妊活中の人も、これからの人も、妊活って何するの?と言う人も。認定不妊カウンセラーの笛吹和代さんから、妊活や女性の悩み、もやもやについてアドバイスをいただく妊活入門。今年春から始まる不妊治療の保険適用と、今話題のフェムテックについてうかがいました。

不妊治療の保険適用とは?

最近、たびたび目にする「不妊治療が保険適用になる」ニュース。みなさんはご覧になったことがありますか?今年4月から不妊治療に健康保険が適用されるようになります。

昨今、不妊治療を行ったことがあるというカップルが増えています。5.5組に1組(夫婦)の割合で不妊の検査や治療を行っています。治療を受けるに至らないまでも、不妊の心配をしたカップル(夫婦)は約3組に1組、また、2017年に出生した子どものうち約17人に1人は、不妊治療の力を受けて生まれています。

このように不妊治療は、それほど遠い特別な医療ではなくなっているのではと思います。

不妊治療の費用は、不妊症を調べる検査の一部や、初期治療のタイミング法(排卵日に合わせて性交する)などの段階には、これまでも保険が適用されていました(オプションなどで自己負担になる部分もあります)。

不妊治療の保険適用化で大きな違いが生まれるのは、「体外受精」にかかる費用です。体外受精は、クリニックや地域によって差がありますが、1回にかかる費用は少なくとも60万円は見ておく必要があり、高いところでは100万円以上かかります。1回でですよ! これまでは自治体から治療の助成金が出ていましたが、これからは助成金ではなく、健康保険が適用されることになります。

人工授精や体外受精については、実際に不妊治療を行うことになって初めて考えることかもしれませんが、費用的なハードルが少し下がったことだけ、覚えておいていただければと思います。詳しくはこちら。

→【いつかのためのプレ妊活】不妊治療が保険適用になるってどういうこと?

吸水ショーツだけじゃない! フェムテックを上手に使っていこう

昨年あたりから、よく聞かれるようになったのが「フェムテック」という言葉です。英語でFemtech と書きますが、女性(Female)のためのテクノロジー(Technology)の造語です。

そして、生理時にナプキン代わりにはける吸水ショーツや、膣の中に入れる月経カップが注目を集めていますね。でも、フェムテックは吸水ショーツや月経カップにとどまりません。その名のとおり、女性の健康や暮らしやすさのために生み出されたハイテク製品に広がっています。

すでに、次の生理開始日や排卵日の予測するデバイス、寝ながら基礎体温を自動的に計測して記録もしてくれるデバイス、卵子の数を計測するAMHのセルフキットも製品化されています。さらに詳しくはこちら。

→【フェムテック最前線】生理予定日だけじゃない! 排卵日の予測デバイスが進化中
→【フェムテック最前線】話題のシリンジ法、正しい使い方を知っていますか?
→【フェムテック最前線】ナプキン不要の吸水ショーツetc.生理&妊活の悩みを解消するアイテム続々

新しい技術、スマホアプリを使った身近な技術。うまく使うことで、これまで気が重かった生理の期間が少し楽になったり、異常の発見につながったりするかもしれません。ただ、頼り過ぎないようご注意を。技術は使いようです。

たとえば、以前から経血過多なのに、吸水ショーツを「これは便利!」とばかりに使い倒し、結果、月経過多を放置してしまう……。本来なら一度、婦人科で診てもらうべき症状です。

検査のセルフキットも注意が必要です。セルフキットはあくまで簡易的な検査方法です。女性のAMH検査キットも、男性の精子検査キットも、その結果だけ見てOKということにはなりません。こちらも頼り過ぎないよう注意しましょう。

卵子凍結はチャレンジのチャンスを残すもの

テクノロジーといえば、卵子凍結への注目も増しているようです。

女性は35歳を過ぎると妊娠率が下がります。「卵子の老化」というとショッキングですが、事実です。最近は、女性の初婚年齢もほとんど30歳ですから、初産が30代半ばになるのはめずらしくありません。

まだお相手が見つからず、35歳を過ぎるかもしれないが、子どもは欲しい。あるいは、すでに子どもが一人いるが、二人目の妊娠に備えておこう。そういった場合に、卵子凍結は有効な手段だと思います。

ただひとつだけ注意していただきたいことがあります。

卵子凍結は、まだまだ新しい技術です。卵子を凍結して、何年も保存して、数年後(10年以上も想定される)に融解して、精子を注入して、受精卵を子宮に戻すという技術です。実際に、どれだけの凍結した卵子が出産に至るのか。現時点ではまだ、実績を示す詳しいデータは出ていません。

よく卵子凍結を“将来の妊娠の保険”といった表現を見かけますが、私は、これにはやや違和感を感じています。というのは、保険とは何か病気や事故にあった時に助けになるものです。お金が支払われます。しかし、卵子凍結は、実際に卵子を使う段階に「何か」があっても、何も助けになるものはありません。もし、うまく受精せず妊娠に至らなくても何の補償もありません。

卵子凍結をして妊娠できるかどうかは、そのときやってみるまで誰にもわからないと言っていいでしょう。そして妊娠しても、しなくても、卵子凍結にかかった費用、保管料、受精の技術にかかった費用はかかります。

卵子凍結には、このようなリスクがあります。また、卵子凍結は医療ではないので健康保険は適用されませんので全額、自費になります。

それでも私は卵子凍結を肯定的に見ています。将来、不妊症の心配があるとき、あるいは30代後半以降、子どもを産みたいと思ったとき、若い時に凍結された卵子があれば、“妊娠にチャレンジするチャンス”が残りますよね。これは気持ち的に大きな意味を持つかもしれません。ともすれば卵子凍結のメリットばかりがアピールされがちですが、以上のようなリスクを理解したうえでトライすることは、とても有意義だと思います。

→【いつかのためのプレ妊活】卵子凍結についてこれだけは知っておきたい〜その1
→その2 クリニック選び
→その3 リスクはある?

少子化や女性の活躍推進とあいまって、妊活や不妊治療への関心は、ますます高まることと思います。同時に、今もインターネットやSNS上には、科学的根拠ない情報があふれています。

そろそろ妊活を始めようかなと思っていらっしゃる方、焦ることはありません。はじめに正しい情報を手にするかどうかで、その後の展開が変わってきます。結局は、正しい情報に手にしていることが早道かなと思います。

どうぞよい妊活を。グッドラック!

焦らず、正確な情報集めをしてください!

■プロフィール

妊活の賢人 笛吹和代

働く女性の健康と妊活・不妊に関する学びの場「女性の身体塾」を主宰する「Woman Lifestage Support」代表。日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー。臨床検査技師でもある。化粧品メーカーの開発部に勤務中、29歳で結婚。30代で不妊治療を経て出産。治療のために退職した経験から、現在は不妊や妊活に悩む女性のための講座やカウンセリングを行なっている。著書に『あきらめない妊活〜キャリアと不妊治療を両立させる方法』がある。