「嘘ッ!?」婚活中の高年収の女が、貴重品の入った引き出しを開けると…
年収“8ケタ”(1,000万円以上)を稼ぐ女性たち。
給与所得者に限っていえば、年収8ケタを超える女性の給与所得者は1%ほど。(「令和2年分 民間給与実態統計調査」より)
彼女たちは仕事で大きなプレッシャーと戦いながらも、超高年収を稼ぐために努力を欠かすことはない。
だが、彼女たちもまた“女性としての悩み”を抱えながら、日々の生活を送っているのだ。
稼ぐ強さを持つ女性ゆえの悩みを、紐解いていこう――。
File5. 早苗、年収3,000万円。資産を築いた女が欲するのは…
「今日は夜までUKSとのリモート会議だわ。今週も忙しいなぁ」
早苗はデスクでこうつぶやきながら、オフィスの1階にあるタリーズで購入したコーヒーに口をつけた。
早苗は外資系化粧品会社のマーケティングディレクターを務めている。外資系ということもあり、会社員ではあるが年収は2,000万円を超えていた。
これだけの年収があれば、趣味やファッションなどにお金をかけて生活レベルを向上させることができる。しかし一方で、無駄遣いをすればあっという間に消えてしまうのも、2,000万円という額の恐ろしいところだ。
― せっかく高年収を得られるようになったのだから無駄にはしない。ちゃんと資産を増やして生きていこう!
生来、堅実な性格でもある早苗は、ただ給与収入が毎月入るのをボーっと待つのではなく、確実に資産を増やそうと決心したのだ。
最初は手堅い投資信託からスタートしたが、次に国内外の株式投資、また原油や金など世界的に減少している資産への投資と、ポートフォリオを組んで順調に資産を形成していった。
投資での運用益を元手に、さらに長期的かつ確実な投資を重ねていった早苗。気がつくと、マーケティング職としての給与収入と運用収入を合わせると年収3,000万円を稼ぐまでになっていた。
― このままのペースなら、FIREも夢ではないかも!
FIREは、「早期退職を実現して、お金のために働く縛りから自分を解放する」というライフプランを指す言葉だ。
しかし、早苗の生活は経済的には自立しているものの、ひたすら働いて資産を増やすだけとも言える。
来月、39歳の誕生日を迎える早苗。女性としての岐路に立つ早苗にも迷いがあった。
― 私、このままの生活でいいのかな。今まで一生懸命に働いて資産を増やしてきたけれど、私には資産以外には何もないのかな…。
時折襲うぼんやりとした不安は、じわりじわりと早苗を苦しめる。
早苗は40歳を前に、自分はこれでいいのかと周りを見て焦り始めていた。
40歳を目前に、早苗は“ある活動”を始める
資産形成は順調なものの、人生の充実感を得られないまま過ごしていた早苗。
ある日、こう思いついた。
― 私の人生にも、何か刺激が欲しい!婚活でもしてみようかな。
思いついた早々に、早苗は結婚相談所に申し込んだ。どうしても結婚したいわけではない早苗にとって、婚活は暇つぶしの1つだった。
こんな理由で婚活など、真面目にやっている人からは怒られるかもしれない。
しかし、女性の39歳という年齢は婚活市場での価値は低いことは理解していたものの、「どうしても結婚したいわけではない」と思うと気楽に婚活に臨むことができた。
その余裕が功を奏したのか、早苗のもとには早速面談の申し込みがきた。
― 私も捨てたものじゃないわね!
“男性に求められる”というのは、いつの時代もいくつになっても女性を幸せな気持ちにしてくれる。
そして…1人の男性と出会い、付き合うことになったのだった。
早苗に交際を申し出たのは、3歳下の和馬。
和馬は大学を卒業してからずっと、地方公務員として働いているという。
見た目はイケメンではないが、決して見苦しくはない。どこにでもいる普通の36歳の男性だ。
― 公務員ならば、高収入ではないにしても贅沢しなければそれなりに生きていけるわよね。きっと結婚市場でも人気が高いはずなのに、どうしてこの人は今まで結婚できなかったのかしら?
和馬を頭のてっぺんからつま先まで見て、余計なお世話と知りながらも早苗はこう思ってしまったが、他に彼氏候補がいるわけでもない。
「とりあえず、お付き合いしてみようかな」
あまり頭で考えても仕方ない。自分の人生に変化を生むために、停滞から一歩踏み出すために、早苗は和馬との交際を決意した。
◆
交際を開始して最初のデートに指定された場所は、あるフレンチレストランだった。
― ずいぶんとかしこまった場所を指定するのね。
LINEを見ながら早苗はこうつぶやき、出かける準備を始めた。
クローゼットから取り出したのはEPOCAのワンピース。和馬の好みが把握できていない今は、万人受けするファッションが一番だと考えたのだ。
店に着くと、和馬がもう席に座っていた。
「早苗さん、こんにちは!こうしてお会いできるような仲になれて嬉しいです」
「和馬さん、お待たせしてごめんなさい。今日はお店、予約してくださってありがとうございます」
― 「お会いできるような仲」だなんて、何だか仰々しい…。
爽やかな笑顔で迎えてくれた和馬の様子は、いささか前のめりに感じた。自分の中でどこか白けそうになる気持ちを抑えようと、早苗はあえて冷静ににこやかに、通り一遍の挨拶をした。
そうして、テーブルにワインと前菜が運ばれ食事がスタートした。
― 何から質問しようかな…。もうちょっとプロフィールを読み込んでおくんだった…。
初めてのデートというものは、婚活でなくとも緊張するもの。「会話を弾ませるきっかけがないかしら?」と早苗が思案していた矢先、和馬が口を開いた。
「早苗さん、今のお住まいは会社からお近くですよね?もしかして、そのお住まいはもう購入されているんですか?」
「あっ、いえ…。まだ賃貸でして…」
― 先に住む場所を聞くならまだわかるけれど、賃貸か分譲かを聞くなんて…。
和馬の質問に面食らいつつ早苗はやんわりと返した。しかし、和馬の質問攻撃は止まらない。
「あぁ、そうなんですね。ちなみに、家は分譲派ですか?賃貸派ですか?」
「あぁ、ええっと…。そうですね……」
婚活で出会った2人なのだから、結婚を当然視野に入れている。「生活する上で欠かせないお金の話をするのは当たり前」と、和馬は考えているかもしれない。
年収額を直接聞かれているわけではないが、初対面で経済状況を推察できる質問の数々に、早苗の口は重くなっていった。
― とはいえ、39歳の私に交際を申し込んでくれる人もいないしなぁ。
多少の違和感を覚えつつも、早苗は和馬と週1回のデートを重ねるようになっていった。
和馬の言動に違和感を感じるが…。ある日、衝撃の出来事が起こってしまう
交際を開始して、2ヶ月ほど経った。
先日はついに結婚の話も出て、お互いの部屋にも入る仲になっていた。しかし、和馬との会話といえば、相変わらず「結婚した後にどう生活していくか」ということばかり。
2人の間に趣味嗜好の話はほとんどなく、デートも食事ばかり。和馬が好きなスポーツや趣味など、早苗はまったく知らないままだった。
― 結婚相談所で知り合ったし、まぁそんなものなのかしら…。
そこはかとない違和感を抱えながらも、早苗はそう思い込もうとした。
しかし、和馬との話題は将来の家族設計や財産設計の話ばかり。「ちょっと他のお話をしませんか?」などと話題を強引に変えても、結局は早苗の資産にまつわる話に戻っていくのだった
さらに厄介なのは、早苗には貯金額を聞いてくるものの、和馬は自分の貯金額などは一切教えないのだ。そんな和馬の様子を見て、早苗の違和感はどんどん肥大化していくのだった。
◆
ある休日。
― 年始に通帳記入して以来、放っておいていたわ。そろそろ記帳しておかないと。
こう思い出し、早苗は部屋の通帳や各種権利書を入れている棚を開けた。すると、中のレイアウトが微妙に変わっていることに気がついた。
無意識に心臓がドキンとするのを、早苗は感じる。
貴重品ボックスには特に鍵などかけていなかったので、場所さえ知っていれば開けられる。そうなると、ボックスを開けた人物は1人しか思いつかなかった。
― まさか…。
嫌な予感がして、貴重品ボックスからすべてのものを一旦取り出してみる。すると、現物資産の1つとして置いてあった金インゴット100gが1本なくなっていたのだった。
― インゴット、昨年6本目を購入していたもの。間違いなく6本あったはず…。これは、和馬の仕業に違いないわ…。
和馬に対して早苗はずっとグレーな気持ちを抱えていたが、その気持ちからどこかで目を背けようとしていたのも事実だった。
しかし、「金インゴット100gがなくなった」という事実を目の当たりにして、やっぱり自分は間違っていなかったと腑に落ちてしまったのだった。
― 和馬は、やっぱり私の財産目当てだったんだ。おそらく交際を申し込んだのも、私の経済状況を調べていたのかもしれないな…。金インゴット100gだから90万円くらいだけど、もう、手切れ金だと思うしかないわ…。
こう決心すると、女の行動は早い。
早々に、「今は結婚することが難しいです。ごめんなさい」と、和馬に別れを申し入れたのだった。
◆
早苗の婚活理由は、「このままじゃだめ」「女性としての幸せがほしい」「ちょっと日常に刺激がほしい」という、きわめて安易なものだった。
しかしその結果、出会った和馬という男性と意にそぐわない結婚をして、危うく財産を奪われるところだった。
安易な婚活理由もさることながら、おかしいと思いながらもそれを無視していたこと…その両方を、早苗は心の底から反省した。
「高収入の男性に多くの女性が集まる」というのは、世の常だ。
しかし、これからの時代は女性も資産を多く形成していく。だからこそ、選ばれることをただ待つだけではなく、自分の意思で人生のパートナーを女性も選んでいかないとならない。
― これで男性に懲りたとは言わないけれど、私にはまだ結婚は早いんだろうな。
こんなことを思いながら、早苗は1人苦笑いしたのだった。
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