに行った際の「人生史上最高の肉を食べた日」だ。
「日記のように残しておきたい気持ち、誰かに聞いてもらいたい気持ち、何より本人にその時の気持ちを伝えたくて、手紙のような感覚で描きました。すると本人や周りの人からリアクションがあって嬉しくて、それから自分の感情や感想を人に伝える手段としてエッセイ漫画を描くようになりました。始めたころは完全にファンアートとして描いていましたが、前述したお気に入り回(第8話)にもすこし描いたように、自分自身のことも言ってもいいんだ…と思うようになり、『#いしょピン』シリーズも投稿するようになりました」
これまでは「#いしょピン」やファンアートのエッセイ漫画のみを描いていたが、今年の2月には創作漫画「#今日のむに描いた」もSNSにアップしている。
「物語を創作したのはこれが初めてだったのですが、そのかけがえのない喜びに気づいてしまって、いまは新たな物語を考えている途中です。『#いしょピン』の方も、不定期で申し訳ないのですが、変わらず描きたいと思ったときに描きたいです。また、今後の目標の一つとして更新スパンを上げたいとも思っています…(笑)」
最後に読者の方に向けてメッセージをお願いした。
「いつも読んでくださっている方、いつもありがとうございます。この記事で初めて出会ってくださった方、ここまで読んでいただきありがとうございます。みんなも時代や年齢や人の目やその他のあらゆるしがらみに負けないで、一生好きな服着て生きていこうね♡
…と、こういう漫画を描いていたら言うべきなのかもしれません。が、言いたいことはそういうことではなく…。
ありがたいことにたくさんの人に見ていただけて、肯定的な励ましのお言葉も、そうでないお言葉もたくさん受けてきました。人の数だけ感情があることを知り、その一つひとつにいちいち思い悩むことがあります。ファッションに限らず、自分の好きなことを『好き』と言うことは難しく、勇気のいることだと思います。周りの人の目に負けないことは難しいので、負けてもいいから『◯◯を好きでいてよかった!最高に幸せ!』と、自分で思えるような選択ができるように願っています。『好き』は自分のためのものだと思うので。この作品がその一助を担えたらとても嬉しいです」
世間にどう思われるか、 職場や学校でどう思われるか、 友達にどう思われるかを気にして、好きなものを好きと大声で言えない空気感はたしかに存在する。でも、何かを「好き」な思いはほかの誰でもない、自分のための気持ち。yuiccoさんが「#いしょピン」を通して教えてくれるステキな「好き」に、ぜひ触れてみてほしい。
また、「#いしょピン」は現在通販で同人誌も購入可能だ(https://yuicco.booth.pm/items/5782931)。
取材・文=日高ケータ
【漫画】本編を読む
特に、「好きな人たちに会う」ことがおしゃれのモチベーションだったことに気づいた話は、「わかりみ通り越して全く同じ状況です」「完全に私が主人公やん」と大反響。そんな「#いしょピン」シリーズについて、作品へのこだわりなどをyuiccoさんに聞いた。
■幼いころからピンクの服が好きで、高校生で爆発!
まずはファッションに興味を持ったきっかけを聞くと、「『#いしょピン』1話にもあるように、物心がついたころにはいつの間にかピンクの服が好きでした。そのため、明確なきっかけはわかりません…。幼い頃、母や祖母と買い物に行くと、たまに好きな服を買ってもらえました。今思うと買ったものをプレゼントされるのでなく、自分で選ぶことができていたのが大きかったのかも」とyuiccoさん。中学では制服だったが、高校で私服登校になったことをきっかけに、一気におしゃれ心が爆発したそうだ。
好きなブランドや、よく行くショップも教えてくれた。「古着が好きなのもあり、これと決まったブランドはないのですが、『Keisuke Kanda』は特別な存在です。服に委ねられたストーリーや意味が自分の共感するものだとより好きになります。ほかには、『PINK HOUSE』『SINA SUIEN』『AKIKOAOKI』なども好きですね。まだ一着も持っていないけれど、最近は『tanakadaisuke』もステキで気になっています」
古着を愛してやまないyuiccoさん。その魅力を聞くと、「一番は『ストーリーがある』ことかもしれません。海と時代を越えて残ったヴィンテージのものも、リサイクルショップの一度誰かの手に渡り手放されたものも魅力的です。最近、下北沢の『3びきの子ねこ』というお店でadidasのジャージを買ったんですけど、内側のタグに『馬渕』と油性ペンで名前が書いてあって、『あ、この服は馬淵さん(誰?)から巡りに巡って私のところに来たんだな…』とか、妄想できて楽しいです」と教えてくれた。
また、小さいころから自我の形成の一つとしてファッションがあったため、誰かと被ることがないのも魅力に感じているそうだ。「逆に言うとほぼすべて一点ものなので、お店のブログやインスタに上がった、どうしても欲しいと思った一着が売れてしまって後悔したことが数え切れないほどあります。それもあり、自分のどんぴしゃの一着を見つけたときの興奮は大きいですね!ボロボロになってもずっとお気に入りです」
■「#いしょピン」シリーズはファッション指南書にしたくない
おしゃれを楽しむうえで、モチベーションになっていることは「好きな人に会うこと」だというyuiccoさん。「コロナ禍のことを書いた5話の『自分をかわいくする理由』にも描いているのですが、とにかく根がずぼらすぎて、四六時中おしゃれできているわけではありません…(笑)」
そんなyuiccoさんは、出かける予定の90%がアイドルのイベントだそう。「イベント・会場・場所・日付けに合わせてテーマをつけたり、対バンするアイドルグループの衣装風にしたり…。やっぱり好きな人に会える時は、服を選ぶのが楽しいです。こういう話もいずれ『#いしょピン』の中で描きたいですね」
yuiccoさんが特に「#いしょピン」シリーズでお気に入りの回は、8話の「自分らしい自分でいていいということ」だそう。社会人になり、いつの間にか大好きだったファッションの楽しみ方を見失っていたyuiccoさんが、あるアイドルに出会い「自分らしい自分でいていい」と気づく話だ。
yuiccoさんは、「#いしょピン」シリーズを描くうえで大切にしていることがあるという。「『ファッション指南書にしたくない』というのが大きなこだわりです。昔からファッション雑誌には指南書のような特集がありますし、今は服を選ぶ学術的な根拠としてさまざまな診断もあります。その基準に合う服を選ぶのも楽しいし選択肢の一つだとも思いますが、それに縛られたら『こうしなきゃ』と、今までの選択肢がなくなってしまうこともあるのかな?とも感じていて。自分の描くものがそうならないよう気をつけています」
yuiccoさんはファッションを学んだ心得があるわけではなく、「ただ好きなものを好きだと言っている漫画を描いているだけ」とも。読者の方から好きな服を着ていいんだと思えるようになったという言葉をもらった時には、「描いて良かったな」と日々思っているという。
「先日コミティアで『#いしょピン』シリーズの過去作をまとめた同人誌を出したのですが、直接感想をいただいたり、読んだ方から長文のメッセージをいただいて胸が熱くなりました。あとなぜか最近、横槍メンゴ先生がこの同人誌を買って読んでくださったようで、嬉しすぎるけどなんで!?とずっと思っています…。どんなところにきっかけがあるかわからないと実感しました」
■「幸せ」と思えるような選択の手助けになる作品にしたい
yuiccoさんが初めてエッセイ漫画を描いたのは、元「でんぱ組.inc」メンバー・夢眠ねむさんの生誕イベントに行った際の「人生史上最高の肉を食べた日」だ。
「日記のように残しておきたい気持ち、誰かに聞いてもらいたい気持ち、何より本人にその時の気持ちを伝えたくて、手紙のような感覚で描きました。すると本人や周りの人からリアクションがあって嬉しくて、それから自分の感情や感想を人に伝える手段としてエッセイ漫画を描くようになりました。始めたころは完全にファンアートとして描いていましたが、前述したお気に入り回(第8話)にもすこし描いたように、自分自身のことも言ってもいいんだ…と思うようになり、『#いしょピン』シリーズも投稿するようになりました」
これまでは「#いしょピン」やファンアートのエッセイ漫画のみを描いていたが、今年の2月には創作漫画「#今日のむに描いた」もSNSにアップしている。
「物語を創作したのはこれが初めてだったのですが、そのかけがえのない喜びに気づいてしまって、いまは新たな物語を考えている途中です。『#いしょピン』の方も、不定期で申し訳ないのですが、変わらず描きたいと思ったときに描きたいです。また、今後の目標の一つとして更新スパンを上げたいとも思っています…(笑)」
最後に読者の方に向けてメッセージをお願いした。
「いつも読んでくださっている方、いつもありがとうございます。この記事で初めて出会ってくださった方、ここまで読んでいただきありがとうございます。みんなも時代や年齢や人の目やその他のあらゆるしがらみに負けないで、一生好きな服着て生きていこうね♡
…と、こういう漫画を描いていたら言うべきなのかもしれません。が、言いたいことはそういうことではなく…。
ありがたいことにたくさんの人に見ていただけて、肯定的な励ましのお言葉も、そうでないお言葉もたくさん受けてきました。人の数だけ感情があることを知り、その一つひとつにいちいち思い悩むことがあります。ファッションに限らず、自分の好きなことを『好き』と言うことは難しく、勇気のいることだと思います。周りの人の目に負けないことは難しいので、負けてもいいから『◯◯を好きでいてよかった!最高に幸せ!』と、自分で思えるような選択ができるように願っています。『好き』は自分のためのものだと思うので。この作品がその一助を担えたらとても嬉しいです」
世間にどう思われるか、 職場や学校でどう思われるか、 友達にどう思われるかを気にして、好きなものを好きと大声で言えない空気感はたしかに存在する。でも、何かを「好き」な思いはほかの誰でもない、自分のための気持ち。yuiccoさんが「#いしょピン」を通して教えてくれるステキな「好き」に、ぜひ触れてみてほしい。
また、「#いしょピン」は現在通販で同人誌も購入可能だ(https://yuicco.booth.pm/items/5782931)。
取材・文=日高ケータ