高畑「おふたりがすごく考えるタイプなんです。“なんでそんなにポジティブなんですか”と何度言われたか分からないくらいでした。今回は特に監督と岡田さんが理論的に考えていくタイプだったので、私は“明るく、楽しくやってこ〜”くらいのテンションで、ちょうどいいチームワークだったかなと思います」

◆1回結婚して離婚したくらいの疲れを感じた

――ずばり、タイトルにもある“いい夫婦”とは? いちことおとやんを見て感じたことでも。

高畑「ふたりがいい夫婦だなと思ったのは、話し合うことから逃げないことです。話し合うのって面倒くさい事もあるし、なあなあにしておけばラクな事もあると思うんです。でもふたりは食卓を囲んででも、絶対に話し合う。まあ、話し合い過ぎてああなっちゃったんじゃないかというところも、ちょっとありますけど(笑)。

でも話し合うイコール相手にちゃんと興味があって、すり合わせようとする意識があるということですよね。

20代のときって、トキメキとかかっこいいだけで完了できていたけど、年齢を重ねてくると、問題が起きたときに、お互いすり合わせられるかどうかの人間性に重きを置くようになってくると思うんです。そんなことを考えていたところに、今回の作品での経験がすごくリンクしました」

――ただ今回の疑似体験には、しんどいところもなかったですか?

高畑「とてもしんどかったです(笑)。1回結婚して離婚したくらいの疲れを感じたので、結婚はしてみたいけど、離婚はしたくないなと思いました」

◆仕事のペース感や考え方が変わってきた

――ちょうど1年前くらいにお話を伺ったときに、「自分自身への興味が薄いので、もっと自分に興味を持ちたい」とおっしゃっていました。変化はありましたか?

高畑「去年、ドラマ『unknown』(テレビ朝日)が終わったくらいから休みを取って旅行に行ったり、いい感じにリセットされたと思います。家でゆっくり過ごすという生活もしているので、前よりは自分に興味が向いているかなと。

頑張らなきゃいけないタイミングは絶対にあるんですけど、頑張れないことを無理に増やさないようにはなったかもしれません。仕事のペース感や考え方が変わってきた気がします」

――それはキャリアや年齢が関係しているのでしょうか。

高畑「20代はノリと勢いで生きている部分があったし、それが苦ではなかったんですけど、30代に入って、ひとつひとつのことに丁寧に向き合うようになりました。自分自身のいいペースが出来はじめているのかなと」

――現在、大河ドラマ『光る君へ』での定子役も大評判です。

高畑「大河はゆっくり撮っていたので。ちゃんと自分のバランスを見ていきたいと思うようになったし、それが出来はじめていると思います。ここからまた自分が変わっていける時期なのかなって」

◆今の自分にフィットする役を求めている

――2005年のデビューから、もう少しでキャリア20年です。

高畑「なんだかんだで続いているのはすごくありがたです。気づいたら20年という感じですが、毎回現場に行くと新入生みたいな気持ちになります。

役に関しては、年々変わっていくし、それを心地よく感じています。たとえば20代前半だったら絶対やりたいと思った役でも、今だと“自分より合う人がいるな”と思います。今の自分にフィットする役をすごく求めている感覚がありますね。特に今は、若くも見えるし、上にも見えて、いろんな年代の役ができるタイミングですし。

それこそ大河もそうですけど、若い頃から年齢を重ねるまでひとりで演じる役が増えていて、その人の人生をしっかりやれるのがすごく面白いです。もっと年を重ねたら、またその年に応じた役と出会えるでしょうし、これからもステキな役に会いたいと思っています」

――楽しみにしています。今回はいちこと出会いました。最後に、高畑さんの思ういちこの好きなところを教えてください。

高畑「ちょっと滑稽(こっけい)なところが好きです。文学的じゃないというか。なんでそんなことやっちゃうかな、でも分かる分かるみたいな。

自分を大きく見せようとしてないし、かといって小さく見せようとしているわけでもない。原作はコミックですが、人が見える作品だと思います。私はここに登場する人物は、みんな好きですね。みんなが本当に頑張っているから好きです」

<取材・文・撮影/望月ふみ>
(C) 渡辺ペコ/講談社 (C) murmur Co., Ltd.
Prime Videoにて世界独占配信

【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi