生理があっても大丈夫とは限らない! 知ってソンはない「生理不順」との向き合い方は?
女性にとって、毎月の生理が順調にくるかどうかはけっこう重大な関心ごと。体の調子や将来の妊娠を考えるうえで大切なバロメーターとも言えますよね。ところが「とりあえず生理が順調だから大丈夫」と思っていても、必ずしもそうとは限らないらしいのです。これは一体……? そこで、不妊症など生殖医療に詳しい産婦人科医の船曳美也子先生に、生理と生理不順にまつわる話を聞きました。
―先生、生理が順調でも問題がないとは限らないというのは、どういうことですか? 正直、怖いです……。
「たしかに、今生理があるから将来の妊娠は絶対に大丈夫とは、残念ながら言えません。あまり心配になることばかり申し上げるのもいかがとは思いますが、生理が順調にきているように見えても、うまく排卵していない『無排卵性の周期』ということがあります。また、まれですが早発閉経といって、30代、中には20代で閉経してしまう病気もあります。そういう場合もあるということだけは、知っておいてください」
―あの、気になるので少しお聞きしたいのですが、うまく排卵できていない場合の生理を自分で見わけることはできますか? また、治療法はありますか。
「無排卵性月経かどうかは、基礎体温でわかります。一周期に低温相と高温相があり、その差が0.3度あれば排卵していると考えるので、まずは基礎体温を隔日でもいいのでつけてください。また、排卵を確実に確認したければ、医療機関で超音波をする方法があります。
無排卵の治療法はいくつかあり、妊娠の希望があるかないかで異なります。また、排卵するかしないかは周期ごとでも異なるので、治療法は医師と相談されるのがよいでしょう」
― 一方、生理不順に悩む女性もいると思うのですが、生理不順はなぜ起きるのでしょうか?
「生理が起こるメカニズムは、けっこうというか、とても複雑で、脳と卵巣と子宮の絶妙なクロストークで成り立っています」
―え? 生理は子宮だけで起きるわけじゃないんですね。
「そうです。メカニズムを説明すると、脳の視床下部からのホルモンで刺激を受けた脳の下垂体がホルモンをつくり、そのホルモンの刺激で卵巣の中の卵胞が発育。卵胞が女性ホルモンを分泌して、子宮内膜はその影響で増殖します。そして卵胞が大きくなるにつれて女性ホルモンの量が徐々に増えていくとその変化に脳が反応して、下垂体ホルモンの分泌がある時、急に増えます(LHサージといいます)。
そしてLHサージが起こると、その刺激で36時間後に卵胞から排卵が起きるのですが、排卵した卵胞は、その後、黄体という組織になって黄体ホルモンを分泌、その影響で子宮内膜が妊娠しやすい状態になります。
しかし、妊娠しなければ、黄体が消失し、そこからでていたホルモンがなくなって子宮内膜がはがれて生理がはじまります」
―そんなことが毎月体の中で起こるとは、体ってすごいですね。
「まるでドミノ倒しのように、次々とプロセスが進んでいくんです。ところが、これがちょっとしたことでも狂ってしまうんですね。たとえば、失恋や転職のような精神的ストレスは、脳の視床下部に影響を与えます。ダイエットしすぎたり、太りすぎたりしても、生理は不順になります」
― 一度生理が乱れてしまうと、パパッと元に戻せるわけじゃないのでしょうか?
「そのような生理不順を治療する場合には、カウフマン療法といって、女性ホルモンと黄体ホルモンを生理周期にあわせて服用し、人工的に生理をつくり出す治療があります。何周期かそれを繰り返していると、たいていは自然にドミノ倒しのプロセスが戻ってきますよ。とはいえ、生理不順の中には『多嚢胞性卵巣(たのうほうせいらんそう)』という病気など、ほかにもいろいろな場合があって、別の治療法が必要なこともあります」
今回、お話を聞いて筆者が思ったのは、生理の仕組みはとても不思議で、よくできているということ。生理不順があるなしにかかわらず、ちょっと面倒かもしれないけれど、婦人科検診を定期的に受けるのは、大人の女性としてもはや必須! そして異常が見つかれば、怖がらずに、早めに婦人科で治療してもらうことがポイントですね。みなさんも自分の生理を見直してみては?
(聞き手:小池直穂)
船曳美也子
150名の女性医師がボランティア活動を行うEn女医会所属。1983年 神戸大学文学部心理学科卒業、1991年 兵庫医科大学卒業。産婦人科専門医、認定産業医。肥満医学会会員。医療法人オーク会勤務。不妊治療を中心に現場で多くの女性の悩みに耳を傾け、肥満による不妊と出産のリスク回避のために考案したオーク式ダイエットは一般的なダイエット法としても人気を高める。自らも2度目の結婚で43歳で妊娠、出産という経験を持つ。2013年10月9日、「婚活」「妊活」など女性の人生の描き方を提案する著書「女性の人生ゲームで勝つ方法」(主婦の友社)を上梓。
現在は、オーク梅田レディースクリニックを中心に診療にあたっている。
医療法人オーク会HP http://www.oakclinic-group.com/