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幼い頃に好きだったお菓子の筆頭にくるのがチョコレートだ。小銭を握りしめて駄菓子屋さんに駆け込んで、板チョコを買ったら包み紙を半分バリリと破いて、そのまま齧りついて頬張る。口いっぱいに甘いチョコレート。その時の至福の瞬間は、年齢を重ねた今でも決して忘れることはない。誰にでもそういうチョコレートの思い出がある。そして、そこに登場するチョコレートはなんの気取ったところもなく、永遠にお菓子のナンバーワンなのである。そんなお菓子の代名詞、チョコレートの楽しみが、いつしか大人の嗜みと言われるまでに昇華されている昨今。国内外のショコラティエが手掛けるチョコレートは、奥行きも味わいも、かつての”思い出のなかのチョコレート”とは一線を画すけれど、大人になった今でも豪快に叩き割られたチョコレートのかけらを頬張りたい気持ちが、心のどこかでくすぶっていたりはしないだろうか。気取らない形が余計においしい。ひょっとすると、それがチョコレートのおいしさの醍醐味だったりするのかもしれない。

(写真上)ハンマーで割って量り売りされるマルトー。おすすめは、ミントを練り込んだブラックチョコレート「Menthe(マント)」。シナモンの芳香がミルクチョコレートに溶け込んだ「Cannelle Lait(カネル レ)」。ローストしたイタリア産ヘーゼルナッツがゴロゴロと入ったダイナミックな「Noisettes Noir(ノアゼット ノアール)」。

スイス、ローザンヌの創業160年のブロンデルが銀座に世界初出店

東京、銀座は今、100軒を超えるショコラティエが鎬を削りあう世界でも有数のチョコレートの激戦区。そんな銀座にバレンタインも目前の2012年1月21日、スイスで創業160年の歴史を誇る老舗ショコラティエの店がオープンした。美しい山々に囲まれた小さな国スイスのローザンヌで産声を上げたBlondel(ブロンデル)だ。1850年にエドリアン・ブロンデルが、同じくスイス人でココアと砂糖で木片のような、初めての固形チョコレートを作り出したフランソワ・ルイ・カイエとチョコレートにミルクを加えてミルクチョコレートの制作に成功したダニエル・ピーター・ケラーの二人のチョコレート製法を学び開業したのがブロンデルの歴史のはじまり。以来、160年前と変わらず同じ場所、同じレシピで、今も完全手作りのチョコレートを作り続けてきた。ヨーロッパを中心に世界中のファンを魅了しながらも、ローザンヌの本店のみでの営業を頑なに続けてきたブロンデルが、160年の時を経て世界初出店の第二店舗目の場所に選んだのが、他でもない東京、銀座なのである。それは舌の肥えた人々をも存分に満足させることができるという、ブランドの力強い自信を示しているのだ。

ブロンデルチョコレートの口溶けは"手作りの証”

ブロンデルチョコレートを一口食べてみると、誰もがその口どけのまろやかさに驚く。どこか懐かしい柔らかなおいしさの秘密は、創業以来守り続けられている手作り製法にある。ブロンデルを支えてきたのは”職人の手”。すべてのショコラは160年前と変わらぬ製法で作られ、テクノロジーの進化と逆行する”心のこもった工程”と多大な時間を要する職人技により、正真正銘のおいしさが生み出されているのだ。
お店を訪れてまず圧倒されるのが、フレーバーの種類の豊富さだ。"手作りの証”である口溶けが特徴のトリュフは、20種類以上のフレーバーを楽しめる。今でこそ丸い形状が一般的なトリュフだが、当時は細長いまるでパスタのように伸ばしたがナッシュを短く切り分け、専用のフォークで刺して一つひとつコーティングして作られていた。手のかかる工程にも関わらず、当時と変わらない形を留めたトリュフは、なかなかお目にかかれない。フレーバーは、カカオやカラメルのほかにマッチャやユズなど和のテイストの味わいから、ピマンといってイラン産の唐辛子が目の覚めるような驚きをもたらすものまで、斬新で実にさまざま。

(写真)豊富なセレクションが自慢のトリュフ。カラメルの香りとクリスタルシュガーのザクザクした食感に童心にかえる「Caramel(カラメル)」 。アルプスのミルクとクリームに若干のマダガスカル産ヴァニラがささやかな香りを醸し出す「Blanche(ブランシュ)」がおすすめ。

そしてもう一つ、ブロンデルで一番楽しんでもらいたいのが、シグネチャー商品である"マルトー”だ。マルトーとはフランス語で金槌の意味。その名の通り、大きな板状のチョコレートをハンマーで割って量り売りされるのだ。基礎となるクーベルチュールは9種類のショコラをアッサンブラージュし、そこに最高品質の素材が持つ食感、厚さ、味のバランスを掛け合わせ、口溶けとテクスチャーの異なる32種類ものバリエーションを作り上げている。棚に並んだマルトーはさながらチョコレートのマルシェのよう。食べたいだけ豪快に割ったマルトーをぜひ楽しんで欲しい。

日がな一日、チョコレートに耽ることのできる店

今回、オープンした銀座店は1Fが量り売りのマルトー、トリュフ、プラリネ、コンフィズリーといったブロンデル創業時から培われてきたレシピで作られた豊富なチョコレートが販売されているショップになっており、2Fは15種類のホット&コールド ショコラショーを含むドリンク類、ローザンヌ本店でも人気の15種類のチョコレートアイスクリーム、週替わりの味の違いを楽しめるパンオショコラが提供される。ここで耳寄りな情報をひとつ。このパンオショコラは、メゾンカイザーとコラボレーションしたもの。ぜひいち早くイートインで味わってみて欲しい。お好きなチョコレートやパンオショコラ、ケーキをショコラショーやティーと組み合わせれば、幾通りものバリエーションを楽しめて、何度訪れても飽きることがないはず。しかもお店は朝の8時半から夜の10時まで開店しているので、通勤前に立ち寄って好きなマルトーを買ってオフィスでおやつにしたり、会社帰りに友人と訪れてお茶をしてもいい。一日中、さまざまなシーンで利用できるのも嬉しい。

(写真左)温かい紅茶にぴったりの「コンフィズリー」。自然なフルーツの酸味とチョコレートの甘みが優しく口の中に広がる絶妙な味。チョコレートの媚薬のようなショコラショーは寒い日に一番の贅沢な飲み物。


現代にあって最も純粋で正統なチョコレート。ブロンデルのチョコレートを頬張るとき、あなたの記憶に蘇るのは、どこか懐かしく、人の手の温もりを感じさせるような、本物のナンバーワンのチョコレートに違いない。


Blondel Ginza(ブロンデル 銀座)

東京都中央区銀座8-10-1 1F・2F
Tel:03-6228-5985
営業時間:8:30 〜 22:00
1F ショップ/2F イートイン

右:店舗外観
設計:飯田都之麿建築デザイン一級建築士事務所