今週のテーマは「受験を終えた途端に妻から離婚を切り出されたワケは?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:娘の小学校受験を終えてホッとしたのも束の間。慶應一家の夫が、妻に離婚を切り出されたワケ




娘の小学校の入学式を終え、私はなんとも言えない感情に包まれる。

頑張ってくれた娘の葵への感謝の気持ちと、何より安堵感…。言葉にならない気持ちが次々と訪れ、桜並木の下で私は泣きそうになっていた。

「やっと終わった…」

隣にいる夫の智も、安堵している様子だった。そして何より「愛娘が可愛くて仕方ない」という様子で目を細めて見つめている。

「葵、本当によく頑張ったよね」
「そうだね」

夫婦二人で頷き合う。

私は、ずっと言いたかったことをようやく言えるタイミングが来たと悟る。

「ところで智さん」
「ん?」
「私、あなたと離婚したいの」

突然の私の言葉に、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている智。そんな智に向かって、私は冷たく言い放った。

「あなたは、何もわかってない」


A1:そもそも夫婦間で大切なことの論点がズレている


智とは、知人が開催してくれた食事会で出会った。

慶應出身でメガバンク勤め。端正な顔立ちに、ずっとラグビーをしていたというスポーツマンの智は、当時の私には眩しいくらいの存在だった。

最初出会った時、私は人見知りを発揮してなかなか話せなかった。でも、智はそんな私を気に入ってくれたようで、デートに誘ってくれて、順調に交際に発展した。

そして、交際2年目の夏に、私の妊娠が発覚する。

「智さん…私、妊娠したかも」

智は心底驚いていた。今から考えると、私が期待した反応ではなかったが、智は責任を取る形でちゃんとプロポーズをしてくれて、私たちは無事に籍を入れた。




ここまで、すべて順調だった。

でも葵が生まれて、私は智のやることなすことに嫌気が差すようになる。

例えば、夕飯を終えて私が葵をあやしている時、智は「玲奈、何かすることある?」とドヤ顔でこんなことを言い出した。

― いや、どう見たってすることしかないでしょ…。

先程食べ終わった食器が、まだダイニングテーブルの上にある。でも私は、今手が離せない状態…。少し頭を使えばわかることなのに、どうしてそんなこともわからないのだろうか。

「ごめん、夕飯の洗い物頼んでいい?」
「もちろん。というか、食洗機使っちゃおうか。他には?」
「そしたら…葵をお風呂入れてもらえる?」
「OK」

そして葵をお風呂に入れるだけで、「俺は子育てに協力的な夫」と言いたげな態度…。

仕事で忙しいのはわかるけれど、家事や育児は自発的にしてほしい。

言えば動いてくれるけれど、言わないと一生動かない夫に対し、私の苛立ちは募っていく。

そして私が1番耐えられなかったのは、智の潔癖症だった。




家事と育児に追われ、掃除もおざなりになっていたのは否めない。でも智は他のことはしないくせに、部屋の中を綺麗にしておくことに、異常なこだわりを持っていた。

「玲奈、この辺りの荷物、捨ててもいい?」
「それなんだっけ?」
「なんだろうこれ…化粧品とかじゃない?」

私は元々OLをしながらインフルエンサーもしており、たまに企業側から案件として、PRして欲しい商品が送られてくることがあった。

独身時代からそれは変わらないけれど、結婚して子どもを持ったことでママ向けの案件も増えていた。

それは非常に有り難く、私の中では子育ての息抜きの時間でもあった。

しかし智は、そんな私の気持ちを知ってか知らずか、送られてきた商品をまるで、“不要な物”のような扱いをする。

「それ、まだ投稿してないから置いておいてもらっていい?」
「わかった。こっちは?」

― 私に送られてきた商品を片づける前に、やることたくさんあるよね…?

本人は、掃除をしているからいいと思っているのかもしれない。でもまだ幼い子どもがいる家を完璧に綺麗になんてできないし、掃除よりも手伝って欲しいことは山ほどある。

「智さんってさ…本当に綺麗好きだよね」
「そう?普通だよ」
「適当でいいのに」
「玲奈の普通は汚いからな(笑)。それに玲奈は子育てで忙しいだろうし、せめて僕は掃除くらいするからさ」

言い方までもが、本当に腹立たしい。

でも結婚した以上、そして葵のパパである以上…仲良くしていく以外方法はない。

そう思い、私はもう言い返す気力もなく智に付き合っていた。

でも葵が受験をすることになった時。私は「この人は、もう何を言っても無駄な人なんだ」と悟ることになった。


A2:「子育てだけに口を出さない」の、意味がわからない


葵はすくすくと成長し、私は、特に波風は立てないように暮らしていた。

しかし葵が3歳になる頃、小学校をどうするのかという問題に直面した。

「僕は、私立の一貫校に入れたいと思ってる」
「そうだよね…智さんのお母様も東洋英和だしね」

智の家系はお父様も智も弟さんも、全員慶應出身。そしてお母様も東洋英和出身…と、絵に描いたような一家だった。

私は公立出身の一般家庭だけれど、智の家系を知っていた以上、受験戦争への参戦が必須なことは、結婚した時から覚悟を決めていた。

しかし、智の口から出てきたのは意外な一言だった。

「葵を小学校から私立に入れてあげたい気持ちは正直、すごくある。でももし玲奈が嫌なら、受験しなくてもいいよ」
「本当に?」

正直、少し拍子抜けした。「絶対にする」と言うと思っていたから。

「うん。そこは玲奈に無理強いすることじゃないと思っているから」
「智さん。葵のために頑張ろう。夫婦一丸となって。私も頑張る」

この時は、夫婦二人と娘一人、一緒に頑張れると信じていた。しかしこの私の下した結論は、間違っていたのだろうか…。




当たり前のことかもしれないけれど、受験が近づくにつれて私たち夫婦は喧嘩が増えていく。

「玲奈、落ち着いて。母親が動揺してどうするの」
「わかってるけど…逆になんでそんな冷静なの?」
「受験、したくなくなったの?ここまで来たのに」
「そんなこと言ってないでしょ、一言も!」

私に余裕がなかったのも悪かったのかもしれない。でもとにかく、智の態度に対して私は許せないことがあった。

「葵、本当に受かるかな…」
「大丈夫だよ、僕たちの娘なんだし」
「塾もついていけるのかどうか心配で。せっかく入れた所だけど、他に何かできることがあるのかなと思って」

心配するのは、親の務め。でもそれ以上に、智が放ったこの一言に、私は彼の人間性を疑うことになる。

「そこは玲奈に任せるよ」




そこそこ気がついてはいたけれど、受験を通してひとつ、明確になったことがある。

智は掃除などに関しては口うるさいのに、逆に子育てに口を出してこない。

むしろ、放任だ。

「智さんって、意外に子どものことに口出さないよね」
「うん、そこは玲奈の領域かなと思って。出しゃばらないようにしてる」

彼はきっと自分のことを「子育てに口を出さない、理解力のある夫」だと思っているのだろう。

でも違う、そうじゃない。

子育ては二人でしていくもの。むしろ口を出して欲しいし、色々と一緒に考えて作り上げていきたいチームだ。

それなのに、掃除とかどうでもいいことは言うくせに、子育てのことだけ急にダンマリになる夫…。

本当に大事なことがわかっていないし、見えていない。

「コイツ、論点がズレてるのよ…」

何度怒りが湧き上がってきただろうか。でも葵の受験のため、学歴があってちゃんとした家系で大手会社に勤めている肩書の良い夫は必須アイテムだ。

だから私は、葵の受験が終わるまでひたすら我慢していた。

そして晴れて解放された今、もはや口うるさい同居人としてしか見れなくなった夫を捨てたくなった。

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