無印良品「MUJI Labo」が今秋冬にリニューアル、どう変わった? 責任者に3つのポイントを聞く
まずは、商品企画体制の刷新だ。「MUJI Labo」では、2017年春夏シーズンに「エヌハリウッド(N.HOOLYWOOD)」尾花大輔と「タロウ ホリウチ(TARO HORIUCHI)」堀内太郎がデザインディレクターに就任。堀内が退任してからは尾花が1人でデザインを手掛け、採用する素材などの決定についても一任していた。
前提として、同社は年齢、性別の垣根を超えたこれまでの尾花の提案について「時代に即しており、独自性のあるデザインで新規顧客を獲得できた」と評価している。一方で、デザイナーの顔が立ちすぎたことでデザイナーズブランドのような見え方になってしまい、無印良品の「素材の力を活かし、原点を見つめ直して未来に繋げる」という理念との乖離を感じるようになったことから、今回の体制変更を決断したという。「旧体制のモノ作りは『無印良品』のレギュラーラインに受け継がれている部分もあり、取り組み自体は有意義だった。一度立ち止まって、無印良品の一歩先をいく衣服づくりを追求する『実験室』として再スタートする」と鈴木企画デザイン室長。
2024年秋冬シーズンから始動した新体制では、デザイナー数名とパタンナーを含む「デザイン室」と、生地産地のリサーチ、素材の確保などを担当する「素材開発チーム」を横並びにし、お互いに意見交換をしながら協力して商品を作り上げる体制に変更。プロジェクト全体の監修として、自身のブランドのほかに「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」「ユニクロ(UNIQLO)」などを手掛けた経歴を持つデザイナー 滝沢直己を招へいした。
2.天然素材を強化、新たにニット製品の展開もクリエイション面では、これまでよりも更に「着用した時の心地良さ、心の豊かさ」を担保したモノ作りの方向に舵を切る。具体的なアップデートポイントは生地。「MUJI Labo」では、2024年秋冬シーズンから製造工程で発生する端切れなどを使用した「再生カシミヤ」や、無染色・無漂白で仕上げた「まんまのカシミヤ」、インドで作られる手紡ぎ、手織りの生地「カディ」といった独自性のある天然素材をこれまでよりも積極的に採用している。これらは素材の希少性や生産の手間などから量産が難しいとされており、ファッション業界を見渡しても「MUJI Labo」と同等の規模で生産した例がほとんどなかったが、チームの垣根を超えて連携することで量産体制を整えることに成功したという。
アイテム構成では、これまで「MUJI Labo」で展開がなかったニット製品を新たにラインナップした。「ニット製品は素材の特性があらわれやすい。独自性のある素材を多く採用している『MUJI Labo』の強みになると考え、注力している」(鈴木企画デザイン室長)。2024年秋冬シーズンではでニット製品16型を揃えており、今後もプロジェクトの柱の一つとして展開していく考えだ。
3.男女共通規格を廃止、サイズを明確化そのほか、新生「MUJI Labo」における変更点としては、これまでのユニセックス提案から、メンズとウィメンズで明確に規格を分けたことが挙げられる。2024年春夏シーズンまでの「MUJI Labo」では、サイズ展開は男女共通規格でXXS〜XS、S〜M、L〜XLといった範囲表記が採用されていたが、新体制ではメンズ、ウィメンズでそれぞれS〜XLの4サイズを展開する方式に変更。同じ商品でもメンズとウィメンズでシルエットやフィットに変化を持たせている。鈴木企画デザイン室長は、「従来の男女共通範囲表記では、1サイズに該当する体型の範囲が広く、お客様にぴったりのサイズを提供しきれていなかったことが課題だった。また、自分がどのサイズを買うべきか試着なしでは分かりづらいといった声もあった」と分析。サイズ規格をメンズウィメンズで分けることで、実店舗・オンライン問わず顧客に安心して買い物を楽しんでもらうことが狙いだという。
◆担当者に聞く、今後の「MUJI Labo」に必要なこと新体制に移行して約1ヶ月。鈴木企画デザイン室長は、「代官山に旗艦店をオープンしたこともあり、これまで『MUJI Labo』を知らなかった人たちにも商品を手に取ってもらうことができた」と手応えを口にする。一方で、短期的な課題として挙げるのは「顧客に無印良品の考えをしっかりと伝えること」。店舗スタッフの育成に力を入れて顧客に直接生地のこだわりや背景などを説明させ、産地やモノ作りへの理解を深めてもらうことを目指す。長期的には、一着を長く着られる質の高い商品開発を進め、「MUJI Labo」を顧客の生活により深く根付かせたいとしている。