ボタン電池は「危険」―誤飲すると内蔵を溶かしてしまう

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スマートフォンの登場を機に、小型化/大容量化が続く電池。その技術は使い捨ての乾電池にもフィードバックされ、便利になっている反面、赤ちゃんにとって危険な存在となっている。

ボタン電池と呼ばれる小型電池には放電能力の高いリチウム電池が普及し、誤って飲み込んでしまうとアルカリ性の液体を発生し、内臓を溶かしてしまう。赤ちゃん用のおもちゃでありながら、30cmの高さから落としただけで電池が飛び出してしまう製品もあるので、まずは大人がチェックしておかないと、生死に関わる事故が起きてしまうのだ。

■からだを溶かすボタン電池

充電できない使い捨ての電池には、形状/電圧のほか、発電構造によって呼び名が異なる。非常用のラジオや懐中電灯に多く使われている円筒形のタイプは単○とよばれ、テレビなどのリモコンには単3/単4が一般的だ。主流は「アルカリ乾電池」で、ひと昔前のマンガンと比べて高い電圧を長時間発生できるため、モーターを使ったおもちゃや懐中電灯に適している。

対してコインのような薄い円形のものは「ボタン電池」と呼ばれ、電子体温計や万歩計など、大きなスペースが用意できない機器に適している。小型でありながら大きな電力が得られる仕組みの「リチウム電池」が一般的だ。

日常で見かける電池の呼び名、直径と長さ(mm)、電圧(V)を比較すると、

1.単3電池 … 14.5mm × 50.5mm / 1.5V

2.単4電池 … 10.5mm × 44.5mm / 1.5V

3.LR41 … 7.9mm × 3.6mm / 1.5V

4.LR44 … 11.6mm × 5.4mm / 1.5V

5.CR2032 … 20.0mm × 3.2mm / 3V

で、1円硬貨の直径が20mmなので、上記3〜5のコイン/ボタン電池と呼ばれるタイプは錠剤程度の大きさに過ぎない。小型で軽量なため乳幼児のおもちゃにも多く使われているが、この小ささがアダとなり、誤って飲み込む事故が多発しているのだ。

電池を飲み込むとどうなるのか? サイズの大きいアルカリ乾電池を飲み込むのは少々困難だが、体内に入ると外側のカバーが溶け液体が漏れ出す。ただし金属製のカバーを溶かすには時間がかかるので、発見するまでの猶予がある。

ところがリチウム電池は食道や胃壁に貼り付いて放電し、マイナス側にアルカリ性の液体を作り出してしまう。アルカリは、油汚れの洗剤やパーマ液にも利用されるようにたんぱく質を分解する性質がある。ボタン電池をハムやとり肉の上に置くと20〜30分で変質することが確認され、誤飲すると30分〜1時間で内臓がただれてしまう。

そのままにしておくと「穴」が開いてしまうこともあるのだ。

■電池が交換しやすい製品は要注意!

電池の誤飲を防ぐにはどうすれば良いか? 予備や使い終わった電池は子供の手が届かないところに保管するのは当然だが、おもちゃから飛び出さないかがポイントだ。国民生活センターが29製品のテストをおこなったところ、落としたはずみで電池が飛び出してしまう製品は、

・高さ30cmから落下 … 4製品

・高さ138cmから落下 … 5製品

と、およそ2割は衝撃に弱く、誤飲の原因になっていることを示している。テレビのリモコンなどの電池カバーはスライド式が一般的だが、赤ちゃん用のおもちゃなら「ネジ止め式」のものを選ぶべきだろうし、購入後はわざと落として、電池が飛び出さないか確認するのが良いだろう。

もし電池カバーが開いていたり、電池がなくなっていたら、すぐに病院に連れて行き「飲んじゃったかも!」と伝えよう。20〜30分で内臓にダメージを与えるので「少し様子を見てから」なんて余裕はない。おもちゃに限らず、体温計や耳かきなどにも電池が飛び出しやすい製品はある。

自主回収しているメーカーもあるので、併せて確認しておこう。

■まとめ

・通称・ボタン電池は、大パワーが得られる「リチウム電池」が一般的

・リチウム電池を飲み込むとアルカリの液体が発生し、内臓にダメージを与える

・ハムなどを用いた実験でも、20〜30分で変質することが確認済

・落とした拍子に、電池が飛び出すおもちゃも多い

(関口 寿/ガリレオワークス)