就労状況にある女性の57%が非正規雇用という現代。非正規雇用のなかで多くの割合を占める派遣社員という働き方。自ら望んで正社員ではなく、非正規雇用を選んでいる場合もありますが、だいたいは正社員の職に就けなかったため仕方なくというケース。しかし、派遣社員のままずるずると30代、40代を迎えている女性も少なくありません。

出られるようで、出られない派遣スパイラル。派遣から正社員へとステップアップできずに、ずるずると職場を渡り歩いている「Tightrope walking(綱渡り)」ならぬ「Tightrope working」と言える派遣女子たち。「どうして正社員になれないのか」「派遣社員を選んでいるのか」を、彼女たちの証言から検証していこうと思います。

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今回は、都内で派遣社員をしている坂本由紀さん(仮名・38歳)にお話を伺いました。由紀さんは、自分は仕事ができるタイプだと言います。高校時代も、成績優秀で、推薦で都内の女子短大の英文科に進学したそう。当時は、男性の大学のランクによって参加する新歓コンパを選ぶほど、女性優位の時代だったそう。 

「とにかく、短大時代は彼氏には不自由しませんでした。入学式の日に、駅の方から学校へ向かう道にずらっと他大学から来た大学生の勧誘がチラシを持って立っていて。校門に着く頃にはチラシだけで週刊誌位の厚さになっていました」

某有名私大のテニスサークルに参加した由紀さん。そこでは、サークル内カーストがあり、練習に参加できるメンバー、合宿にも参加できるメンバーと、男子学生側が他大学の女子学生を区別していたとか。

「私は、選ばれたメンバーが参加できる合宿にも声をかけてもらっていました。短大で合宿まで参加できたのは、私のほかに1人しかいなくて。チヤホヤされていましたね」

短大生活を謳歌していた由紀さんだったが、就職で苦戦することに。

「変なプライドが邪魔をしてしまって。成績も良かったし。周りがどんどん一般職で就職を決めていく中、総合職で就職しようと思って意地を張ってしまったのですよね」

本当に将来を見越して総合職を狙うなら、短大から四年制大学への編入を目指す、あるいは、一般職で就職し、社内の総合職への昇格試験を受ける。そういった努力を嫌がった由紀さんは、親戚のコネで零細企業の印刷会社へ就職します。

 「はっきりいって仕事は退屈でした。周りの男性も聞いたことがない三流大卒ばかりだし。給料は手取りで16万ほどだったのに、月2回土曜出勤もあり、1年ほどで退社しました」

思い描いていた現実とは違う社会人生活。そんな時に、由紀さんが出会ったのが「派遣社員」という生き方だった。

 「定時で帰れて、時給も1700円だったんですよ。残業すれば手取り23万程度貰えるし。何より、派遣先も大企業ばかりだし。辞めて正解って思いました」

 ところが、2008年の「リーマンショック」により、由紀さんは派遣切りにあってしまいます。

「なんで私がっていう気分でしたね」

 それ以降、雇用が安定せず、短期派遣が続いたそう。

 「焦りましたね。しかも、事務と言っても資格もないし、仕方なく募集件数が多い、データ入力の仕事をしました。外国人労働者のプロフィールを入力する仕事では、読みづらい自筆のアルファベットを読み解いて入力をしなければならなくて苦痛でした」

 新たにパソコンの資格を取る事や、得意であるはずの英語を生かした仕事を目指すという努力は嫌だった由紀さん。

 短期派遣が続いた由紀さんが選んだ道とは? 

スキルアップの努力は一切していない。

「学生時代は成績優秀、容姿端麗だったのに、派遣のままアラフォーへ〜その2〜」へ続く。