漫才の影響? 恋人や配偶者を「相方」という呼び方、なぜ広まった?
「彼氏や彼女、配偶者を『相方』(あいかた)と呼ぶことに違和感がある」というネット上の投稿が話題になりました。ネット上では、「漫才コンビみたい」「普通に彼氏彼女と呼べばいいのに」などと疑問が噴出しています。恋人や配偶者のことを「相方」と呼ぶのはなぜなのでしょうか。結婚マッチングサービス「STORIA」代表でコラムニストの沢宮里奈さんに聞きました。
2000年ごろ、オタクの人たちが使用
Q.恋人や配偶者のことを「相方」と呼ぶ人が現れたのは、いつごろからですか。
沢宮さん「恋人や配偶者のことを『相方』と呼ぶ人は、今から20年前の2000年ごろにも、『オタク』と呼ばれる人たちを中心に少なからずいました。しかし、このように呼ぶ人が爆発的に増えたのは、『オタク』が世の中からネガティブに見られなくなり、存在が広く認知されるようになった数年前からのことです」
Q.「相方」と呼ぶ人が爆発的に増えた背景とは。
沢宮さん「『オタク』と呼ばれても大丈夫という人が増えたこと、リア充(現実の生活が充実している人)ではない生き方もあるということが、世間で広く認知されるようになり、あえて“所有物感”を感じさせない『相方』という呼び方が、多くの人の間で好感を持って受け入れられるようになってきたのでしょう」
Q.「相方」と呼ぶ人は、どのような心理からそう呼ぶのでしょうか。
沢宮さん「『相方』と呼ぶ人が配偶者ではない場合、『今後、結婚するとは限らないけれど、一緒にいて協力し合える相方がちょうどいい』というライトな感覚から呼ぶようになりました。漫才コンビのように、普段は付かず離れずでいながら、いざというときは、相手をしっかりフォローするという関係がちょうどいいと感じているのです」
Q.どのような年代の人が、恋人や配偶者を「相方」と呼ぶことが多いのでしょうか。
沢宮さん「フェミニズム信仰や恋愛至上主義などではない、ある意味普通の女子が『相方』と呼ぶ傾向があります。『主人』『パートナー』『ボーイフレンド』など何かしらメッセージが込められた呼び方には、古くささと、強い違和感を覚えるからです。使う年代は20〜40代と、どの世代でも使い始めるのには恥じらいがないようです」
Q.どの地方で「相方」と呼ばれることが多いのですか。やはり、漫才文化が深く浸透している関西地方でしょうか。
沢宮さん「関西地方では漫才文化が深く浸透しており、『相方』と呼ぶことに抵抗がないように思われがちですが、むしろ嫌悪感を持たれることが多いです。漫才をきちんとした文化だと認識しているからこそ、漫才のコンビでもない相手を『相方』とは呼ばないのです。漫才を数あるエンターテインメントの一つと捉えている関東の人の方が、『相方』と呼ぶ傾向があります」
Q.ネット上では「相方」と呼ぶことに否定的な人が多いようですが、この呼び方についてどう思われますか。
沢宮さん「確かに、ネット上では『相方』と呼ぶことに否定的な声が多いと感じますが、これはそもそも、『相方』と呼べる相手がいることに対するねたみの気持ちもあるのではないかと思います。今後も『相方』という呼び方が広まっていくと予想します。事実婚、週末婚、別居婚など結婚や恋愛の選択肢が増えていく中で、『相方』は今の時代にマッチした関係をよく表しています。
フェミニズムが盛んに叫ばれた時代から、相手のことをどう呼ぶかは大きな問題でした。例えば『パートナー』と呼ぶだけで、特に言及しなくても、呼び方にその人の思想が表れるからです。相手の呼び方はとても大事です。二人の間だけの呼び名、外に対する呼び名、また、時と場所を使い分けながら関係を深めていきましょう」