幼少期の渡辺さん
「障害のある子ども」と聞くと、多くの人は、親がわが子を懸命に支え、家族一丸となって困難を乗り越えている姿を思い浮かべるのではないだろうか。もちろん、そのような家庭は数多くあるが、一方で、「障害があるからこそ」親子関係がより複雑になってしまうケースもある。

 先天性の骨形成不全症という障害を持ちながら、親と距離を置いて一人暮らしをしているのが渡辺みのりさん(仮名・37歳)だ。

 遺伝子の病気で生まれつき骨が折れやすいため、幼い頃から車椅子で生活し、トイレなどの介助を必要とする日々を送ってきた渡辺さん。

 現在一人暮らしを始めて11年目になるというが、本音で語り合ったことがない、不健全な親子関係だったと振り返ってくれた。

◆介助を人質に取られているかのような日々

「親の指導方針では、骨が折れやすい以外に知的に障害があるわけではなく、人とのコミュニケーションは問題なくとれるので、自分のことは自分で説明できなきゃダメだし、とにかく簡単に人を頼るなと教えられて育ちました。人に介助される過程で骨折などの怪我をした際は、『怪我したときに、痛いのはあなたかもしれないけど、傷つくのは周りだ』『あなたの説明不足のせいだ』と言われていました。

そう育ててもらったことで、自立への意識や安易に人を頼ってはいけないという意識は高い方ではあると思いますが、『産まなきゃこんな目に遭わずに済んだのに』と言われたこともあり、ずっと私に障害があることを母に対して負い目として感じる生活でした」(以下、渡辺さん)

 介助を必要とする子どもにとって、親は家族であると同時に、生活を支える存在でもあり、だからこそなるべく良い空気感を作ることが、身を守ることにつながる。その関係性は、ときに健常者の親子以上に力の差が生まれ、本音を飲み込まざるを得ない状況につながることもあるようだ。

「親が仕事に行こうとするときとかに、骨折すると『なんでこんなときに折れるの!』と不可抗力な部分を責められてもいましたが、私としては、介助してもらわないと生活することが叶わないので、とにかく母の顔色を常に伺いながら、生活していました。

介助を人質に取られているような感覚で、私に障害がなければ、本音でやりとりできる機会もあっただろうなと思います。ただ本音を言えるなら、他人に頼るなと教えるなら、せめて親ぐらいは味方と実感できる拠り所でいて欲しかったし、精神的に甘えたかったなという想いはありますね」