稼いでいても“モテない”男の、イタすぎる勘違い…。「お金目当ての子は嫌だ」と言いながらも…
男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
-果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?
できなかった答えあわせを、今ここで。
今週のテーマは「バツイチ男が振られた理由は?」という質問。さて、その答えとは?
▶【Q】はこちら:「バツイチ」と告白した途端、女から連絡が来なくなった男。“稼いでる男”が再婚活でハマる罠とは…
― いい人なんだけどな…。
丸の内にある最高峰の老舗フレンチ、『アピシウス』の美味しいお料理をいただきながら、目の前で熱弁している龍平を私は冷静に見つめていた。
アールデコ調の、クラシックで高貴な雰囲気が漂う美しい店内。
私はそんなお店にうっとりしていたが、目の前の龍平はまだ何か話し続けていた。
「ちなみに沙耶ちゃんは、どういったタイプの人が好きなの?」
「私は…優しくて、尊敬できる人が好きです」
「わかる!尊敬できるかどうかって、大事だよね。沙耶ちゃん、よければまた次回も僕とデートしてもらえないかな?」
きっともう、会うことはないだろう。そう分かっていたけれど、私はオトナの社交辞令で笑顔でこう答えた。
「いいですね!ぜひ」
このデート中、私が何を考えていたか?
相手がバツイチかどうかなんて、どうでもいい。彼は他に、もっと大事なことを見落としていたのだ。
女が男を見切った理由。バツイチ男の大誤算とは…!?
A1:上から目線で、気づけば自慢話をしている。
龍平と出会ったのは、友人の香苗の紹介だった。「そろそろ結婚がしたい」と声高に叫んでいた私に、香苗の旦那様である、太郎さんの友人を紹介する場を設けてくれたのだ。
そこで出会ったのが、龍平だった。
「初めまして、沙耶です」
「初めまして。龍平です」
年齢は、45歳くらいだろうか。ちょっと髪に白い毛が混じり始めているし、肌の老化も感じる。でもそんなことはどうでもよい、そう思い直し、私はにこやかに食事の場を楽しんだ。
「太郎とは、経営者仲間なんですよ」
太郎さんは、やり手の経営者だ。香苗が相当いい暮らしをしているのを、私は知っている。そんな太郎さんのお友達ということは、龍平もきっとすごい人なのだろう。
そんなことを勝手に推測していると、矢継ぎ早に龍平から質問が飛んできた。
「沙耶さんは、香苗さんと何つながりのお友達なんですか?」
「私は元々働いていた航空会社が一緒なんです」
「そうなんですね!今も現役なんですか?」
「いえ、私は3年ほど前に辞めて、今は自分で小さな会社をしています」
今は起業し、自分で会社をやっている。大した規模ではないけれど、何とか軌道に乗り始めてきた。
すると龍平は、急にこんなことを言い始めた。
「美人で綺麗な人なんてたくさんいるけれど…仕事ができて、かつ自立している女性って滅多にいないから最高ですね」
― なんか…微妙に上から目線な気がするのは、私だけ?
この発言に、微かな違和感を抱いた。でも龍平の話はまだ続く。
「ちなみにどんな会社なんですか?」
「美容系の会社なんです。まだまだ発展途上ですが…」
「いや、自分でされているのはすごいですよ。経営って大変じゃないですか。僕の会社もようやく年商が10億くらいになって…」
「え…!!すごいですね」
この時、私から「年商を教えてください」とか「会社名を教えてください」などと一切言っていない。
龍平が勝手に話して、勝手に自分の会社の規模や資産状況を教えてきただけだ。
「すごい」以外でどう返事をすれば良いのか困っていると、隣から太郎さんが助け舟を出してくれた。
「龍平はちょっと癖が強いけど、めちゃくちゃ良いヤツだから。体も鍛えてるし、何より仕事が本当にできるんだよ。会社の業績もうなぎ上りだし…だから沙耶ちゃん、龍平はオススメだよ!」
「そうなんですね!素敵な人だなっていうことは、今日で十分伝わりました」
すると龍平は、急にドヤ顔で嬉しそうに話し始めた。
「本当に?ありがとう!一応見た目も気を使ってるから、年齢よりは若く見られることが多いとは思うんだけど…」
― そうかな?(笑)そう思っているのは本人だけのような気もするけど…。
でも龍平の嬉しそうな顔を見ると、本当のことは言わないほうが良さそうだ。
「シュッとされてますもんね♡」
この“シュッとしている”とは、なんて便利な言葉なのだろうか。関西弁で、 “カッコいい”とか“イイね”みたいな意味を持つ(直接的に“カッコイイ”と言わなくてよいので、私はよく使う)。
― この人、自分に自信があるんだろうなぁ。
そう感じたけれど、悪い人ではないのは分かっている。だからこの日は次のデートを約束して、解散となった。
自分に自信がある、年収の高い男。でも女はまったく別のところを見ており…
A2:前妻の悪口なんて聞きたくない。
そして龍平と2人で食事へ行くことになった日。彼はとても素敵なレストラン『アピシウス』を予約してくれていた。
いつか行きたいと思いながら憧れていたけれど、行けていなかった名店だ。
嬉しくて、お店に着いた時から私のテンションは上がっていた。
「こんな素敵なお店の予約、ありがとうございます」
「いやいや、喜んでもらえるなら。このお店、昔から大好きで。大切な日のデートはここって決めているんだよね」
「そうなんですね!素敵です♡」
美しくて美味しいお料理の数々に、一流のサービス。デートは、順調に進んでいると思われた。次の龍平の発言を聞くまでは…。
それはコースも中盤に差し掛かった頃のことだった。急に龍平が沈痛な面持ちで告白してきたのだ。
「ちなみに沙耶ちゃんに言っておかないといけないことがあって…。実は僕、バツイチなんだよね」
「え!そうなんですか!?」
驚いたけれど、なんとなく予感はしていた。
雰囲気も落ち着いているし、顔も悪くない。年齢のこともあるけれど、きっと稼いでいるだろうし、周りの女性は放っておかないだろう。
それに今時、バツイチなんて珍しいことではない。私の周囲にも多いし、バツイチ同士で再婚した友人もいる。
だから離婚歴なんて、本当にどうでも良かった。
「前の奥さんと、かなり揉めて離婚して…。だから今はもう、一切の連絡は取っていないよ!」
「そうだったんですね。ちなみにお子さんはいらっしゃるんですか?」
「ううん、いないよ」
子どもがいないならば、なおさら離婚歴は関係ないと思った。ただ問題は、ここからだった。
「だからこそ、前妻とはまったく関わりナシ。性格が派手すぎて、僕のお金もかなり使い込まれて…たぶん1億は使われた気がする」
「い、1億!?」
― ゴメンナサイ。その発言、今必要だった?
前妻の悪口を言う龍平から、彼の本当の人間性を垣間見た気がする。2人の間に何があったのかは知らないけれど、それをわざわざ他人に言う必要はない。
それに“1億”という数字も、少し得意げに聞こえた。
「別にいいんだけどね。でも沙耶ちゃんは、そういうのなさそうだもんね」
「私ですか?そうですね…一応自分で仕事もしていますし、そこまで恋人とか将来の旦那さんに頼ろうとは思っていないかもです」
「いいね〜最高。僕の周りって、結局僕のお金目当てで寄ってくる子が多くて。そういう子に辟易しているんだ」
「お金目当ての子が嫌だ」と言いながら、初対面の時からお金持ちアピールを自分からしている龍平。
それが若干滑稽で、私は少し笑いそうになってしまった。
「そっかぁ。龍平さんみたいな立場になると大変ですね」
「沙耶ちゃんは自立している子だよね?一応、その辺りの男よりは稼いでいると思うし、次に結婚する人には不自由な暮らしはさせないけれど…。前妻のような、金遣い荒い人が苦手で」
たぶん龍平は勘違いしている。
モテないのは離婚のせいだと思っているかもしれないけれど、それは大間違い。どこかズレているし、遠回しに“お金を持っているアピール”をしていることがダサいのだ。
そもそも、最初から世の中の女性は全員お金持ちが好きで、俺の金目当て…みたいなテンションで来られると完全に白けてしまう。
― この人、お金以外で自信がないのかな。
龍平の話を聞きながら、私はこのデート以降彼に連絡をすることはないだろうなと思っていた。
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