女性にもっとも多いがん“乳がん”は遺伝するの? 医師の答え

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■多くの場合は環境因子が関与

乳がんは、女性のかかるがんのうちもっとも多く、日本人では14人に1人がかかるといわれています。毎年3万6000人がかかり、1万人が乳がんのために亡くなっているというデータもあります。乳がんは一般的に食生活などの環境因子(肥満、アルコール飲料摂取、妊娠・出産歴がないなど)の影響が複雑に関与することで発症すると考えられています。つまり乳がん患者さんの多く(90〜95%)は環境因子が主に関与しているのです。

■遺伝するがんもある!?

しかし、中には「がん家系」といわれるように遺伝するがんもあり、乳がんを発症した人の5〜10%は、遺伝性のもの(生まれつき乳がんを発症しやすい体質である)と考えられています。
これまでの研究で、遺伝的な乳がん患者さんでは、BRCA1遺伝子もしくはBRCA2遺伝子という遺伝子のどちらかに、変異があることが知られています。

BRCA1、BRCA2遺伝子は、通常は細胞ががん化しないように機能していますが、これらの遺伝子に変異が起こり、その機能が損なわれてしまうと乳がんなどを発症しやすくなります。ただし、BRCA1もしくはBRCA2遺伝子の遺伝子変異をもっていても全員が乳がんや卵巣がんを発症するわけではありません。がんを発症せずに一生を終える人もいます。

■遺伝子の変異によりがんの発症リスクはアップ。しかし遺伝するとは限らない

BRCA1もしくはBRCA2遺伝子の変異をもつ女性の場合、生涯で乳がんを発症するリスクは約70%とされています。男性がこれらの遺伝子変異をもつ場合は、乳がんのリスクは6%程度といわれています。ただ、親が遺伝子変異を持っていても、必ずしも子どもに伝わるわけではありません。BRCA1、BRCA2遺伝子の変異は親から子に男女関係なく伝わる確率は50%。つまりBRCA1、BRCA2遺伝子の変異は子ども全員に遺伝するわけではなく、同じ家系の中でも遺伝子変異をもつ人ともたない人がいることになります。遺伝子変異が男性に伝わった場合、その男性自身が乳がんを発症するリスクは女性より低くなりますが、もっている遺伝子変異はその男性の子どもに50%の確率で伝わることになります。

■まとめ

環境因子について、遺伝因子によることも考えられる乳がん。早期発見で、命を守ることができます。定期的に検診を行うことが、とても大切です。

(28歳女性内科医/Doctors Me)

※画像は本文と関係ありません