―…私はあんたより上よ。

東京の女たちは、マウントしつづける。

どんなに「人と比べない」「自分らしく」が大切だと言われても。

たがが外れた女たちの、マウンティング地獄。

とくとご覧あれ。

◆これまでのあらすじ
食事会での騙し合いバトルは凜香が勝利。すると、真帆は御曹司と婚約中であるという事実を盾に、凜香にマウントをとる。今度は、凜香が真帆の婚約者に、真帆が遊んでることを告げて…。

▶前回:「女の幸せは、やっぱり結婚」そう豪語する女が、自慢の婚約者の目の前で暴露された秘密




真帆:「マジで面倒くさい…」


婚約者である大志とは、今まではとっても良好な関係だった。

それなのに…。

<大志:今日の予定は?>
<大志:今何してるの?>
<大志:ねぇ、真帆。2時間既読つかないけど、どういうこと?>
<不在着信>
<不在着信>
<不在着信>
<大志:何で電話にでれないの?>

私と大志がデートしているところに、偶然にも凜香が通りかかり、私が男漁りをしているということをチクられたのだ。

私と大志は遠距離恋愛。

頻繁に会うことができないということもあって、大志の束縛気質が一気に爆発してしまった。

心配や嫉妬をされることは嫌いじゃない。束縛も、軽い物であれば好物だ。

けれど、私の行動を何から何まで把握しようとされるのは、さすがにうんざりしてしまう。

申し訳ないけど、遠距離恋愛中は、私も遊ぶのをやめるつもりはない。

GPSのアプリまで入れられ、逐一何をしているかの報告を求められては、目の前の男に集中できないじゃないか。

男遊びをやめるべきだなんていう正論は、私は求めていない。

私のライフスタイルをここまで不快にした凜香が、やっぱり許せない…。


真帆の日々の男漁りに支障が…。真帆は想像を絶する行動に出て…


<真帆:ごめん、スマホの電池切れちゃってて…。今日は女子会だったよ〜>

食事会の女子たちだけで写真をとってもらい、それを大志に送る。アリバイ工作。

大志から求められることにしっかり応えることで、彼に対する忠誠心を見せる。

まっじで面倒くさいが、結婚相手としてはこれ以上ない男。それだけの手間をかけてまで、つなぎとめておく価値があるという判断だ。

私はなんとか、大志をキープしながら夜な夜な男遊びとの両立に励んだ。

それにしても、私にこんな面倒な手間をかけさせる原因を作った元凶。大志が離れていってしまうリスクを生んだ、凜香が本当に許せない。

それに、最近徐々に凛香のテレビ露出が戻り始めたみたいだ。私がリークしたゴシップも、そろそろ旬の時期を過ぎたのだろうか。

ただテレビを見ていても、凜香の顔がカットインしてくる。

<女の子の強い味方♪>

聞いたこともない声色で、作り笑いを顔面に貼りつけ、ナプキンを片手にモデルポーズしている。

最近はなりたい顔ランキングとかにもランクインしてるとか。

― 私のことを苦しめておきながら…。本当に腹立たしい…。

凜香をもう一度転落させる方法はないだろうか…。

画面いっぱいに映し出された、憎たらしい凜香の笑顔を穴が開くほど見つめながら、私は必死に考えた。






「さすがに情報源が確かじゃないと、記事にはできないっすよ…」
「そう、ですよねぇ」

凜香のパパラッチ写真を売った記者に、凜香が転落しそうな嘘ネタを提供してみたが、相手にしてくれなかった。

さすがに大手の出版社では、ちゃんとした情報源がないものは記事化しないらしい。

「ちゃんとした情報源ね…」

事実ベースでニュース化するならば、男しかないだろう。でも、一度大々的に報じられてしまった手前、2度目は大したニュースにならない可能性が高い。

犯罪に手を染めている様子も、反社会的な組織とも関わっている様子もない。

元ヤンキーというのは、昔一度ニュースになっていて、ネット上にはもう散々写真が出回っている。

しょうがない、最終手段にでるとするか。


とにもかくにも凜香を転落させたい真帆。彼女がとったありえない方法


凜香「徹底的に…」


「ご迷惑おかけして、大変申し訳ございません。でも、これは事実無根です!!これから毛髪で薬物検査を実施して、薬物鑑定証明書を皆様にお見せします!!」

なんで私がこんなことをしなくてはならないのか。なんで何も悪いことしてないのに、謝らなくてはいけないのか。

― マジでむかつく…。

『アイドル凜香、薬物依存!?』

記事化したのはあまり知られていないニュースサイトだったけれど、それは瞬く間にSNSで拡散された。

事実かどうかなんて、一般の人からしたらどうでもいいのだ。

センセーショナルであればあるほど、人々の野次馬根性をくすぐる。瞬く間に拡散される。

事実かいなかなんて関係なく、イメージに傷がつく。イメージ込みで商品である私たちは、多大なる損害を被る。

インスタライブでファンに対する釈明をしながらも、その理不尽な構造に、流れてくる無責任なコメントたちに、苛立ちを抑えることができなかった。

<元ヤンキーで男漁り。次は薬物www>
<絶対やってるでしょw>
<どうせ証明書も偽のやつなんじゃない?>
<凜香終了のお知らせ>

これをやったのは、誰か。もう調べるまでもない。

私が彼女の婚約者をたきつけたことに腹を立てて、真帆がやったんだろう。

まず、私は薬物なんてやっていない。やったことすらない。怪しいものを吸っている人間がいたら、すぐにその場を離れるように徹底してきた。一緒に写真を撮られたらたまったもんじゃないから。

だから、私が薬物をやっているなんていう証拠はこの世のどこにもないはず。

大手の出版社は根拠のないままニュースにはできない。だから、名も知れていないニュースサイトに真帆がネタを持ち込んだのだろう。

SNSでここまで拡散されることも見込んでいたのだろうか。だとしたら、大したもんだ。

そんな頭脳があるなら、それを仕事に使った方がー財産築けそうなものだが…。

きっと、私に対する恨みが原動力になっているだけなのだろう。

もう、いい。

私の仕事にここまでの被害が生じたんだ。彼女の人生にも、同じだけのダメージを受けてもらわなくちゃ割に合わない。

こっちだってもう手加減はしない。






大志の連絡先をゲットするのは、わけないことだった。

知り合い何人かにあたったら、すぐに彼に行きついた。

直球勝負だ。私はまどろっこしいことはしない。すぐに彼に連絡を入れた。

<凜香:大志さん、この前一瞬お会いした凜香です。真帆の友達の。よかったら、真帆のことで少しお話したいことがあるんです。ちょうど来週に名古屋にいく機会があるんですが、一度お会いしませんか?>

名古屋に行く用事?そんなものあるわけない。

真帆を転落させるためだったら、私はどこにでも行く。

<大志:どうも。来週大丈夫です>

そっけない返事…。

初対面のときも、私に大して興味を示さなかった。

ちょっと難航するかもしれない…。

でも、大丈夫。私はトップアイドル。

私は絶対に、この男をものにしてやると決めた。

▶前回:「女の幸せは、やっぱり結婚」そう豪語する女が、自慢の婚約者の目の前で暴露された秘密

▶1話目はこちら:清純派のフリをして、オトコ探しに没頭するトップアイドル。目撃した女は、つい…

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次回:真帆の些細な復讐に、黙っていなかった凜香。次に真帆が仕掛けることとは一体…