「誰よりも自分を蔑ろにしてきたのは自分自身だった」松本穂香が泣いた映画の本当のテーマ
 数々の映画やドラマに出演している女優の松本穂香さん。大の映画好きでもあるという松本さんが世界各国の映画祭で高い評価を得たヒューマンドラマ『私たちは、ちょうどいい。』について語ります。

◆最高な時間と最悪な時間が交互にやってくる

 今回、わたしがご紹介させていただくのは、映画『私たちは、ちょうどいい。』です。

 主人公のリリーは幼い頃に母に捨てられ、家族は自分勝手な父だけ。ある日、一方的に父から絶縁を言い渡され、連絡手段を失ったリリーはFacebookで父、ボブ・トレヴィノの名前を検索し友達申請をするが、その中身は同姓同名のまったくの別人だった。

 大傑作でした! ほんわかしたポスターとは裏腹に、物語は衝撃の連続。それも最高な時間と最悪な時間が交互にやってくるので感情が大忙しでした。

◆今まで目を背けていた事実と向き合うことに

 夜があるから朝が来る。雨が降らないと虹は見られない。文字にすると綺麗事に見えてしまうかもしれませんが、こうして映像で観ると本当にその通りで。

 思い切りネタバレしてしまうと、実の父親のボブは血が繋がっているだけの最低な父親で、人違いのボブはリリーを心から気にかけてくれる素敵なオジサン。

 人違いボブとのかけがえのない時間を過ごしたことで、リリーは今まで目を背けていた事実と向き合うことができたと思うんです。

◆人が人を思いやることの温かさ、尊さ

 誰よりも自分を蔑ろにしてきたのは、他でもない自分自身だということ。たとえ血が繋がっていようとも、自分を傷つける人間との繋がりには何の価値もないということ。愛を懸命に求め続けるリリーが、とても愛おしかったです。

 改めて、人が人を思いやることの温かさ、尊さを感じる映画でした。そして、リリーのような人が報われる世の中であってほしいと切に願います。「あなたは悪くない」と言ってくれる存在が誰の傍にもいてくれますように。

 人によっては観るのに覚悟がいる作品だと思いますが、ぜひ映画館で観ていただきたいです。最後にはリリーのとびきり素敵な笑顔が待っています!

『私たちは、ちょうどいい。』
配給/AMGエンタテインメント 全国順次公開中 ©2024 CHOSEN FAMILY, LLC All Rights Reserved.
<文/松本穂香>

【松本穂香】
1997年2月5日生まれ。大阪府出身。2015年『風に立つライオン』で長編映画デビュー。2017年連続テレビ小説『ひよっこ』に出演して注目を集め、2018年にはTBS日曜劇場『この世界の片隅に』で主演に抜擢。2023年、映画『“それ”がいる森』で日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。2024年、月9ドラマ『嘘解きレトリック』でW主演。2026年1月期ドラマ『50分間の恋人』では伊野尾慧とともにW主演、4月期ドラマ『タツキ先生は甘すぎる!』ではヒロインを務め、『エンジェルフライトTHE MOVIE』がプライムビデオで世界独占配信中。今秋スタートの連続テレビ小説『ブラッサム』、10月2日公開の映画『ファーストボイス』、『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』への出演が控えている