ダイエットで胃が小さくなるって本当?「ウソ:脳が満腹と判断しているだけ」
古今東西、女性の共通の話題であるダイエット。食事制限を機に胃が小さくなった!的な話を聞くが、本当に小さくなるのだろうか?
空腹時の胃は100ml(ミリ・リットル)ほどに縮まり、残念ながらこれ以上小さくなりようがない。以前よりも食べられなくなったと感じるのは、少ない食事量に脳が慣れ、満腹と感じるようになっただけなのだ。
■胃の大きさは脳が決める?
胃は筋肉でできた風船のような構造で、アルファベットの「J」の形をしている。空腹時は100ml程度が一般的で、握りこぶし二つ分程度の大きさだが、食べ物が入ってくると、それに合わせて膨らむ。満腹時の大きさは、男性が1.4リットル、女性でも1.2リットル程度が目安で、これ以上食べられない!状態まで詰め込むと、一時的なら2.5リットルほどにまで膨らむ。
空腹時と比べると、普段でも12〜14倍、限界までチャレンジすると25倍にまで大きくなれる、優れた柔軟性を持っているのだ。
胃は何のためにあるのか? 胃の役割は大きく分けて3つあり、まずは「殺菌」だ。胃酸はレモンよりも強く、胸やけや胃痛の原因にもなる物質だが、これで食べ物に含まれる菌を死滅させる。2つめは「倉庫」で、食道からおりてきた食べ物を一時ためて、小腸での消化の進み具合にあわせて少しずつ送り出す。
この間に食べ物と胃液を混ぜ合わせる「かくはん器」の役割を果たし、おかゆ状にして消化しやすいように準備する。胃が消化できるのはタンパク質で、その他の栄養分は腸でおこなわれる。そのため食べ物がすべて腸に送られるまでの3〜5時間を使って、腸が消化〜吸収しやすいように、準備をしているのだ。
満腹を感じさせるのも胃の役目だ。おなかいっぱい!という情報は、
・食べ物で胃が膨らむ
・迷走(めいそう)神経が刺激される
・脳の視床下部(ししょうかぶ)にある満腹中枢に伝わる
の順に受け渡され、もう食べられません状態に導かれる。早食いは肥満につながると言われているのもこれが理由で、胃が膨らんでから脳に情報が届くまでには時間差があるため、気づいたときには食べ過ぎ状態になっているからだ。
つまり、満腹と判断するのは胃ではなく、脳だ。食事を減らした生活を続けると、少ない量で満腹信号が出るようになる。「胃が小さくなった」の正体は脳の勘違いで、ダイエット前よりも早い段階で「おなかいっぱい」と感じるようになっているだけなのだ。
■大きくなってもデメリットだけ!
逆に、胃が大きくなることはあるのか? おおむねYesで、胃を包む筋肉が縮まらなくなってしまうことがある。食べ物が長時間とどまると、胃が伸びてしまうのだ。
お腹が張って圧迫されている感じを腹部膨満(ぼうまん)感と呼び、食べ過ぎはもちろんのこと、
・飲み込んだ空気が胃に溜まる
・便秘
・ねこ背
・疲労やストレスによる副交感神経の乱れ
も原因となる。
一時的に内容物を十二指腸に送れなくなって起きる急性胃拡張(いかくちょう)ならさほど心配はないが、慢性化すると胃の下部が伸びてしまう胃下垂(いかすい)を引き起こす。ひどくなると胃の働きが1/3程度まで下がり、栄養失調、胃かいよう、胃がんなどの重い病気に発展しやすい。
普段からお腹が苦しい状態が続くひとは要注意だ。
■まとめ
・ダイエットで胃は小さくならない
・少ない食事量に慣れ、脳が満腹と判断しているだけ
・逆に、胃が大きくなる(=縮まらなくなる)は、大いにありえる
・胃が伸びてしまうと、重い病気に発展する可能性・大
良く噛んでゆっくり食べる。胃への負担も減るし、少量でも満腹感が得られるから効果的にダイエットできるはずだ。
(関口 寿/ガリレオワークス)