障害のある子どもだからといって、家庭の中で十分な理解や支えを得られるとは限らない。そんな渡辺さんが、親との精神的な距離を置こうと決めた大きな出来事があったという。

◆障がい者が二人も増えた!と怒る母の言葉

「その時点では、私も兄も一人暮らしをして、親とは物理的な距離をとっていましたが、兄が5年前に職場のストレスで鬱状態になり、引きこもりになってしまったんです。そのときに、親が兄の了承なしに、施設にいれてしまって、兄からしたら厄介払いをされた気持ちになったでしょうし、実際夜中に『俺って必要な存在だったの?』と親に言ってしまったと、私に苦しい心中を吐露してくれました。

兄とは3歳差で、幼少期から普通の兄弟として隔てなく関わってくれていたので、兄のおかげで健常者側の視点を多く学んでくることができました。逆に兄も私を通して福祉制度や受けることができる手当などの知識があったことで、精神障害者保健福祉手帳を申請することになった際、自分でその申請をしたんです。それに対し、私が実家にいるときに兄のことを褒めたら、母は『何言ってんの!うちに障がい者がもう一人増えちゃったんだよって』って怒り出してしまい、それが私にはすごくショックでした。

子どもとして愛してたから障害があっても育ててくれたというよりも、周りから見てちゃんと育てないと恥ずかしいという体裁を優先して育てただけなのかと、そんな風に思えてしまったんです」

 私をちゃんと愛していた瞬間があったのか?と一度湧き上がった疑問は止まらず、今まで以上に親との心の距離ができてしまったそうだ。

◆一人暮らしを決意も……

「大学を卒業してから企業のコールセンターで働いていたこともあり、このまま実家で過ごしても、親がどんどん過保護になっていくだけで、親にとっても私にとっても良くないなと、一人暮らしを決意しました。介助が常に必要な中で、親子だと物理的にも精神的にも距離が近すぎて、常に見張られているような気持ちになっていました。とにかくプライベートな時間が欲しかったというのもあります。初めて入院した時、あまりにも自由でとても楽しかったんですよね。

なぜなら看護師さんは仕事なので、割り切って必要な世話や介助はしてくれますが、プライベートに介入してくることがなかったからです。カーテンを閉めといてくださいと頼めば、小言も言わずにしてくれるし、意思も尊重してくれる。それがすごく心地よかったことも一人暮らしに向かった大きな理由です。