お酒の飲み方、大丈夫?

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 今年、久々に忘年会に参加したり、年末年始に集まる人も多いでしょう。仲間や親戚と楽しく盛り上がる機会ですが、飲みすぎてしまうと体に悪影響を及ぼすこともあります。飲みすぎは胃や肝臓に負担がかかるほか、高血圧や糖尿病の悪化につながることも。体調を悪化させないための飲み方、食べ方とは? そして、「とりあえず生!(ビール)」「シメのラーメン」など、飲み会の慣例の影響は? ふれあいの丘内科内視鏡健診クリニック(横浜市都筑区)院長で、認定内科医・消化器病専門医・消化器内視鏡専門医の粟田裕治先生に聞きました。

【画像】お酒とコレは絶対飲んじゃダメ! 過剰飲酒や脱水症状の危険も…

■飲む前にお腹に入れておくと良いものは? アルコール摂取前に飲む薬剤の多用はやめよう

Q.忘年会では、いつもより多くアルコールを摂取することもあります。その後体調が悪化しないように、飲む前にやっておくとよいことはありますか?

【粟田先生】体調を整えておくということが第一ですね。アルコールを代謝する肝臓の機能は、寝不足や激しい運動によって低下してしまいます。しっかり睡眠をとって身体を休めてから、忘年会に臨みましょう。また、飲む前に胃の中に食べ物や飲み物を入れておくといいでしょう。

 胃の中が空っぽの状態でお酒を飲むと、アルコールが胃腸で急速に吸収されて、血液中のアルコール濃度が急に上昇してしまいます。事前に胃の中に食べ物や飲み物を入れておくと、胃の中でアルコール濃度が薄まって、吸収も穏やかになり、悪酔いや二日酔いを予防することができます。

Q.アルコール摂取前に食べておく、飲んでおくとよいものは?

【粟田先生】お酒を飲む前にタンパク質、食物繊維、脂質など、消化が遅く長く胃や腸にとどまる物を軽く食べたり飲んだりしておきましょう。特にタンパク質は肝臓の機能を活性化させる効果が期待できます。手軽にタンパク質をとれるヨーグルト飲料や牛乳、チーズなどがおすすめです。後述しますが、アルコール摂取前に飲む薬剤も飲酒量がいつもより多くなると予測される時には飲むと良いでしょう。

Q.アルコール摂取前に飲む薬剤などもありますが、こちらは効果がありそうでしょうか?

【粟田先生】アルコール摂取前に飲む薬剤(栄養ドリンク)は、肝機能を高めることでアルコールの代謝を促進することができます。ウコンやシジミ成分など肝機能の改善効果が期待できる成分が含まれた医薬品・医薬部外品のドリンクを選びましょう。コンビニやスーパーなどで手軽に購入できるので、一度試してみることをおすすめします。ただし、肝臓を助けるためのウコンが肝臓にダメージを与える(薬剤性肝障害を起こす)こともありますので、多用はしない方が良いでしょう。

Q.いざアルコールを飲む際、内臓に負担がかかりにくい、悪酔いしにくい飲み方、順番、またアルコールとともに摂取しないほうがよいものについて教えてください。

●水(チェイサー)も一緒に飲む

お酒を飲む時は水(チェイサー)も一緒に飲むようにしましょう。水を飲むことで胃や腸の中でのアルコール濃度が下がり、アルコールの吸収が緩やかになって、酔いが回りにくくなります。また、アルコールには利尿作用があり、知らない間に脱水状態になってしまうこともあります。この点でも小まめに水(チェイサー)を飲むことは重要と言えます。

●アルコール度数の低いものから飲み始める

アルコール度数の高いお酒を飲むと、当然吸収された後の血液中のアルコール濃度も高くなります。アルコール度数の低いものから飲み始めて、血液中のアルコール濃度も緩やかに上昇させた方が悪酔いは防げるでしょう。「とりあえず生!(ビール)」というのは、実は理にかなっていると言えます。

●おつまみでタンパク質やビタミンB群を摂る

タンパク質は、肝臓やアルコールの分解酵素の働きを助けます。おつまみには、タンパク質が多く低カロリーの枝豆や豆腐などを選ぶとよいでしょう。また、ビタミンB群もアルコールの代謝に大きく関わっており、飲酒をしていると必要量が増えてビタミンB群不足に陥りがちになります。豚肉や生ハム、ブリ、ウナギなどビタミンB群を多く含む食品も良いでしょう。

●飲酒時はエナジードリンクやコーヒーの摂取を控える

エナジードリンクやコーヒーとお酒を一緒に摂取すると、悪酔いや脱水症状に陥る危険性が考えられます。エナジードリンクやコーヒーなどにはカフェインが多く含まれています。カフェインの興奮作用によって、自分が酔った状態であることに気付きにくくなると同時に、お酒を過剰に飲みすぎてしまうことにも繋がったり、アルコールとカフェインの重複した利尿作用によって脱水症状を起こすリスクも上昇したりします。

Q.アルコールで気持ちが悪くなってしまった場合、緩和する方法はあるのでしょうか?

【粟田先生】残念ながら、アルコールで気持ちが悪くなってしまった時にすぐに効く薬や即効性のある治し方はありません。とにかく水を飲んで症状が治まるのを待つしかありません。

Q.翌日に体調不良を残さないために、飲んだあとにやるべきことを教えてください。

●水分を摂る

翌日に脱水状態となって頭痛が起こることを避けるため、飲んだあとはアルコール以外の水分を十分に摂るようにしましょう。水はもちろん、水分やミネラルを効率的に補給できるスポーツドリンクや経口補水液、ビタミンなどを補えるオレンジジュースなどもおすすめです。

●しじみや豚肉の入ったみそ汁を飲む

みそ汁は、アルコールの利尿作用で失われやすい水分と塩分を同時に摂取できる食べ物です。特に、肝臓の働きを助けるオルニチンが含まれているしじみの味噌汁がおすすめです。疲労回復に欠かせない、ビタミンB1を豊富に含む豚肉が入った豚汁も良いでしょう。

●入浴を控えシャワーを浴びる

飲酒後は脱水状態となることを避けるために、できるだけ入浴は避けましょう。さっぱりしたい場合はシャワーで済ませましょう。

●酔いが覚めてから眠る

お酒を飲んだ後は、ある程度酔いを覚ましてから眠るようにしましょう。睡眠中はアルコールの分解が遅くなるため、飲んだ後にすぐ寝てしまうと二日酔いになりやすいと言われています。

■「シメのラーメン」が欲しくなるメカニズムに納得、食べてしまった後の対処も

Q.飲みの後には“シメのラーメン”を食べたくなる人も多いと思いますが、なぜなのでしょうか。

【粟田先生】肝臓には糖をつくり出す働き(糖新生)がありますが、飲酒後はアルコールの分解が優先されて、この働き(糖新生)が抑制され、血糖値が低下傾向になることがあります。この時、身体が炭水化物を欲するようになります。また、アルコールには利尿作用があるため、多くの水分や塩分が失われます。ラーメンは炭水化物(麺)も塩分+水分(濃いスープ)も持ち合わせているため、飲んだ後に欲しくなるのは理にかなっているといえます。

 しかしながら、すでにおつまみや飲酒によって十分なエネルギー(糖質)を摂ったあとに、1人前のラーメンを食べてしまえば当然カロリーオーバーですので、飲酒後のシメのラーメンを繰り返してしまうと肥満や糖尿病の発症や悪化の原因になってしまうかもしれません。また、塩分が多いことが高血圧症に、脂質が多いことが脂質異常症に繋がったり、悪影響を及ぼしたりすることは言うまでもありません。

 糖尿病・高血圧症・脂質異常症はあくまで「生活習慣」病ですので、毎日のように飲酒してラーメンを食べるというような生活をしていなければすぐには発症しません。日々仕事を共にしている同僚や久しぶりに会う友人と楽しく話しながら、お酒を飲んでシメにラーメンを食べる日があっても良いと思います。私自身もそんな日を過ごす時もあります。よく飲んでよく食べた忘年会のあとには、胃腸や肝臓を休める健康的な1日を過ごすようにしましょう。

【監修者プロフィール】

粟田 裕治(あわた・ゆうじ)

医師(内科・内視鏡専門医・消化器病専門医)

コンパスメディカルグループ 医療法人社団CMG ふれあいの丘内科内視鏡健診クリニック院長(https://fureai.cmg.or.jp/)。日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医、日本内科学会 認定内科医、日本消化器病学会 消化器病専門医。2015年、日本医科大学卒業。救急医療・急性期医療に特化した川崎幸病院勤務で研鑽を積み、2022年、ふれあいの丘内科内視鏡健診クリニックの院長に就任。