「最近、彼から束縛されなくなった♪」と、夜遊びに励む女。婚約者からの連絡が減った理由は
―…私はあんたより上よ。
東京の女たちは、マウントしつづける。
どんなに「人と比べない」「自分らしく」が大切だと言われても。
たがが外れた女たちの、マウンティング地獄。
とくとご覧あれ。
◆これまでのあらすじ
凜香は、「真帆が男漁りをしている」と真帆の婚約者に密告。すると、婚約者のモラハラが爆発し、真帆は好きに遊べなくなってしまった。怒った真帆は、凜香が薬物依存だとデマを流し…
凜香:「百発百中…」
<大志:今日は何してるの?>
<凜香:今日はこれからお仕事だよ〜>
<大志:最近忙しすぎない?大丈夫?>
<凜香:ちょっと忙しくて大変…。やってないのに、薬物とか疑われちゃってて…(´;ω;`)>
<大志:大丈夫?無理しないでね?>
<大志:今日、そっち行こうか?>
この男に1ミリの興味もない。ルックスもタイプじゃなければ、年収や総資産額もものたりない。
トップアイドルである私には見合わない。
けれど…。
真帆の婚約者が、私にぞっこん。
この構図は最高に私をそそる。しかも、間違いなく真帆はその事実にまだ気づいていない。
ちなみに、真帆の婚約者を落とすなんて、簡単だった。
所詮、その程度の男なのだ。
さて、この関係をどう着地させようか。どう、真帆に知らしめようか。
物語の結末を考えるだけで、ワクワクしてしまう。小説家や脚本家は、こんな気持ちで物語を書き進めているのだろうか。
それにしても、大志は私に夢中になりすぎていて四六時中連絡がくる。マメな男を手懐けるのは中々に面倒くさい。誰かに外注したいくらい…。
それでも、私は自分でしっかりとこなす。
真帆を転落させるためなら、私は何だってする。
真帆の婚約者・大志を落とすことに成功した凜香。真帆は、その事実を思わぬ形で知ることになる…
真帆「快適♪快適♪」
「ご迷惑おかけして、大変申し訳ございません。でも、これは事実無根です!!これから毛髪で薬物検査を実施して、薬物鑑定証明書を皆様にお見せします!!」
凜香のインスタライブをつまみに、私はひとり家でウイスキーをあけていた。
家で飲むことなんて滅多にないけれど、こうやっていい事があるとついつい飲んでしまう。
<どうせ証明書も偽のやつなんじゃない?>
捨てアカウントで、コメントを投稿する。
凜香の目に留まりますように。彼女にストレスを与えられますように。
さて、凜香のアイドル生命はここで絶たれるのか。ここからまた這い上がってくるのか。
いずれにせよ、彼女のアイドルとしてのイメージに大きな傷をつけられたことには違いないだろう。
ここまでうまくいくとは思わなかったが、とにかく満足の結果だ。
それにしても、いい事というのは重なるものだ。
私の忠誠心が大志に伝わったのだろうか。四六時中、今どこで何をしているか報告義務を課せられていたのに、ここ最近、大志からの束縛が一気にゆるくなった。というかなくなった。
― もしかして…。他に女でもできた?
束縛がなくなっただけじゃない、丸1日連絡がないことすらある。
女の勘なるものが、私に何かを告げる。
けれど、正直どっちでもいい…。
大志が少しくらい羽目を外して女遊びをしていようが構わない。私も外でやることはやっているわけだし、ちゃんと私を一番に愛してくれて、ちゃんと私と結婚さえしてくれれば、あとは何でもいい。
大志の束縛から解放された私は、水を得た魚のように、夜な夜なすいすいと港区を泳ぎ回った。
彼と結婚するまでの、モラトリアム。さすがに人妻となったあとには、遊ぶのはやめるつもり。
だから、今だけ…。
色んな男からの熱っぽい視線を、夜を、とにかく目いっぱい楽しんだ。
そして、それからすぐにまた良いニュースが私の元へと飛び込んできた。
<愛華:ねぇ!!凜香が外でめっちゃ堂々とデートしてるんだけど!!なんか見たことある顔なんだよね、男の人…>
高校時代の友人の愛華が、私にこんな連絡を寄越したのだ。
薬物疑惑ほどには大きなニュースにならないだろうけれど、証拠写真を押さえることができれば、また大きなメディアでニュースにすることができる。
私は即座に、例の記者に連絡をした。
凜香のデート相手が誰か、知らないままに…。
真帆が、記者に凜香のデート現場をリーク。果たして、記事化されるのか…
凜香「自分の幸せか、他人の不幸か…」
大志と堂々とデートし過ぎてしまった。
また撮られてしまった。
けれど、今回は表に情報が出る前に、私のところに情報が回ってきた。事務所に懇願すれば握りつぶせる。
けれど…。いっそのこと、オープンにしてしまうのはどうだろう?
『アイドル・凜香、名古屋の御曹司と真剣交際か!?』
大志の目線は黒く塗りつぶされているが、見る人がみればわかるはずだ。一応婚約者という立場の女であれば、尚のこと。
自分の婚約者が、私とパパラッチされる。
最高の復讐だ。
けれど、また一時的に仕事に影響が出る可能性がある。
自分の仕事に悪影響を及ぼさない選択肢を取るか。仕事が少し減ってでも、真帆を絶望させるか。
だいぶ悩ましい。
もし、この記事が表にでれば、大志は本気で私との結婚を考えるかもしれない。とりあえず真剣交際をしたのちの破局となれば、“男漁り”ほどの大ダメージにはならないだろう。
けれど、そうすると自分の婚活が一旦ストップすることになる。
色んなことを天秤にかけながら、私は真剣に悩んだ。
◆
『アイドル・凜香、名古屋の御曹司と真剣交際か!?』
その一行は、スポーツ紙のトップを飾った。
私は、他人の不幸を選んだ。
それでも、自分の幸せを捨てたわけではもちろんない。というより、真帆の不幸が、私の幸せなのだ。
<大志:凜香ちゃん、ニュース見た?撮られちゃったね…。ごめんね、迷惑かけたよね?>
おめでたい男だ。
<凜香:ううん、全然…。でも、ちょっと仕事減っちゃったかも…>
<大志:本当?それは大変だ…。お詫びに少し援助するよ>
<凜香:ありがとう>
<大志:それから…、ちょっと今度真剣に話せないかな。あんなふうに見出しでちゃったし、色々ちゃんとしたくて…>
真帆から私に乗り換えようという決心がついたのだろう。
― 私は、あなたと真剣に交際するつもりなんて毛頭ないけどね。
<凜香:そうだね、今度ちゃんと話そう>
そろそろ、真帆との勝負に決着をつけるとしよう。
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次回:真帆の些細な復讐に、黙っていなかった凜香。次に真帆が仕掛けるものとは一体…