論文は300ページものボリュームだったそうですが、この本も約400ページもあり、読みやすくて知的な文体で書かれていて、彬子様のお人柄や頭の良さが伺い知れます。章のタイトルも「苦学力行」「合縁奇縁」「一念通天」「日常茶飯」と、全て四文字熟語になっています。

◆エリザベス女王とお茶などプリンセスならではのエピソード

 エリザベス女王にお茶に招かれアフタヌーンティーをご一緒した話や、日本ではいつも一緒にいる側衛官が英国ではつかないのでさびしく感じる心境、寮のお風呂に入れる温泉の素を「侍女さん」に頼んで日本から送ってもらった話、といったプリンセスならではのエピソードにも憧れが高まります。

 お正月は皇室では「御菱葩(おひしはなびら)」という「丸い御餅の上に菱形の小豆の御餅、甘く煮たごぼうと白味噌が挟んである」やんごとなき和菓子(花びら餅の原型)をいただく、という風習もはじめて知りました。白い御餅は「お盆」といって食べないそうです。

◆驚きの伊勢神宮での参拝服のマナー

 また、皇室の風習で驚いたのは伊勢神宮での参拝服のマナー。神宮に正式参拝するときは、長服、帽子、靴,ハンドバッグなどは清浄で新しいものでないといけないという決まりがあるそうです。

 全部新調せずとも、前の神宮参拝で着用したものならOKで、神宮で着用した参拝服を他の神社にお参りするときに「おろす」ことはできても逆は絶対に許されない、とのこと。神宮の正式参拝は皇族にとっては特別なもの、と書かれていました。

 テレビや新聞で何気なく目にする、皇族が神宮に参拝されたニュースですが、その裏側にはこんな約束事があったとは。いち庶民ですが、先日、着古したZARAのワンピースで伊勢神宮を正式参拝してしまったことを思い出し、血の気が引きました。

◆論文執筆中は「おうどんやどんぶりなどの簡単なもの」

 彬子様の留学記は、やんごとなきエピソードだけではなく、庶民も共感できるエピソードもたくさん書かれています。

 論文執筆中は寮の部屋にこもって「おうどんやどんぶりなどの簡単なもの」を自炊。「お」とつけられているところにお育ちの良さが。でも、孤独な執筆作業でストレス性胃炎になってしまわれ、彬子様は「博士論文性胃炎」と表現されていました。

 大英博物館の日本セクションのボランティアとして働かれ、法隆寺金堂障壁画の貴重な模写を倉庫から発見される、という成果もあげられています。日本美術の展覧会場では何も準備ができていない会場に3日前に案内され「疲労困憊で、意識朦朧」になりながら、なんとか展示作業を完了させる、といった功績も。

 もしかしたらMETで仕事をしたい眞子様にとっても参考になる箇所かもしれません。

◆ちらし寿司を作ったら「これはスシじゃない」

 彬子様が招かれるのはセレブな会食だけではありません。友人の部屋に遊びに行って出された紅茶などに、うっすら洗剤らしきものの膜が張っていることを発見。「『あぁ〜』と少し涙したくなる気持ち」になられたこともあったそうです。

 持ち寄りパーティで彬子様ご自身が友人に料理を振る舞われることもあります。でも、ちらし寿司を作ったら「これはスシじゃない」と言われ、白玉団子を出したら「ん〜、ガムみたい」と英国人に評されたというエピソードも。日本ではこんな無礼を働いたら大事です。

◆電車で爆睡などスリリングな失敗も

 あるときは忘れ物をして寮に戻り、携帯電話を持たない指導教官に連絡できず、焦りながら一時間遅刻。動揺して質問にもうまく答えられない、という体験を読むと、庶民と同じくプリンセスにもついていない一日があるんだと親近感が高まります。