店名は成瀬さんがかつて過ごした米・アリゾナにある「キャメルバックマウンテン」から。山容がちょうどフタコブラクダの背のように見える

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元寿司職人という異色の経歴にばかり目がいってしまうが、「以前からサンドイッチの店を開くイメージはしていた」と話す、パン屋「CAMELBACK sandwich&espresso」の成瀬さん。高校卒業後、アメリカに渡り、学校に通いながら働き始めたのが寿司店。「よく、180°違う道に進みましたねと言われますが、僕にとっては寿司もサンドイッチも同じ。どれだけシャリを、パンを引き立てるかという点で、とてもよく似ていておもしろいです」。包丁の扱い方や食材の見極め方、下ごしらえなど、数ある料理の中でも寿司には特に繊細さが求められる。「やるなら本物の技を徹底して身につけたい」と、帰国後も寿司職人として修業を積んだ。サンドイッチを作るときの流れるような所作はそんな経験のたまもの。銅製の玉子焼き器や有次の包丁、真魚箸(まなばし)など、他のサンドイッチ店では見かけないような道具は、成瀬さんのアイデンティティでもある。

【写真を見る】次々と入る注文にテキパキ対応しながら、訪れたお客さんとの会話も大切にしている。どこかゆったりした空気が感じられ、ファンは増える一方だ

コーヒー担当の鈴木さんは高校の同級生。商社の営業職を経て、もともと好きだったコーヒーの道へ進んだ。ぬかりない身のこなしに、もしかして、営業マン時代はコーヒー豆や器具を扱っていた…?と問いかけると、「全然違うんです。半導体を売っていました」と鈴木さん。2人の志の高さや真摯な探究心は、違う畑を経てたどり着いたからこそわかる、好きなものを作るよろこびが原動力になっているのかもしれない。

5月中には代々木八幡駅・代々木公園駅近くに2号店がオープンする予定。店の規模は同じくらいだが、「一人暮らしの人も多いエリアなので、たとえば仕事帰りに手軽に買えるようなメニューを追加したり、他に使ってみたいパンを取り入れてみたり…」とアイディアはどんどん膨らんでいる様子。新店舗がどのように街になじんでいくのか、今後が楽しみだ。(東京ウォーカー・東京ウォーカー編集部)