桜の花言葉、知ってる?種類ごとにも異なる花言葉とその由来や意味を解説
花々の持つ神秘性やロマンを引き立たせる花言葉。日本を象徴する草花のひとつ、桜にももちろん花言葉は付けられており、実は桜の種類によってもそれぞれ違う花言葉が存在する。
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■花言葉の起源とは?同じ花に複数あるのは何故?
今回、記事の監修をしてもらったのは、「植物画で彩る 美しい花言葉」、「美しい花言葉・花図鑑 彩りと物語を楽しむ」(いずれもナツメ社)などの著作がある、造園芸家の二宮孝嗣さん。二宮さんは花言葉の成り立ちには「その花の持つイメージやその色から付けられたものと、西洋の言い伝えやギリシャ神話由来のもの、また、中国の故事や日本の古事記や万葉集由来のもの、それと昔話から付けられたものなどがあります」と言う。
古くから、さまざまな民族や地域で行われてきた“花に意味を持たせる”風習や文化が繋がったのが、現代の花言葉。ただ、花のイメージは国や文化の違いによっても差があるため、有名な花でも複数の花言葉が存在しているのだ。
今でも、品種改良によって作り出された新たな観賞品種に開発者が自ら花言葉を付けたりと、新たな花言葉は生まれ続けている。今回はそんな多彩な花言葉の中から、比較的ポピュラーなものに絞って紹介しよう。
■桜(総称)の花言葉
総称としての桜の花言葉でポピュラーなのは、「精神の美」、「優美」、「あなたに微笑む」。華々しく咲き、散る時はぱっと散るその美しさになぞらえた花言葉が付けられている。また、「精神の美」は、アメリカ合衆国初代大統領のジョージ・ワシントンが子供の頃、桜の木を切ってしまったことを父に正直に告白したら、それを褒められたという伝説に由来している。ヨーロッパでは「優れた教育」、「私を忘れないで」といった花言葉もある。
■ソメイヨシノの花言葉
「ソメイヨシノ(染井吉野)」は、言わずと知れた日本における桜の代表的品種。そんなソメイヨシノには「純潔」、「優れた美人」といった花言葉が付けられている。
■ソメイヨシノが見られる名所
上野恩賜公園/東京都台東区
上野の山は、江戸時代から桜の名所として知られ、四季を通じて自然を存分に満喫できる。桜は天海僧正が吉野山から移植させたといわれ、さくら通りを中心に約800本の桜が園内を彩る。
弘前公園(鷹揚公園)/青森県弘前市
弘前公園二の丸にあるソメイヨシノは、旧藩士の菊池楯衛から1882(明治15)年に寄贈されたもので、現存するソメイヨシノでは日本最古級といわれる。ソメイヨシノは成長が早いわりに寿命が60年から80年とされていたが、弘前公園には樹齢100年を越すソメイヨシノが300本以上ある。多くの専門家から管理技術が日本一と称され、さくら名所100選にも選ばれている。
■八重桜(ヤエザクラ)の花言葉
花びらが幾重にも重なって咲く桜の総称である「八重桜(ヤエザクラ)」。ボリュームのある花が魅力の八重桜の花言葉には「豊かな教養」、「おしとやか」などがある。
■八重桜が見られる名所
長瀞の桜/埼玉県秩父郡長瀞町
国指定名勝であり、「さくら名所100選」のひとつとして選ばれている長瀞町は、春になると町全体が桜色に染まる。桜のトンネル(北桜通り)、通り抜けの桜、枝垂桜など、種類も見どころも豊富。中でもおすすめは「通り抜けの桜」。一周800メートルの不動寺の裏山に、約30種500本の八重桜が咲く。駅からも近くアクセス良好だ。
奈良公園/奈良県奈良市
野生のシカや大仏などの歴史的文化遺産が隣接する奈良公園。さくら名所100選にも選ばれており、約511万平方メートルの広大な公園では、3月下旬から5月上旬頃まで次々に咲いていく多彩な桜を楽しめる。また、例年4月下旬から5月上旬にかけて開花するナラノヤエザクラと呼ばれる小ぶりで上品な八重桜も必見だ。
■枝垂桜(シダレザクラ)の花言葉
「枝垂桜(シダレザクラ)」は、枝が垂れる桜の総称。上向きに伸びる桜とはまた違った趣が特徴的だ。その佇まいを象徴するように、花言葉は「優美」。一方で、花が下向きに覆うように咲く見た目から「ごまかし」という花言葉が用いられることもある。
■枝垂桜が見られる名所
三春滝桜/福島県田村郡三春町
福島県田村郡三春町にあるエドヒガン系の紅枝垂桜で、1922(大正11)年に桜の木として初めて国の天然記念物の指定を受け、2022年で100周年を迎える。日本三大桜のひとつに数えられている。樹齢は1000年以上だと推定され、樹高は約13.5メートル、枝張りは東西に約25メートル南北に約20メートルに達する。
東谷山フルーツパーク/愛知県名古屋市守山区
園内の八重紅枝垂は鮮やかなピンク色の花で、目の前まで垂れ下がって咲く様は見事な光景。果樹園では最初に梅が咲き、スモモ、桃、アーモンド、梨、リンゴなども桜と相前後して開花する。
■山桜(ヤマザクラ)の花言葉
「山桜(ヤマザクラ)」は、現代のさまざまな観賞用品種が生まれる前から日本の山々に自生した桜。野生種のため樹によって見た目が大きく異なることもあるが、一般に白色から淡紅色の花を咲かせる。花言葉も「あなたに微笑む」、「淡白」と、日本古来の桜らしく控えめな意味の言葉が当てはめられている。
■山桜が見られる名所
磯部桜川公園/茨城県桜川市
櫻川磯部稲村神社の参道の両側約1キロに及んで桜の並木があり、古くから「西の吉野、東の桜川」と並び称される桜の名所。山桜をはじめとした約700本の桜を楽しむことができる。
馬場の山桜/佐賀県武雄市
なだらかな小高い山の上にそびえる一本桜で、武雄市指定天然記念物となっている。樹齢は120年を超えると推定されており、淡いピンクのつぼみを付け、白っぽい花を咲かせる。
■冬桜(フユザクラ)の花言葉
「コバザクラ(小葉桜)」とも呼ばれる冬桜は、秋は10月〜12月、春は4月頃と、1年で二度に渡り咲くのが特徴の桜。空気は寒く澄み、草木が枯れ落ちた冬の景色の中で咲くその姿から、「冷静」という花言葉が有名だ。
■冬桜が見られる名所
日本国花苑の桜/秋田県南秋田郡井川町
秋田県立県百年に当たる1972(昭和47)年に、日本各地から集められた桜200種・約2000本が2年がかりで植樹された公園。全国に数カ所しかない学術的にも貴重な公園といわれている。散策路も多く、子供連れからお年寄りまで幅広い年代が楽しむことができる。約40万平方メートルの敷地には、4月下旬から冬桜、十月桜が咲き始め、4月下旬から5月中旬は枝垂桜や八重桜などが見頃を迎える。
■河津桜(カワヅザクラ)の花言葉
静岡県の河津町で発見され、本州早咲き桜として有名な「河津桜(カワヅザクラ)」。付いた花言葉には「思いを託します」がよく知られているほか、ソメイヨシノ同様「純潔」という花言葉もある。
■河津桜が見られる名所
河津川沿桜並木/静岡県賀茂郡河津町
河津桜は早咲きの桜で、カンヒザクラ系と早咲きオオシマザクラ系の自然交配種と考えられており、開花が早いのが特徴。1月下旬からつぼみがほころび始め、3月上旬まで濃いピンク色に咲き誇る。特に、河津川沿い約4キロにわたって咲く約850本の河津桜は必見だ。この河津桜の原木は樹齢約65年で、河津は全国にある河津桜の発祥の地でもある。
淀水路の河津桜/京都府京都市伏見区
2002年に伊豆から取り寄せた2本の苗木を植樹したのが最初で、今では淀の町に300本、そのうちの200本が1.1キロの淀緑地の水路沿いに咲き誇る。早咲きの河津桜は、濃いピンク色が鮮やかで2月中旬頃から咲き始め、3月末近くまで楽しめる。
■花言葉とともに桜を贈りたい!桜はプレゼントにできる?
自分の思いにぴったりの花言葉を探して、花に気持ちを託して贈ることはままあること。ただ、桜をプレゼントしたいと思っても、どこで手に入れればいいか分からないという人も少なくないはず。
実は生花店に並ぶ花の中には、「枝もの」と呼ばれる花木の切り枝も取り扱われていて、桜も枝ものとして生花店で購入が可能だ。その年や店舗によって異なるが、例年おおむね12月から3月にかけて出回るのが一般的。また、近くに生花店がないという人でも、生花店の通販サイトなどで鉢植えや花束を取り扱っていることが多いのでチェックしてほしい。
二宮さんも「この地球上で人だけが植物を愛し、植物の持つ不思議な力を感じると共に、思いを植物に託してきました。大好きな人やお世話になった人への感謝の気持ちを込めて、花言葉を添えて花を贈ることは本当に素敵なことだと思います」と話す。今後花を贈る際は、ぜひ花言葉も調べてみて!
監修:二宮孝嗣(にのみやこうじ)
造園芸家。神奈川県生まれ、名古屋育ち。静岡大学農学部園芸科を卒業後、千葉大学園芸学部大学院修了。ドイツ、イギリス、ベルギー、オランダ、東京、大阪で研修し、長野県飯田市に「セイセイナーセリー」を開業。宿根草、山野草、盆栽を栽培する傍ら、世界各地で庭園をデザイン。1996年に、イギリスの「チェルシーフラワーショー」にて日本人初となるゴールドメダルを獲得。その後世界各地のフラワーショーに参加し、世界で初めて、世界3大フラワーショーにてゴールドメダルを獲得する。現在はガーデンデザイナー、樹木医としても活躍するかたわら、世界各国のフラワーショー国際審査員も務める。
参考文献:美しい花言葉・花図鑑 彩りと物語を楽しむ(ナツメ社)