【認知症超入門】安藤なつさんと考える「老化と認知症で一番違うこと」


【画像で見る】「老化によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」の違い

親が認知症になるなんて思っていなくても、ある日突然「もしかして?」と気づくことも。介護福祉士の国家資格を持つ安藤なつさんと一緒に、認知症をやさしく学びましょう。今回は、「もの忘れ」と「認知症」の違いについて、認知症専門医・精神科医 繁田雅弘先生にお話を伺いました。

メイプル超合金 安藤なつさん


教えてくれたのは▷メイプル超合金 安藤なつさん

お笑いコンビ「メイプル超合金」(相方はカズレーザーさん)として活動。介護歴はボランティア経験を含めると20年以上。ホームヘルパー2級(現: 介護職員初任者研修過程終了)を持ち、2023年には介護福祉士の国家資格を取得。

認知症専門医・精神科医 繁田雅弘先生


教えてくれたのは▷認知症専門医・精神科医 繁田雅弘先生

栄樹庵診療所院長。メモリーケアクリニック湘南名誉顧問。2024年東京慈恵会医科大学名誉教授。『安心して認知症になれるまち』を目指す活動拠点「SHIGETAハウスプロジェクト」代表を務め、認知症医療の第一人者として活躍。

■もの忘れ=認知症、ではありません

そもそも老化と認知症で一番違うことは何ですか

C H E C K !

・加齢の仕方には大きな個人差がある

・気になる症状は「継続的か」「生活に支障があるか」に注目

安藤なつさん(以下、安藤): 先生、まず基本から教えてください。そもそも「老化によるもの忘れ」と「認知症のもの忘れ」は何が違うのでしょうか。

繁田雅弘先生(以下、繁田):まず大前提として、人間の加齢の仕方(老化のスピード)には大きな個人差があります。病院には「もの忘れが多くて……」と、認知症を心配した家族に連れられて来る方が多くいらっしゃいます。でも実際に検査をすると、認知症ではなく、あくまでその方の加齢の範囲だったというケースも少なくありません。

えっ、そんなに多いんですか? 心配して連れてきた家族は、それで納得されるんでしょうか


安藤 えっ、そんなに多いんですか? 心配して連れてきた家族は、それで納得されるんでしょうか。

繁田: 「こんなに忘れるのに……」と驚かれることもありますが、それは周りより少し老いのペースが速いだけかもしれません。「もの忘れ=認知症」とは限りませんし、どこまでが自然な老化で、どこからが認知症かの判別は、専門家にとっても簡単には判断できないのです。

安藤: 確かに、年齢を重ねれば若い頃と違うのは自然なことですよね。でも家庭だと、少しの変化でも「認知症かも」と不安になりやすい気がします。

繁田: そうですね。たとえもの忘れが増えていたとしても、生活そのものが大きな問題なく回っているのであれば、それは老化の範囲という可能性が高いのです。

安藤: では、どんなサインがあったら「これは認知症かも」と疑ったほうがいいのでしょうか。

どんなサインがあったら「これは認知症かも」と疑ったほうがいいのでしょうか


繁田: まず注目してほしいのは、その気になる症状が「どれくらいの期間続いているか」です。

安藤: 期間、ですか。わたし、この前やってしまったんですけど、家の鍵を部屋に置いたまま外に出てしまって、オートロックで締め出されたんです。そのときはさすがに「ボケてきた?」って、かなり落ち込みました。

繁田: その程度の失敗なら、年齢に関係なく誰にでも起こることですから心配ありません(笑)。ただ、年齢とともに、そうした「困った出来事」が増えていくのは事実です。そこで大事なのは、「以前も同じようなことがあったか」「どれくらいの頻度で起きているか」「いつ頃から続いているか」「増え方のスピードはどうか」という点です。ひとつの目安として、半年ほど、同じような状態が続いている場合には、病気かどうかも含めて一度きちんと診てもらうとよいでしょう。

安藤: なるほど!! たまたま一回あった失敗なのか、続いていることなのか、増えてきているのか、なんですね。

繁田: そうです。そしてもうひとつ大切な判断基準が、生活への影響です。老化によるもの忘れであれば、多少の失敗があっても、日常生活そのものは大きく変わらずに送ることができます。一方、認知症の場合は、まず日常の段取りがうまくいかなくなることから始まることが多いのです。

安藤: 段取りがうまくいかなくなるとは、具体的にはどういうことでしょうか?

繁田: たとえば約束の日時を間違えたり、料理や家事で次に何をすればいいか戸惑ったり、といったことです。段取りは、単なる記憶力だけでなく、注意力や判断力など、いくつもの脳の働きが連携して初めて成り立つ高度な作業です。認知症では、その脳の連携がうまくいかなくなり、生活の中でスムーズにいかない場面が少しずつ増えていきます。

段取りは、単なる記憶力だけでなく、注意力や判断力など、いくつもの脳の働きが連携して初めて成り立つ高度な作業です


安藤: なるほど、総合的な力が落ちてくるんですね。あと、家族の相談でよく聞くのが、「親が同じ話を何度もする」という悩みですが、これも認知症ならではの変化なのでしょうか。

繁田: よくある相談ですが、同じ話を繰り返すこと自体は老化でも珍しくありません。誰でも印象深い話や得意な話題は何度も口にするものです。大切なのは回数ではなく、「本当に忘れて聞いているのか」「確認したくて聞いているのか」「年をとって記憶に自信がなくて聞いてしまうのか」という点に注目することです。

安藤: う〜ん。もう少し具体的に教えてください。

繁田: たとえ同じ話を繰り返していても、約束を守り、家事などの身の回りのことがそれなりにできているなら、老化の範囲内であることが多いものです。逆に、話の重複に加え、段取りが崩れて生活に支障が出始めている場合は、注意深く様子を見る必要があります。

安藤: 心身の状態が変化していく中で、家族から「昨日の夕飯の内容どころか、食べたこと自体を丸ごと忘れている」といった状態もよく聞きます。これはどう考えればいいのでしょう?

繁田: 老化の場合は「あれ、何食べたっけ?」と忘れていても、「ほら、ハンバーグだったじゃない」とヒントをもらえば「ああ、そうだった」と思い出せることが多いものです。一方、認知症ではヒントがあっても思い出すのが難しくなります。「思い出せるかどうか」が、大きな違いです。ただ、ここで誤解してほしくないのは、「思い出せない=記憶が頭の中から消えた」というわけではない、という点です。

安藤: それは、どういうことでしょう? 「最近のことから忘れる」というのもよく聞きますが、それも誤解なんですか?

繁田: 「最近のことを忘れやすい」のは事実ですが、正確には、記憶が失われたというより、「頭の中の記憶をスムーズに引き出せない」状態なのです。昔の記憶というのは、何度も思い出され、繰り返し使われてきましたよね。だから知識に近く、すぐに引き出せるのです。一方で、「昨日の夕食」や「さっき聞いた話」は、思い返す回数が少なく、どうしても記憶として不安定になりやすいのです。

安藤: 確かに、「昨日の夕飯に何を食べたか」と聞かれても、パッと思い出せない日、わたしもあります。

確かに、「昨日の夕飯に何を食べたか」と聞かれても、パッと思い出せない日、わたしもあります


繁田: わたしもあります。加えて、新しいことを覚えるときには、脳が「これは大事なこと」「これは一時的なこと」と情報を振り分ける働きをします。認知症、特にアルツハイマー型では、この海馬の働きが弱まり、情報の振り分けがうまくいかなくなります。いわば、データは入っているのに整理されていないため、うまく検索できない状態といえばイメージしやすいかもしれません。

安藤: なるほど。「覚えられない」というより、整理できていないから「取り出しにくい」感じなんですね。

繁田: その通りです。ですから、「覚えていない=全てダメになった」と極端に考える必要はありません。老化であれば「誰にでも起こりうること」と受け止められますし、認知症であれば「できない理由がある」と理解することが大切です。本人を責める必要も、無理に何かを頑張らせる必要もありません。

安藤: できていないところだけを見ずに、その人の「らしさ」を大切にする方向に視点を切り替える、という感じですね。

認知症という診断を受けたからといって、その人の人柄や、これまで培ってきた長い人生経験が失われるわけではありません


繁田: そうです、そうです。認知症という診断を受けたからといって、その人の人柄や、これまで培ってきた長い人生経験が失われるわけではありません。「できること」や「やりたいこと」を一緒に再発見する関わり方が、とても大切です。

安藤: 介護の現場でも「まだできている部分」に目を向けられると、ご家族がホッとされることが多いです。「全部ができなくなったわけじゃないんだ」と気づけるだけで、気持ちがずいぶん違いますよね。

繁田: その通りです。「忘れる=認知症」でもありませんし、「覚えている=問題なし」とも限りません。広い目で見ることが必要ですね。

安藤: なるほど。では、家族が見る最初の目安は、「生活に支障が出ていないか」「困った症状が一時的ではなく続いているか」、この2つということですね。

繁田: はい。人間のことですから完璧に線を引くことはできませんが、早めに気づくための大きなヒントにはなります。

■加齢によるもの忘れと認知症の違い

加齢によるもの忘れと認知症の違い


老化によるもの忘れ

・ 食事のメニューなど、体験の詳細を忘れる

・ もの忘れを自覚できる

・ ヒントをもらえれば思い出せる

・ 判断力の低下は見られない

・ 年や日付、曜日を間違えることがある

・ 買い物に出かけたが何を買うのか忘れる

・ 場所や時間、人との関係は分かる

⇒日常生活に大きな支障は出ません

認知症によるもの忘れ

・ ごはんを食べたことなど、体験したこと自体を忘れる

・ 忘れたという自覚がない(初期には自覚がある)

・ ヒントをもらってもピンとこない

・ 判断力が低下する

・ 年や日付、曜日が分からなくなる

・ 買い物に出かけたが、外出した理由を忘れる

・ 場所や時間、人との関係が分からなくなる

⇒日常生活に支障が出ます

※ 「老化によるもの忘れ」とされる中には、MCI(軽度認知障害)やごく初期の認知症が含まれることもあります。ただし、暮らし方や環境(ライフスタイル)によって、日常生活への影響の出方は人それぞれです。

※本企画は、書籍『知っトク認知症 家族と本人が自分らしく暮らし続ける超入門』(KADOKAWA)の内容を基に再構成・再編集したものです。

※情報は2026年2月現在のものです。法令や条例の改正などにより、内容が変更になる場合があります。

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老化と認知症の違いを知っておくことで、大切な人を傷つけないための備えになりますね。親だけでなく、将来の自分にも関係することなので、今この時期に理解を深めておきたいです!

イラスト/docco 図版作成/島村千代子

文=徳永陽子