「健康に産めずごめんね」妻の涙から16年。難病で顔に腫瘍がある息子と歩んできた父が初めて明かした「本音」
顔に腫瘍ができる難病「レックリングハウゼン病」を患う村上泰大さんの三男・魂児さん。SNSに投稿した家族の日常風景には、「AIみたい」などといった心ない中傷を受けることもあるそうですが、多くの声援が届くようになったそう。妻が涙したという出産から16年。高校生になった息子に、父が初めて明かす16年目の本音とは。
【写真】4月から高校生に「大人びてきた」と父が語る魂児さんのこれまで(全17枚)
7時間に及ぶ大手術。息子が初めて漏らした不安
── 村上さんの三男・魂児(こんじ)さんは生まれながら「レックリングハウゼン病」(カフェ・オ・レ斑、神経繊維腫という皮膚・皮下の病変を特徴とし、骨、眼、神経系などさまざまな病変を生じる)を患っています。顔には腫瘍があり、左目は失明、右足は偽関節の手術をしており、歩行には装具が必要だそうですね。
中学までは仲間に恵まれ、病気のことで特別扱いされることもなかったそうですが、街中に出ると顔をジロジロ見られ、心ない言葉を言われることもあったと聞きます。4月から高校生になって今までの環境から大きく変わったと思いますが、父親から見てどう感じますか?
村上さん:今のところ中学からの友達と一緒に通学したり、新しい友達とも遊びに行ったりと楽しんでいるようなのでよかったのかな、とは思っています。私はInstagramで家族の日常を発信していますが、魂児が入学したときに「お父さんのインスタ見たよ」と言われることもあったみたいですね。
── 村上さんが発信してきたことで、あらかじめ魂児さんのことを知っている人がいたんですね。また、高校に慣れ始めた7月には、顔の腫瘍を取るため、7時間にも及ぶ大手術をされたそうですね。
村上さん:はい。10年前にも顔の腫瘍を取る手術をしていますが、腫瘍は減ることがなくて、成長と共にどんどん増えて大きくなっていくんです。腫瘍の重みで顔が垂れて変形もしていきます。
前回の手術は6歳でした。当時は魂児も、よくわからないまま手術していた部分があったと思います。でも今回は16歳になり、状況はもちろん理解しています。腫瘍を取るための前向きな手術とはいえ当然、怖さもあったと思うんです。手術前に一緒に買い物に行ったときに、魂児の口から初めて「不安だなぁ…」という言葉を聞きました。
今までほとんど弱音を聞くことがなかったのですが、吐き出さずにはいられなかったようです。今は無事に手術を終えて、私からは「本当によく頑張った」という言葉しかないですね。
今回、視神経にも腫瘍があったため、手術で左の眼球も取ることにしました。魂児は生まれながら左目に緑内障があり、もともとほとんど見えていませんでした。2歳で手術をしたものの、のちに完全に見えなくなってはいたんです。それでも眼球を取ることはショックだったようで、手術が終わって「ほんとうに左目取ったんだな…」と言っていて、義眼についても考えたいようです。どこかのタイミングで義眼について、先生に聞いてみようと思っています。
家族の日常をSNSに投稿したらバズってしまい
── 先ほど、村上さんが魂児さんの病気についてSNSで発信された話が出ましたが、きっかけはなんだったのでしょうか?
村上さん:もともと病気のことを知ってもらうためにSNSを始めたわけではなく、みんなと同じように、家族の日常を投稿しようと思って始めたんです。ただ、たまたま魂児がキャラクターのマネをしたところ、なぜかバズってしまって。魂児を見た人から「息子さんは何ていう病気ですか?」と聞かれるようになりました。
── 村上さんのInstagramを見て、「レックリングハウゼン病」という病気を初めて知った方もいるそうですね。でも、SNSで発信していると、いろいろな声が届きそうです。
村上さん:そうですね。なかには誹謗中傷というか、「AIで作った顔みたい」「特殊メイクだ」とか、何かのキャラクターにたとえて揶揄する人もいます。でも、それ以上に応援してくれる声のほうが多いですね。少し前ですが、フォトグラファーの方から連絡がきて、息子を撮影したいと言ってくださったんです。後日、そのフォトグラファーの方と私のSNSで息子の写真を載せたら、もともと3000人くらいだったフォロワーが一気に3万人ほどに増えました。息子って影響力があるんだぁと思いましたね。
出産から16年。今初めて明かす父の本音
── 魂児さんには兄姉がいますが、ふたりには魂児さんの病気について、どのように説明してきましたか?
村上さん:魂児がうまれたとき長女が4歳、長男が2歳でしたが、普通に病気の説明をしたと思います。それ以降もとくに魂児の病気について家族で話し合うこともほとんどなかったですね。長女、長男が魂児に何か配慮する必要もないですから。
ただ、魂児が中学1年生のときに長男が中学3年だったので、親としては同じ校内に長男がいてくれるのはちょっと安心した部分はありました。だからといって長男が何かするわけではないですけどね。魂児はお兄ちゃんが大好きで、よくお兄ちゃんの洋服とか真似していますね。長女はしっかりしていて面倒見がよくて、長女がやりたいと言ったことを、魂児もよく一緒にやっていたと思います。
今は魂児が思春期になったのでちょっと大人びてきましたが、魂児はみんなにかわいがられていたし、いつも話題の中心に魂児がいましたね。
── 子育てで意識してきたことはありますか?
村上さん:3人の子どもたち全員に言えることですが、ひとりになっても困らないように、自分のことは自分でできるように意識して子育てをしてきました。魂児には高校を卒業したらひとり暮らしをしてほしいと、本人にも何度も伝えています。
今は助けてもらうのが当たり前だと思っているような瞬間をよく見ますが、1回ひとりで生活して、苦労も含めて経験してほしいなと思うんです。実際、長女は20歳、長男は18歳ですがひとり暮らしをしています。魂児もすでに乗り気みたいです。
── 魂児さんが生まれて16年が経ちます。今、どんなことを思いますか。
村上さん:今まで誰にも言ったことがなくて、今回初めて言うんですけど。魂児が生まれたときに、妻が「健康に産んであげられなくてごめんね」とずっと泣いて過ごしていたんです。私も泣きたい気持ちもありましたが、自分が泣いてしまったら産まれてきた子があかん子になってしまう。でも、そうじゃない。魂児が産まれてきたことは必ず意味があるはずだ。そんな思いでこの16年間過ごしてきました。
この先も乗り越えていくことはあると思いますが、家族とともに一緒に頑張って生きていけたらと思っています。
取材・文:松永怜 写真:村上泰大

